Source:https://news.yahoo.co.jp/articles/60a132276f49c7f3b7628e83fbbbb14300aa5ab0
──コロナで親を亡くした孤児がインドで多数発生し、SNSで違法な児童取引が横行している
新型コロナウイルスが猛威を振るうインドでは、日々4000人前後の人々が命を落としている。このなかには子を持つ親も含まれており、コロナで身寄りをなくした孤児が日々多数発生している状態だ。 ●動画:インドで問題になるコロナ孤児の児童売買 この混乱に乗じ、TwitterやWhatsAppなどで違法な児童取引を持ちかける例が相次いでいる。WhatsApp上で頻繁に送信されているあるメッセージは、「養子縁組を待っている女の子が2人いて、一人は生後3日、もう一人は生後6ヶ月です。両親はCOVID-19で息を引き取りました」「お願いです、この子たちが新しい人生を始められるよう助けてください」と綴っている。 第三者が少女たちの身を案じた善意のメッセージのようにも見えるが、2015年に制定された少年司法法は、指定の児童保護機関などを通さない児童取引を禁止している。前述の投稿は少なく見積もってもこの点で違法だ。違反すれば最大5年の懲役、または10万ルピー(約15万円)までの罰金が科される。 さらに、複数の現地メディアの報道によると、メッセージの送信主は里親探しに偽装し、実際には児童本人の同意なく身柄を売り渡そうとしているものと見られる。インド政府が運用するフェイクニュース対策のツイッターアカウント「PIBファクトチェック」は、当該のツイートをフェイクだと断定し、取引に応じないよう警告している。 ■ 売買業者は引き取り手の身元すら確認していない 地元当局は、善意の文章に偽装した人身売買の横行に手を焼いている。インドのヒンドゥスタン・タイムズ紙が報じるところでは、ヘルプラインの担当者が他の類似のSNSメッセージに書かれていた連絡先に接触を試みたところ、電話口に立った男性は引き取り手の身元も確認せずに取引を承諾したという。 ヒンドゥー紙の報道によると、デリーの児童権利保護委員会のアヌラグ・クンドゥ委員長はこのような投稿が多発していることから、人身売買の流行に危機感を募らせている。クンドゥ委員長はデリー警察長官に対し、個別の事例について調査を行うよう要請した。 SNS上で飛び交うメッセージのなかには、なかには善意のものも存在するのだろう。しかし、おおかたは反社会勢力による児童取引との見方が濃厚だ。仮に利益目的でないのであれば、法律で定められた児童保護団体など、4つの機関のいずれかに通報すれば事足りる。 ヒンドゥスタン・タイムズ紙は、過去にはネパール地震の際、ギャングによる人身売買が活発化したと指摘している。今回のコロナ禍においても、こうした勢力の暗躍が懸念されている。 ■ コロナ孤児が新たな家族を見つけることは非常に難しい 孤児の取引が絶えないのは、引き取り手が見つかりにくいことから、彼らが非常に弱い立場に置かれているためだ。豪放送局のSBSは、インド北部の郊外で孤児となった男児の事例を紹介している。この男の子はまだ幼児にもかかわらず、両親がコロナウイルスで死亡した後、誰も世話する人がおらず一人だけで辛うじて生き延びていたという。 近隣の人々は泣き声を聞くことがあったというが、現場はコロナを患っていた両親の生活スペースであり、さらに男児も無感染だと確認されたわけではない。どうにか助けてやりたいと思いつつも、自分たちが感染してしまうリスクを考えると行動に移すことは難しかった、と住民は振り返る。 男児の場合は幸いにも住民が支援機関に通報し、医療的な保護を受けたうえで児童保護団体に引き取られた。しかし、社会的距離の保持が求められているいま、孤児となったことにすら気づかれないまま衰弱してゆく幼児も増えている。 比較的幸運な場合は地域の人によって発見され、親戚と連絡がつくケースもあるが、このような場合でも引き取りに結びつくとは限らない。とくに遠縁の親戚の場合、養っていくことが経済的に難しいなどの理由から、養子縁組に難色を示されることが多いのが実情だ。 ■ 経済悪化で売りに出され、一部は性的に虐待されている 現在インドを襲っているコロナ第2波以前にも、人身売買の増加は危惧されていた。米CNNは昨年の時点で、児童取引の増加はパンデミックによる「第2の危機」だと述べている。インド全土では昨年9月までの半年間で86名が人身売買の疑いで逮捕され、1000名以上の子供たちが救出されたという。 インドでは昨年3月下旬から全土対象の大規模なロックダウンが実施され、これに伴い職場と学校も閉鎖された。親たちは十分な収入を得ることが難しくなり、さらに子供の昼食をまかなっていた学校給食も中断となる。経済的に困窮し、やむを得ずわが子を売りに出したケースが増加した。 痛ましいことに、売買の対象となる子供の一部は性的搾取の被害者となっている。インディアン・エクスプレス紙は、東部・ゴッダの町で17歳の少女など未成年計4名がロックダウン期間中に身柄を売られ、売買業者の事務所に監禁されながら性的虐待を受けていたと報じている。 ほか、鉄道駅で保護された15歳の少女や、人身売買業者と引取先の雇用主の双方から性的に虐待された13歳の少女など、コロナ以降は児童搾取の深刻化に歯止めがかからない。ゴッダの町を含むジャールカンド州では過去約2年間に480人が救出されているが、件数として明らかになっているものは一部に過ぎないと見られる。 日々報じられる圧倒的な感染者数に目を奪われがちだが、水面下では無力な子供たちが見えない犠牲者となっている。
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