Source:https://news.yahoo.co.jp/articles/0e39db0a6980bf2bb5b4f79e357cacdce76e0f4f
脳科学者の茂木健一郎がパーソナリティをつとめ、日本や世界を舞台に活躍しているゲストの“挑戦”に迫るTOKYO FMの番組「Dream HEART」(毎週土曜 22:00~22:30)。6月12日(土)、19日(土)の放送は、2週にわたってアルピニスト・野口健さんがゲスト出演。12日(土)放送では、4月に著書「登り続ける、ということ。」(学研プラス)を出版した野口さんが、世の中の「A面」と「B面」について語りました。
1973年、アメリカ・ボストン生まれの野口さん。1999年にエベレストの登頂に成功し、世界7大陸の最高峰を当時最年少記録で登頂しました。2000年からはエベレストや富士山での清掃登山を開始。以後、全国の小中学生を主な対象とした「野口健・環境学校」を開校するなど、環境問題への取り組みを積極的におこなっています。 また、2015年4月のヒマラヤ遠征中に遭遇した「ネパール大震災」では、直ちに「ヒマラヤ大震災基金」を立ち上げ、ネパールの村々の支援活動を継続的におこなっています。
◆「ネパール大震災」現地で経験したこと
茂木:野口さんの著書「登り続ける、ということ。」を読みました。野口さんはとてもいい人で、実際にいいことをされていますよね。富士山のゴミ拾い活動は、みなさんも良くご存知だと思いますが、エベレストでもゴミ拾いをされていて、あと現地(ヒマラヤ)で学校も作られていて、子どもたちにランドセルを贈っているんですね。 野口:あんなに喜んでもらえるとは思っていなかったです。エベレスト街道に学校がいっぱいあるのですが、「じゃあ全部に届けるか」と言って始めて、去年、全部の学校に届け終えました。 茂木:すごいですね。熊本で地震が起きたときには、テントを持って駆けつけたり。 野口:僕らは山屋なので、山屋の発想なんですけどね。避難所があっても、揺れてガタガタッと音がするので、特に子どもさんは建物に入ることが怖いんですよね。 茂木:ヒマラヤの大地震は現地で体験されたんですよね。 野口:はい。ちょうどエベレストのベースキャンプの入り口にいたところ、地震がドーンときて……。石は落ちてくるし、雪崩もあったし、ベースキャンプではものすごく多くの方が亡くなりました。村に降りたら、シェルパ(ネパールの少数民族)の家はみんな壊れているし、もちろん避難所もないし。そこで「テントだ!」ということで、テントを集めてヒマラヤの人々に配りました。その活動の1年後に、今度は熊本の地震があったので、「じゃあ熊本でもテントだな」と。山屋の考えることです。
◆世の中の「A面」「B面」
茂木:ご著書のなかで「A面(すぐそこに見えている世界)」と「B面(自分で行かないと見えない世界)」について書かれています。野口さんは「B面」に対する優しさがありますよね。 野口:これは僕の親父の影響があります。親父は外交官で、ODA(政府開発援助)が主な仕事でした。アフリカやアラブなど中近東が多く、僕が子どもの頃は一緒に(海外へ)いきました。親父は、難民キャンプや紛争地域などの現場に僕を連れていくんです。イエメンでは野戦病院のようなところに連れていかれました。救急車がないので、運ばれてくる方々は輸血ができない状態で運ばれてくるんです。 医者も少ないので、廊下で(負傷者を)パッと見て「これはもう駄目だな」と思ったら廊下に置いて、助かる人だけを診るんです。僕はその廊下にずっといて、残された方がだんだん弱っていって、最後に息を引き取るところを子どもの頃に見せられて……。結構ヘビーでした。 茂木:それはヘビーだし、もし医療体制が整っていれば、助かっている命ですよね。 野口:それが子どもながらにショックで、親父に「なんでそんなところばかりに僕を連れて行くの?」と聞いたんです。そうしたら、「世の中には『A面』と『B面』がある。『A面』は本当によく目に入るけど、『B面』はあえて行かなきゃ見えない」「世の中のテーマは『B面』だ。お前も『B面』を見ろ」と。それで、小・中・高校生の頃は、いろんな現場に連れて行かれて、「世の中には『A面』『B面』がある」ということを植え付けられました。 例えば、僕らがエベレストに登って話題になるのは「A面」です。でも、その陰でシェルパが亡くなったことは表に出ない「B面」なんです。富士山もそうです。遠くから見て美しいのは「A面」だけど、樹海に入ったら不法投棄の山です。これは「B面」ですよね。だから「A面」「B面」を見るというのは親の教育で、その影響ですね。 (TOKYO FMの番組「Dream HEART」6月12日(土)放送より)
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