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「これで終わり。終わり」取材途中で“半グレ”外国人は激怒し、私に向かって金槌を振り下ろした《直撃レポート》 から続く 【画像】アメ横で若者に強引に服を売るナイジェリア人グループが… 東京のネパール人マフィアにハンマーで攻撃され、ベトナム人から「殺すぞ」と……。日本の裏社会に潜む外国人マフィアに接触し、その実態を取材したフリーライター、真樹哲也氏の著書「 ルポ外国人マフィア 勃興する新たな犯罪集団 」(彩図社)が話題だ。 急拡大しているその凶悪な活動実態から、彼らがアウトローの世界に身を投じることになった日本社会の事情まで、外国人マフィアの深層を追ったノンフィクション作品から、一部を抜粋して転載する。(全2回の2回目/ #1 を読む) ◆◆◆
ナイジェリア人不良グループを探して
外務省の基礎データによると、ナイジェリア(ナイジェリア連邦共和国)は、アフリカ大陸の西アフリカに位置するイギリス連邦加盟国の連邦制共和国だ。人口は約2億96万人で、アフリカの約5分の1を占める人口を誇る。ハウサ、ヨルバ、イボ等の推定250の民族が暮らす多民族国家で、宗教はイスラム教、キリスト教、伝統宗教のアニミズム信仰が存在する。 英国の植民地であったが1960年の独立以降、共和制と軍事政権が繰り返されて政情は安定しなかった。汚職、民族、宗教の対立、治安情勢は不安定化。2000年代には、過激派組織“ボコ・ハラム”によるテロ行為が活発化する。2015年の大統領選挙では、汚職対策やボコ・ハラム対策をはじめとした治安対策を掲げたブハリ元国家元首が大統領に選出される。 現在、ブハリ大統領は経済発展を推進しナイジェリアはアフリカ最大の経済大国となったと言われるが、国民の大半が貧困に苦しんでいる状況がある。石油などの豊富な天然資源の利権で裕福になれたのは一部で、電気の通らないスラムで暮らす人々や、路上で生活しているストリートチルドレンも存在するのが現実だ。 そのような中で、1980年代頃から来日するナイジェリア人が現れた。2020年6月末の法務省の在留外国人統計によると、日本で暮らすナイジェリア人の人口は3262人。これは正規に在留登録している人数で、非正規滞在者、難民申請者なども含めると遥かにそれを上回る。2019年6月には、長崎県の大村入国管理センターに収容されていた40代のナイジェリア人男性が、長期勾留に抗議をするハンガーストライキの末に死亡する事件が発生している。 来日するナイジェリア人は増加していき、1990年代に入ると東京都の新宿、渋谷、六本木、上野などの繁華街でバーの店員、クラブのセキュリティ、客引きなどをしているナイジェリア人を頻繁に見かけるようになった。
2000年代になるとナイジェリア出身のタレント、ボビー・オロゴンがバラエティ番組などで笑いを提供し、日本人にとってナイジェリア人が身近なものに感じられるまでに至った。最近では、ナイジェリア人の父と日本人の母を持つ、プロ野球選手のオコエ瑠偉などの2世が活躍し、日本社会にナイジェリア人は浸透していっている。 だが、それは表社会だけではなく裏社会もだ。来日するナイジェリア人の増加は、確実にナイジェリア人アウトローも生み出していった。ナイジェリア人不良グループの勢力が、裏社会で話題となったのは2012年頃だ。 「歌舞伎町で、ナイジェリア人の客引きが、有名なヤクザの親分を殴ったらしい」
暴力団にも一歩も引かない凶悪性
繁華街で生きる客引きには、守らなければいけない1つのルールがある。それは、暴力団には声を掛けないという決まり事だ。しかし、ルールを知らないナイジェリア人の客引きの1人が、たまたま歩いていた暴力団の組長に声をかけてしまったのである。 組長に注意をされるナイジェリア人の客引き。すると、事情の分からないナイジェリア人の客引きは激怒して、その場で組長を殴るという暴挙を起こしたのだ。すぐに事態を聞きつけた暴力団構成員が集合し、ナイジェリア人の客引きに襲い掛かる。歌舞伎町の路上で暴力団とナイジェリア人の客引きたちとの喧嘩が発生し、大勢の警官が出動する大騒ぎとなったという。 この事件は都市伝説のように広まっていき、メディアにも取り上げられ、インターネット上の掲示板でも書き込みが溢れた。事件があったことを否定する暴力団関係者もいて真相は不明だが、歌舞伎町の裏社会にナイジェリア人不良グループの存在が周知されたことだけは間違いなかった。 歌舞伎町に縄張りを持つ武闘派で知られる暴力団に所属していた元幹部(50代)は言う。 「薬の売買の時にナイジェリア人の奴らと揉めたことがある。俺が現役の幹部だと知っているのに、大勢のナイジェリア人に取り囲まれた。ボスは身長が2メートルぐらいある大男で、その場の喧嘩じゃ絶対に勝てないと思ったね」 暴力団にも一歩も引かない凶暴性を持つナイジェリア人不良グループの実態とは何なのか。私は手探りのところから取材を始めるしかなかった。
「繁華街で気弱な若者に強引に服を売る」
2019年8月、私は東京都台東区上野にいた。理由はナイジェリア人不良グループのメンバーと接触するためであった。あらかじめ警視庁関係者から、ナイジェリア人不良グループのメンバーたちが、上野のアメ横(アメヤ横丁)にいることを聞いていたからだ。 「ナイジェリア人不良グループの代表的な仕事の1つが、繁華街で気の弱そうな日本の若者に声をかけて強引に服を売ることだ。狭いテナントでやれば家賃は少なくて済むし、劣悪な服を仕入れれば原価は格安だ。日本語が下手でも押しが強ければできるし、楽な商売だよ」 どこの店舗か分からないので、あてもなくアメ横付近を歩いた。終戦直後の闇市形態の発展型として残る、数少ない貴重な商店街である。アメ横の魅力の1つは何といってもダミ声での閉店セールを装った叩き売りだろう。 明らかにハイブランドを真似た粗悪な偽ブランド品も数多く低価格で売っていて、警察も取り締まらずに放置している。そうした良くも悪くも無法地帯のアメ横に、時代の流れと共に外国人が経営する店が増えていく。その中に、ナイジェリア人不良グループもいるというわけだ。 私がアメ横を徘徊していると、カジュアルなストリート系ファッションの店舗前に黒人が立っている。こちらを見つめていて、私と目が合うとニヤリと笑って近付いてきた。 「ヘイ! マイブラザー! 見ていってくれよー!」 肩を叩かれて握手をされる。かなり強い力だ。背は私よりだいぶ大きく、180センチはあるだろう。金のチェーンネックレスをして、派手なラメ色のプリントがされたTシャツに、ダメージジーンズを履いている。私は引っかかってみることにした。 「女とセックスできる服ある」
「マイブラザー。これでセックスできる。1万円」
黒人は肩を組んできた。強引に店の中に連れていかれる。店内に入ると、柔軟剤のような香りがした。狭いスペースなのにもかかわらず、パーカーやジーパンが吊るされていて、棚にはTシャツが畳んで置かれている。歩くと服に触れてしまうぐらいで、これでもかというぐらい店内には様々な衣類が販売されている。私は不審な点に気が付いた。どの商品にも値札がつけられていない。 「マイブラザー。これでセックスできる。1万円」 黒人は意味不明なロゴの入った白いTシャツを見せてきた。私が何も答えていないのに、ビニール袋に入れ始める。高いし、私は選んでもいない。どうせ買うなら、着る服が欲しい。 「黒い色のシャツが欲しいです」 私が言うと黒人は頷いてまかせておけというような表情をした。 「どう、これ」 黒人はバスケットボール選手が着ているような、数字が書かれた赤いシャツを出してきた。ビニール袋に入れ始める。私はヒップホップをやっていないし、ラッパーでもない。 「ちょっと待ってください」 私は黒人を静止する。店内を見ると、ドクロのプリントがカッコ良い、アメカジファッションのブランド“バンソン”の黒い半袖シャツが吊るされていた。私はそれを指差した。 「オッケー。1万2000円。セックスできる」
握手をした手を、そのまま私の鳩尾にぶつけてきた
黒人はビニール袋に素早く入れる。私は1万円札1枚と1000円札2枚を出した。黒人は笑顔で受け取る。レジを通さず、レシートも出ないらしい。だが、これでは終われない。目的は取材なのだ。 「どこの国から来ました? 日本長いですか?」 急に黒人の顔が強張った。強引に握手をされる。やたらと力強い。黒人の顔が、私の顔に近付いてくる。 「生まれた時から日本人だー!」 私を見つめながら大声で叫ぶ黒人。明らかに黒人は不機嫌そうだが、ここで引くわけにはいかない。 「名前は? ナイジェリアのグループのこと知りませんか?」 私はしつこく尋ねた。すると、黒人は握手をした手を、そのまま私の鳩尾にぶつけてきた。息が止まる。 「スズキ! ありがとー! セックスしてこい!」 黒人は私の身体を押して、店の外へ出そうとする。抵抗するが、踏み止まることはできなかった。いとも簡単に、店から追い出されてしまった。 私はバンソンの半袖シャツが入ったビニール袋を持って、呆然とした。これでは服を買わされただけで、1万2000円を散財しただけだ。購入したバンソンの半袖シャツをインターネットで調べると、存在していないデザインであることが分かった。
ナイジェリア人によるロマンス詐欺の手口とは?
ナイジェリア人不良グループの実像は、いかなるものだろうか。私は雲を掴むような感覚になっていた。実態があるのか、ないのかさえ分からない。私に歌舞伎町の外国人パブで薬を盛った男や、上野で偽ブランドを買わせた黒人も、グループのことを聞いても一切答えなかった。 押して駄目なら引いてみろだ。私は発想を転換し、ナイジェリア人不良グループではなく、被害者の側を取材しようと考えた。日本に来日して徒党を組むナイジェリア人不良グループの代表的な金儲けの手段が、日本人女性をターゲットにした詐欺である。日本人女性の恋愛感情を弄び金を騙し取る「ロマンス詐欺」と呼ばれる手口だ。
出会い系サイトで日本人女性と知り合い、メールや電話で恋人関係や婚約者になったかのように振る舞い、何らかの理由で大金が必要になったと相談し、金銭を送金させる振り込め詐欺の一形態だ。オレオレ詐欺などの振り込め詐欺と同様に、被害に遭った場合のほとんどが犯人逮捕となっても返金されることはない。 警察によって立件されたナイジェリア人不良グループが組織的に関与したロマンス詐欺の一部をあげたいと思う。 〈【国際ロマンス詐欺疑い逮捕 ナイジェリア人の男ら数人】 会員制交流サイト(SNS)で外国の軍人らを装い、女性に恋愛感情を抱かせて現金をだまし取ったとして、福岡、埼玉両県警の合同捜査本部は22日、詐欺の疑いで関東在住のナイジェリア人の男ら数人を逮捕した。捜査関係者への取材で分かった。 このような手口の事件は「国際ロマンス詐欺」と呼ばれ社会的な問題となっており、捜査本部はグループの全容解明を進める。 捜査本部は22日朝、埼玉県吉川市内の自動車関連会社を家宅捜索した。捜査関係者によると、この会社はグループの拠点で、メンバーは関東一帯で活動していたとみられる。捜査本部が主導的な役割を果たしているとみている男は千葉県に居住し、他に神奈川県に住んでいるメンバーもいる。(2019・1・22「産経新聞」)〉 〈【ロマンス詐欺でナイジェリア人の男2人逮捕】 福岡県警は26日までに、外国軍人らのふりをして恋愛感情を抱かせるなどして金をだまし取る「国際ロマンス詐欺事件」に関与したとして、犯罪収益移転防止法違反の疑いで住所・職業不詳、アナメレチ・ユステス・チディ容疑者(38)らナイジェリア国籍の男2人を逮捕した。一連の事件では既に5人逮捕されており、役割分担を調べる。 もう1人は千葉県松戸市新松戸、アルバイトのノエ・チケ・ビクト容疑者(29)。逮捕容疑は昨年4月、アナメレチ容疑者がノエ容疑者からキャッシュカード1枚を譲り受けた疑い。県警はカードが詐取した事件に使われた可能性があるとみている。(2019・6・26「サンケイスポーツ」)〉
実際に被害に遭った40代のケイコは…
2019年8月、私は実際に、ナイジェリア人不良グループのメンバーだと思われる男性から、国際ロマンス詐欺の被害に遭った女性のケイコ(仮名・40代)から話を聞くことができた。 ケイコは北関東の某県に在住する中学生と小学生の子ども2人を持つシングルマザー。元旦那からの養育費は未払い状態だが、ケイコは看護師として働き、経済的にはそこそこ余裕があった。 「昔から男運が悪いんです。前の旦那は仕事を辞めてから、酒浸りで働かずにヒモになってしまって。それで別れました。駄目な旦那でも、いなくなると寂しくて。出会いを求めて出会い系サイトに登録をしたんです」 だが、その出会い系サイトで知り合ったシリア派遣中の米国軍人の1通のメールが人生を狂わせることになる。 「彼はマイケルという名前で、写真は映画に出てくるようなイケメンでした。とても優しい言葉をかけられて、すぐに好きになってしまいました。1ヶ月程メールを続けていたら、マイケルのことしか考えられなくなりました。仕事をしている時も、子どもと出かけている際もです」 ナイジェリア人不良グループの巧みなメールテクニックで日本人女性のケイコは虜にされてしまった。
「トータル300万円程を振り込みました」
「ある時、マイケルから母親が病気になってしまったとメールで言われました。シリアにいるとお金を口座に振り込めないようで、必ず返すと言われたので指定された口座に入金しました。それからもメールで何度も頼まれて、3ヶ月程の期間でトータル300万円程を振り込みました。その後、私も貯金がなくなってしまったので、これ以上は無理だよとメールをすると、マイケルからは返事がこなくなり連絡が取れなくなってしまったんです。それで詐欺だと気付きました」 一度も会ったことのない相手に大金を振り込んでしまう女性が愚かであると思う人もいるだろうが、恋愛感情を弄ぶ詐欺が許されないことなのは確かだ。ロマンス詐欺の被害者の多くが中高年の独身女性で、大切なパートナーを想って金を振り込んでいたことが大半である。 「子ども2人の将来のために貯めた大切なお金でしたから警察に行きました。でも警察からは、ナイジェリア人の不良グループが頻繁におこなうロマンス詐欺の典型的な手口だと説明され、詐欺事件として立件するのは難しいと言われました」 ケイコは身体を震わせながら話した。マイケルという米国軍人の存在が、ナイジェリア人不良グループによって作られた嘘だということを知ったケイコ。私はナイジェリア人不良グループに復讐したくないかを聞いた。 「憎いとか怒りよりも悲しかったです。お金よりも、マイケルという最愛の人がいなかったことに衝撃を受けました。良い勉強になりました。もうしばらく男はいいかな。メンタルが病んじゃって」 ケイコはそう言い、涙を流しながら微笑んだ。恋愛感情を利用したロマンス詐欺が悪質である点は、金銭面での被害に加えて信頼していた恋人や婚約者に裏切られる精神面でのダメージがあることなのだ。
真樹 哲也/Webオリジナル(特集班)
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