Source:https://news.yahoo.co.jp/articles/78daf05df8d915f9cf812c47066b7867ca3be178
【どうする、どうなる「日本の医」】#7 インド株が関心を集めている。感染者の累計は、5月31日までに12都府県で53人となり、前週の29人から大幅に増加した。 厚労省がコロナワクチン「死亡事例」の詳細を公表しなくなった不可解 インド株の問題は、ファクターXをかいくぐる可能性があることだ。ファクターXとは、第1波で厳しい措置を取らなかった日本の感染者や死者数が少なかったことから提唱された。日本人の遺伝的要因、衛生意識、BCG接種、何らかのウイルス感染との交差反応が関係するとされている。 実は、ファクターXが存在するのは日本だけではない。昨年12月~2月、アジアの1日当たりの新規感染者は欧米よりはるかに少なかった。最も多いマレーシアでさえ、人口100万人当たり147人だ。ちなみに日本は51人で第2位。欧米は違う。主要先進7カ国(G7)で最も少ないカナダでも255人。コロナ感染は欧米とアジアでは全く別の病気だ。 インド株の流行で事態は一変しそうだ。インドで欧米並みの大流行が起こっているからだ。日本の第4波に相当する3~5月の間の1日の感染者数の最高値は、人口10万人当たり284人を記録した。冬場のピークは29人だったから、9.9倍に増加した。 問題はインド株が、日本でも流行し得るかだ。このことを考える上で参考になるのは、アジアの状況だ。医療ガバナンス研究所の山下えりか研究員が、ゲノムデータベース(GISAID)を用いて、6月2日現在、各国の過去1カ月の登録例に占めるインド株の割合を調べたところ、ネパール100%、シンガポール82%、インド60%、オーストラリア53%、ベトナム50%、バングラデシュ31%、パキスタン13%、日本7%だった。 もちろん、この数字は報告バイアスの影響があるが、アジアで感染が拡大しているのは間違いなさそうだ。 インド株は旧宗主国である英国を介して、欧州でも拡大中だ。英国では5月20日ごろから感染者数が再増加に転じ、5月27日、ハンコック保健相は「新規感染者の半分以上、あるいは4分の3がインド株」と発表している。この事実は重い。ワクチン接種やゲノム解析が進んだ英国でさえ、インド株は英国株を凌駕し、蔓延したのだ。 山下研究員の調査によれば、インド株の割合は、ポルトガル12%、イスラエル10%、ノルウェー6%、ルーマニア、スペイン、アイルランド4%と欧州で増加中だ。 幸い、インド株に対してワクチンは一定の効果がありそうだ。5月10日、米エモリー大学の研究者は、ファイザーとモデルナ製のワクチンを接種した人の血液を用いた研究で、通常株と比較してインド株は6.8倍抵抗性を示すが、臨床的には有効と報告している。 ワクチン接種は日本にとって喫緊の課題だ。接種に手間取れば、日本社会はインド株で崩壊しかねない。 (上昌広/医療ガバナンス研究所 理事長)
0 件のコメント:
コメントを投稿