東京五輪の開幕まで1カ月となった。五輪・パラリンピックのホストタウンとして外国の選手団を受け入れる徳島県内の自治体は、新型コロナウイルスの感染対策を急ピッチで進める。懸案だった選手と住民の交流事業は国の指針に沿って非接触で開催する見通しで、合同練習や会食などは中止する。担当者からは「感染対策上やむを得ないが、どれだけ地元を盛り上げられるだろうか」と複雑な思いも聞かれた。

 選手団の感染対策は県が主導する。選手には入国前に2回、入国後は毎日PCR検査を受けてもらうほか、宿泊施設の滞在フロアを一般客と分け、選手の外出や売店利用などを禁止する。食事は専用会場を用意し、配膳や片付けの際に従業員との接触を避ける。

 選手の移動はバスなどの専用車両を使い、練習会場と宿泊施設の往復に限る。練習の見学に訪れた一般人が直接選手に触れないよう、屋外にはフェンスを設置し、屋内では2階席からの観覧にするなど距離を保つ。選手団の行動は全て県職員らが帯同、管理する。

 県は関係機関や選手団と詰めの協議をしている。スポーツ振興課は「選手、県民双方の安心安全を確保するため、対策は厳密に実施していきたい」とする。

 国は交流事業の指針として、事前合宿中は「選手との接触が生じない形態」、選手の大会出場後は「身体的接触や道具の共有を回避する」などを挙げる。県や各自治体もこれに準じる。

 ドイツのカヌー選手団が滞在する那賀町では、これまで選手団のコーチが下見で訪れた際に、那賀高校カヌー部員に直接指導するなどの交流を行っていた。今回も同様の取り組みを検討していたが感染対策上、難しくなった。町は、地元小中学生が寄せ書きするなどしたドイツ国旗を練習会場の川口ダム湖に掲げたり、選手の顔や名前が入ったパンフレットを作ったりして機運を盛り上げる考えだ。

 ドイツのハンドボール選手団が合宿する鳴門市でも選手による子どもらへの指導ができなくなった。代わりに、練習会場となる鳴門アミノバリューホールで選手と市の交流の歴史を紹介するパネル展を7月上旬から企画。林崎小の6年生がドイツ語で寄せ書きした横断幕もホールに掲示する。

 ネパールの水泳、アーチェリー選手団の滞在を見込む徳島市では、出場選手が未確定のため具体的な事業内容は決まっていない。

 各自治体の担当者は「交流事業が大幅に制限されるのは仕方ないけれど、残念だ。できることに取り組み、少しでも住民が盛り上がるようにしたい」などとしている。

 ホストタウン事業 東京五輪・パラリンピックに参加する国・地域の選手、関係者と地方自治体の交流を促進する政府の施策。ホストタウンになると、事前合宿や交流事業の経費について政府から半額補助が受けられる。県内では徳島市がネパール、鳴門市がジョージアとドイツ、那賀町がドイツの選手団を受け入れる。ただ、出場が確定していない競技もあり実際に全選手団が訪れるかどうかは不透明。ドイツの柔道、カンボジアの水泳選手団は県内合宿を取りやめた。