2022年9月14日水曜日

ヒマラヤ山脈越える鉄道、にわかに注目…採算度外視の壮大な計画、実現できる?

 Source:https://www.tokyo-np.co.jp/article/200619

Googleニュースより

2022年9月7日 17時00分

 ヒマラヤ山脈を越えて中国チベット自治区とネパールの首都カトマンズをつなぐ鉄路を敷く計画がにわかに注目されている。8月の両国の外相会談で、建設の実現性を判断するため中国側が専門家を派遣する方針を示した。一帯一路の経済圏を拡大し、インドをけん制する意図も透けて見えるが、8000メートル級の山脈の合間を縫って鉄路を敷く工事は難航が予想される。壮大な鉄道敷設計画は実現可能なのか。(北京・白山泉)
チベット自治区のラサとシガツェをつなぐ鉄道=中国の鉄道設計企業のホームページから

チベット自治区のラサとシガツェをつなぐ鉄道=中国の鉄道設計企業のホームページから

 鉄路は両国合わせて全長約516キロ。中国側区間が8割以上を占める。上海国際問題研究院の劉宗義りゅうそうぎ秘書長は「ネパール側の実現が困難である」と指摘する。このため、「中国側が資金提供と技術援助を行うことで、戦略的な鉄道路線プロジェクトを推進する」と中国経済メディアに語った。
 隣の青海省の省都・西寧とチベット自治区の首府ラサを結ぶ全長約2000キロの「青蔵鉄道」は既に2006年に開通しており、多くの観光客がチベットを訪れている。14年にはチベット自治区第2の都市、シガツェとラサをつなぐ鉄道も開通し、地元では「将来的にはヒマラヤを越えてネパールにつながる」といわれていた。
 当時のネパールのオリ首相が訪中し、「一帯一路」構想の下で、国境を越えた鉄道建設を推進する方針が示されたのは16年。中国メディアは「ネパールの産業は農業と旅行が主体で、世界で最も発展が遅れた国の一つ。交通が不便で泥道の移動には時間がかかる」として、中国による開発の必要性を指摘。
 ネパールは北はヒマラヤ、南はインドに挟まれているが、チベットとの鉄路がつながれば内陸に道が通じ「陸の鎖国」からの転換を図れるという戦略的な意義が強調された。
 ヒマラヤ山脈を越える鉄道敷設計画の歴史は長い。1973年に毛沢東もうたくとう中国共産党主席(当時)がネパールを訪問した際、チベット青蔵鉄道は最後はカトマンズに至ると表明していたという。
 一方、エベレストをはじめ8000メートル級の山が連なる地域で空気が薄く、1000メートル以上の高低差などもあり建設は困難を極めそうだ。自然災害が発生する恐れもあり、9年の歳月と40億ドル以上の建設費がかかるという予測もある。約360億ドル余りのネパールの国内総生産(GDP)の1割を超える額だけに、債務問題も懸念される。
 中国の一帯一路に関するプロジェクトでは、スリランカやバングラデシュ、パキスタンなどが、巨額債務を返済できず、国際通貨基金(IMF)に支援を求める動きが相次いでいる。世界銀行の研究者によると、中国の6割の対外債権が債務危機のリスクがある国に投じられているという。
 インドが米国との関係を強める中、中国は緩衝国のネパールを取り込んでおきたい思惑がある。ただ、中国経済も曲がり角に差しかかる中で、採算度外視の戦略的なインフラ建設が進められるかは未知数だ。

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