Source:https://news.yahoo.co.jp/articles/1f7c3f65e6208916e7b6674b1c74add90f29c6bf
3度のエレベスト登頂に成功、最高齢登頂記録を持つ三浦雄一郎さん。2022年で90才を迎える今も現役の冒険家・プロスキーヤーとして活動を続けています。新型コロナウイルスやウクライナ戦争など、混沌とした現代を生きるヒントを三浦さんに聞きました。 【写真】三浦雄一郎さんが75才でエレベストに登頂した瞬間。臙脂色のウェアで白く輝く頂に片膝をついた姿
◆三浦雄一郎さん「チャレンジして成し遂げる意思を持つべき」 新型コロナやウクライナ戦争が騒がれていますが、いつの時代にも必ず何かしら大きな問題が起きるものです。 それでも人は生きていけます。そして生きるからには自分のやりたいことや夢を見つけて、チャレンジして成し遂げる意志を持つべきです。 昭和7年生まれの私は戦中世代で、戦時中は軍国少年で戦闘機乗りに憧れました。満蒙開拓団を養成する農学寮の寮長だった父が「松の木の根から油を採って戦え」と日本軍に命じられ、「そんなことで戦争に勝てるわけがない」と憤慨したことを覚えています。反骨精神を持ち、自分が正しいと思ったことをやり通す父に影響を受けました。 小学2年生で初滑りして以来スキーの魅力に取りつかれ、ついにはプロスキーヤーになりました。海外に飛び出して現地のスキー大会に出場し、ニュージーランドのタスマン氷河や富士山での直滑降を成功させました。体に装着したパラシュートをブレーキ代わりにするという、誰もやったことのない滑り方を思いつき、実行に移したのです。 数ある滑降の中で特に印象深いのがエベレストです。37才のときにエベレストの8000m地点からパラシュートを背負って滑降し、ギネスブックに掲載されました。周りは「そんなことできるはずがない」と半信半疑でしたが、だからこそやる意義があった。 当時、現地のネパール人はスキーをほとんど知らず、板切れでエベレストのてっぺんから滑るのかと驚いていました。それでも彼らは命懸けで同行してくれ、実際に6人が遭難した。支えてくれる人のためにもやり遂げなければならないと奮い立ちました。 エベレストには登山でも挑み、80才で3度目の登頂を果たし、当時の世界最高年齢登頂者となりました。 ◆やらない理由を探すのはやめる 人はそれぞれ仕事や趣味、目標を持っています。私は山登りとスキーが仕事ですが、その中で日本でも世界でも誰もやったことがない未知へのチャレンジを繰り返しました。 人間、自分に挑戦への不安があるとやめる理由、やらない理由を探します。そして、やらない理由は探せばいくらでも出てきます。私自身もその経験があります。だけど、失敗したらまた次にチャレンジすればいい。それの繰り返しなんです。チャレンジすることが大事で、それが成功したか目標が達成できたかはあまり関係ないのです。 挑戦という目標があれば、年を取っても健康で元気でいられる。けがや病気をしても、そこから回復できます。 私自身がまさにそうです。2019年に86才で挑んだ南米最高峰・アコンカグア登頂は体調不良で途中下山し、2020年には100万人に1人とされる神経疾患の難病・突発性頸髄硬膜外血腫を患いました。手術後に障害が残り、復帰するのが難しいと言われました。 それでも挑戦を諦めてはいません。いまは杖を突きながらやっと歩いていますが、ゆくゆくは近所の山を登り、その先は富士山登頂にチャレンジするつもりです。 もうすぐ90才になりますが、できれば100才を超えても自分の好きな山登りを続けていきたい。 生きていくからには自分が夢中になれる目標を持ち続けることが大事です。私は生きている限り、自分の命を懸けるくらいの気持ちを持って、その時代ごとの人類の限界に挑みたいですね。 ◆プロフィール 三浦雄一郎さん・89才 プロスキーヤー・ クラーク記念国際高等学校名誉校長。青森出身。1964年、スキーの滑降競技、キロメーターランセに日本人として初めて参加し、当時の世界新記録を樹立。その後、1966年の富士山直滑降をはじめ2013年には80才で3度目のエベレスト登頂を果たし、世界最高年齢登頂を記録した。 文/池田道大 取材/平田淳、宇都宮直子、進藤大郎、村上力 ※女性セブン2022年9月15日号
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