Source:https://news.yahoo.co.jp/articles/146081d806347dff89f56fdbf5adc1e45ad12cd8
台湾・香港を中心に出される「好条件な仕事」を謳ったネット求人広告。それを鵜呑みにし、人生を狂わせられてしまった若者が急増している。取材班は、アジア全土を震撼させつつある、この事件の周辺関係者に話を聞き、その闇に迫った。 ⇒【画像】詐欺求人広告の一例。お金に余裕のない若者が被害に
狙いは貧困層の若者…東アジアで増える新たな詐欺
「ほぼ毎日、殴打され、スタンガンで脅されていました」 悲痛な面持ちで地元紙の取材に応じたのは、台湾新北市在住の20歳の男性、小吳說(シャオ・ウー)さん。台湾4大新聞のひとつ『聯合報』によれば、今年1月ウーさんがFacebookで見かけたのは、カンボジアにあるカジノの求人広告。高待遇に惹かれ、すぐさま同い年の恋人を誘って渡航した。 しかし彼らを待ち受けていたのは、特殊詐欺の業務。拒否しようにも「臓器を売るぞ」と脅され、殴打やスタンガンでの暴行を受けた。 恋人は身体的な暴力こそ振るわれなかったものの、たえず脅され、卑猥な言葉を投げかけられるなど精神的苦痛を受けていたことも同紙は報じている。
ミャンマーに“転売”された2人の子供
「おじいちゃん助けて!」 5月中旬には、ミャンマーに“転売”された2人から台湾の祖父宛てに身代金を求める電話が寄せられる一幕もあった。最終的に祖父は200万台湾ドル(900万円程度)を支払い、2人は8月4日、およそ半年ぶりに故国の地を踏んだ。 長年、中国の動向を調査し、ハフポスト日本版で先駆けてこの事件を報道した記者の高橋史弥氏は次のように語る。 「台湾や香港では、『未経験でも高収入』という甘い言葉を掲げるインターネット求人広告に応募した人が、海外で監禁・暴行を受けたり、人身売買されたという事例が相次いでいます。まず現地に到着するとパスポートを没収され、軟禁状態にされることがあります。 その後、例えばカンボジア南部のシアヌークビル経済特区に連行され、中国大陸や台湾の人々を相手に特殊詐欺に従事させられるなどのケースが報告されています。 勤務状況は最悪で、一日17~18時間ほど働かされ、ノルマが達成できなくなると暴力や性的暴行を受けることも。別の組織に転売されることもあったといいます。仮に解放してほしいと訴えっても、賠償金名目で高額な身代金を要求されるのです」(高橋氏)
強制的に臓器売買される人も
台湾当局が運営する中央通訊社によれば、台湾の刑事局は過去1年間に台湾からカンボジアに渡航し、帰国していない4679人を対象に捜査を開始。すると被害は300人以上に及んでいたことが判明した(8月28日現在)。 「強制的に臓器売買をされる人を見かけた」という声も被害者たちから上がっており、悪質極まりない状況が続いている。
求人詐欺が横行する背景には一帯一路の影も
カンボジアといえばアンコールワットなど風光明媚な世界遺産も思い浮かぶが、巨大経済圏“一帯一路”を推し進める中国の存在は強大だ。 「なかでもシアヌークビル経済特区は中国主導の開発が進み、巨額の中国資本が流れ込んだ場所です。ギャンブル産業が勃興し、一時は“第二のマカオ”とも言われるまでに。しかし治安の悪化などを理由に、’20年1月にカンボジア当局はオンラインカジノをはじめ、カジノ営業全般を禁止に。 さらにコロナ禍も重なりギャンブル産業が立ち行かなくなった。そこで、新たな資金獲得手段として人身売買を含めた詐欺ビジネスが横行するようになったという見方が濃厚です。台湾はカンボジアと国交がないのも、事態の収拾が複雑になっている一因と言えます」(高橋氏)
カンボジア警察は金さえ渡せば操れる
なぜカンボジアでは、ここまで大規模な組織的犯罪がまかり通るのか。元山口組系組長で、国内外の裏社会事情にも精通する作家の猫組長氏はこう語る。 「カンボジアは警察が腐敗しきってるんですよ。警察は、100ドル(1万4000円程度)渡せば言うことを聞くし、1万ドル(140万円程度)あれば殺人だって請け負う。中国マフィアからするとこんなに悪さしやすい場所はない。 特にシアヌークビルのような中国資本が強大なエリアは治外法権のようなものと考えていいでしょう」
困窮した若者が“闇バイト”に加担してしまう
これらの背景をもとに高待遇ネット求人詐欺も横行している。いずれは日本人も標的になりうるのか。 「言語や地理的な問題もあるので、日本人が標的になることはまれでしょう。いざ拉致したところで中国語が話せなければ詐欺もできませんから。ただ国際社会でこれだけの大問題になった今、稼ぎに躍起になった犯罪集団が日本人旅行者を拉致して、同じような事件を引き起こす可能性は、十分に考えられますね」(猫組長氏) 日本でもオレオレ詐欺などの闇バイトに手を染める若者は後を絶たない。困窮した若者が甘言に弄され、特殊詐欺に加担してしまう構造は、万国共通の課題として今後も重くのしかかる。
アジアでますます過熱する闇医療ビジネスの惨状
事件の解説でも触れたように、人身売買という人権蹂躙の最果てとして危惧されるのが臓器売買だ。アジアでの移植事例を間近で見てきた猫組長氏が語る。 「’07年に私の友人が中国で肝臓移植を受けました。ドナーは死刑囚で費用は3000万円。もちろん、日本で受ければ保険が利くので安くはなりますが、いつ受けられるか全く見えない。中国ではカネさえあれば、まるで車のパーツ交換のように手軽に臓器を交換できる」 臓器売買が今なお盛んに行われる中国。その背景については次のように指摘する。 「共産党の一党独裁のため、倫理観を度外視にした医療技術が進歩する。また、臓器提供者とそれを貰う側をマッチングさせる専門の病院と実際に手術する病院、その両方が密に連携をとり、ネットワークを構築しています。医療の進歩と利用しやすさはピカイチです」
胎児をプラセンタ注射の材料に…インドの赤ちゃん工場
人命尊重の意識の希薄さが招くアジアの臓器売買。もっと悲惨な闇医療を行う国もあるという。 「驚いたのはインドの赤ちゃん工場。大勢の女性を妊娠させて7~8か月の胎児を取り出し、粉砕してプラセンタ注射の材料にするんです。民間療法の迷信がはびこっていて、若返りに効くと富裕層が重宝しています。 他にも、処女と交わればエイズが治るというデマが流れ、ネパール人の少女たちが、オークション形式で買われるケースも。全く悲惨な話です」 新興国開発が進む陰では、人権と人命が犠牲になっている。 【高橋史弥氏】 上海の復旦大学を卒業後、NHK記者を経て、’19年現在はハフポスト日本版中国担当記者。ツイッターでも、最新中国ニュースを発信中 【猫組長氏】 投資家、作家。反社会組織に身を投じ、インサイダー取引などを経験。最新刊に『正義なき世界を動かす シン地政学』(ビジネス社) 取材・文/週刊SPA!アジアの闇取材班 写真/アフロ PIXTA ―[[高待遇ネット求人]の罠]―
日刊SPA!
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