Source:https://news.yahoo.co.jp/articles/d37fd93dc6237dac91ee65c4e191d2e3fd845eda
【列島エイリアンズ】香港難民編(2) 「日本なら簡単に永住資格が取れる」 中国出身で香港在住だった雷仁昌さん(仮名、47)一家が日本に移住を決めたのは、日本に住む中国人の知人からそう聞かされたことがきっかけだった。 香港の「中国化」に抵抗するデモを中国共産党が力でねじ伏せた2019年以降、忍び寄る独裁の足音から逃れようと海外へ移住する動きは一気に加速した。 香港市民の行き先としては、同じ中華圏の台湾や旧宗主国であるイギリス、またはカナダ、オーストラリアなどが人気だった。しかし夫婦ともに中国本土出身者という、いわゆる「双非(スワンフェイ)」である雷さん一家にはハードルが高かった。 そして日本に移住して1年あまり、雷さんは実際に永住資格を取得することになる。 「知人に紹介してもらった移住コンサルタントの指示に従っただけです。まず、私が香港に所有する飲食系の企業に日本食材を納品するための法人を日本で設立し、その代表に就任することで3年の経営管理ビザを取得することができた。で、入国してすぐに永住資格を申請したところ、問題なく1年後には取得できました」 しかし、日本の永住資格取得は、本当にそこまで簡単なのだろうか。行政書士でSAI法務事務所代表の上松功二郎氏が話す。 「永住資格取得は、原則10年の在留歴が前提となってきましたが、2017年に『永住許可に関するガイドライン』が改定されたことで、要件を満たせば1年での取得も可能になりました。その要件とは、学歴や職歴、日本での年収などの項目からなる『高度専門職省令に規定するポイント計算を行った場合に80点以上を有している』というものです」 一方で、「自身が立ち上げた会社が受け入れ先ということになれば、給与の設定など自由にできるため、書類上の要件は満たしやすくなるかもしれません」(上松氏)と、一種の裏技が存在することを指摘する。 雷氏によると、日本法人からの自らへの年収は、2500万円に設定している。これだけで「高度専門職省令に規定するポイント計算」では40点の加算となる。ただ、それに見合った勤務実態があるのかと聞いたところ、雷氏は「勤務はしていないが、毎日ゴルフか山登りをしながら、新規ビジネスの構想を考えている。自分の会社から自分にいくら給与を払おうが、自由なはず」と答えた。 ちなみに、その日本法人では誰ひとり社員を雇用しておらず、業務もほぼ行っていないとのこと。いわばペーパーカンパニーだ。 さらに「1年での永住資格は、高い教養と知識・技能を有し、日本経済への高い貢献性が期待できる優秀な人材を受け入れるために設けられた特例であり、ごく限られた外国人しか対象となりません。ただ、1年という在留期間で、外国人の素行の全てを判断することは無理があり、一生の在留を認めていいのかという疑問があることも確かです」と上松氏。 高度人材を受け入れるために開いた門戸からは、招かれざる客も入って来るのだ。 =つづく 1都3県に住む外国人は120万人とも言われ、東京は文字通りの多民族都市だ。ところが、多文化共生が進むロンドンやニューヨークと比べると、東京在住外国人たちはそれぞれ出身地別のコミュニティーのなかで生活していることが多い。中韓はもとより、ベトナム、ネパール、クルド系など無数の「異邦」が形成されているイメージだ。その境界をまたぎ歩き、東京に散在する異邦を垣間見ていく。境界の向こうでは、われわれもまたエイリアン(異邦人)という意味を込めて。 ■奥窪優木(おくくぼ・ゆうき) 1980年、愛媛県出身。上智大学経済学部卒。ニューヨーク市立大学中退後、中国で現地取材。2008年に帰国後、「国家の政策や国際的事象が、末端の生活者やアングラ社会に与える影響」をテーマに取材活動。16年「週刊SPA!」で問題提起した「外国人による公的医療保険の悪用問題」は国会でも議論され、健康保険法等の改正につながった。著書に「ルポ 新型コロナ詐欺」(扶桑社)など。
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