Source:https://www.arukikata.co.jp/web/article/item/3004299/
執筆者:齋藤 小夜里
青年海外協力隊としてネパールで2年間活動。2022年、アイ・シー・ネットに入社し、2025年大阪・関西万博関連事業や日本企業の海外展開支援に従事。現在もネパールの知人と交流があり、たびたび渡航もしている。
ネパールは、世界最高峰エベレストをはじめとする8000m級の山が連なるヒマラヤ山脈を望む国。そのエベレストを間近に見ようと、長期休暇を利用してエベレストベースキャンプ(約5300m)へ、そしてエベレストが眼前に広がる展望地・カラパタール(約5500m)までのトレッキングに挑戦することにしました。
エベレスト街道とは
ネパールにはさまざまなトレッキングコースが整備されていますが、なかでもエベレスト山腹を目指すコースはエベレスト街道と呼ばれ、世界中からトレッキング客が集まります。筆者のようなトレッキング初心者でも挑戦しやすく、往復で約10日間の道のりです。
エベレスト街道の玄関口はルクラという街。カトマンズから小型飛行機に乗り込み、ルクラを目指します。世界一危険な空港と呼ばれるテンジン・ヒラリー空港(旧ルクラ空港)は、標高約2800mに位置しています。天候が変わりやすく、傾斜がついた短い滑走路で航空機事故が多発していることもあり、乗客たちは運命共同体。着陸に成功すると、乗客たちは皆安堵するとともに拍手喝采です。
いざ出発!
さて、ルクラを出発。夢枕獏作の『神々の山嶺』を事前に読破し、ヒマラヤ挑戦へのモチベーションを高めてきたわれわれは、まるでそれぞれが伝説の孤高のクライマー羽生丈二(『神々の山嶺』の主人公)になった気分で意気揚々と進みます。
ルクラからしばらくは心地よい緑豊かな山の中を歩いていきます。トレッキングコースはその土地で生活する人たちの生活道にもなっています。すばらしい景色はもちろんのこと、そこで暮らす人々の山の生活の営みも自然と目に入ります。
山での生き方と暮らしの知恵
エベレスト街道では、荷物をたくさん抱えたヤクや水牛と多くすれ違います。道は車が通れないほど狭いため、筆者たちトレッキング客の荷物を運んでくれたり、ロッジへ荷物を送り届けてくれたりする動物は貴重な存在です。
荷物を抱えた動物が道を通るときは、動物ファースト。動物や動物の運ぶ荷物に当たって崖から落ちないよう、われわれ人間たちは山側に寄って動物たちが通り過ぎるのを待ちます。荷物を運んでくれる動物たちのおかげで、1日の終わりにロッジで温かい食べ物をたくさん食べることができます。
トレッキングの最中には民家の石壁で家畜の糞を乾燥させている光景もよく見られます。資源が限られる環境のなか、乾燥させた家畜の糞は燃料として活用されています。持続可能な生活、ここにありです。
いよいよ登頂に近づく
すばらしい自然、仲間、現地に住む方々や世界中から集まるトレッキング客との交流に元気をもらいながらエベレスト街道を進んでいくと、徐々に岩山が多くなってきます。標高の高さはもちろんのこと、数日続くトレッキングの疲れから息苦しさや疲れを感じやすくなります。
ネパール人はよくネパール語で「ビスターライ、ビスターライ」と言います。日本語で「ゆっくり、ゆっくり」という意味ですが、高山病の危険性も十分にあるため、高度順応する日を設けて標高に徐々に慣れながら、無理をせずにビスターライ登っていきましょう。
標高5000m近くなると、疲れ、寒さ、息苦しさで体力の限界を感じ、もうこれ以上進めないというネガティブな気持ちになってきます。そんななか、ネパール人や仲間たちに「ビスターライ」と励まされながら一歩一歩進んでいき、エベレストベースキャンプ(約5300m)、そして最終目的地のカラパタール(約5500m)に到達することができました。そこで見た光景やカラパタールで感じた朝日(太陽)の温かさ、自然の偉大さは今でも忘れることができません。
登り切った達成感はひとしお。帰路は徐々に標高が下がっていくので、体も気持ちも楽になり解放感でいっぱいです。1週間ぶりの熱々のシャワーやおしゃれなカフェでのホットコーヒーなど、普段何気ないものに対する感謝の気持ちがわいてきました。まるでジェットコースターの滑車を下るようにカトマンズに向けて小型飛行機は離陸し(恐怖!)、カトマンズに着くとやっと大きく息を吸える感覚を覚えます。
最後に
エベレスト街道の道のりは決して楽ではありませんでしたが、一生忘れることができない絶景や、その場をともにしたトレッキング仲間との出会いや交流は大切な思い出となりました。観光名所をめぐる旅もいいですが、なかなか行けない場所を訪れる旅はいかがでしょうか?
監修:地球の歩き方
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