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長崎放送
長崎の暮らし経済を分かりやすくお伝えしている「ウイークリーオピニオン」 今回のテーマは「2024年長崎経済の展望は」です。 平家達史NBC論説委員は『今年の長崎の経済』を見通す上で重要なポイントが、3つあるといいます。地域の競争力を維持するためには、何が必要なのでしょうか。 【写真を見る】安易な前例踏襲では“じり貧”に…2024年長崎経済の展望「新しいアイデアやマーケット動向に敏感に反応を」 【住吉光アナウンサー(以下:住)】平家さん今年もよろしくお願いします。 【平家達史NBC論説委員(以下:平)】よろしくお願いします。 新年1回目ということで、こちらのテーマです── ■2024年長崎経済の展望は 日本には干支とからめた株式相場の格言がありますが、今年「辰年」の相場の格言は「辰巳天井」です。 これは、うさぎ年からの上昇相場が、辰年や巳年に天井をつけるというものです。 昨年のうさぎ年の日経平均株価は、1年間で3割近く上昇し、まさにうさぎ年の格言の“跳ねる”がごとくの結果でした。 【住】9日の日経平均株価もバブル経済崩壊後の高値を更新しました。ところで、過去の辰年はどうだったんでしょうか。 【平】戦後、辰年は6回ありましたが、日経平均株価でみると4回は株価が上がっています。前回の2012年は、年間で2割以上の上昇でした。 【住】今年は株式相場もそうですが、長崎県経済は大きく動いていますし、更なる飛躍の年になればよいですね。 【平】そうですね。今年一年の長崎経済を見通す上で、注意すべきポイントは3つ挙げられると思います。 それは── ●人手不足による供給制約 ●物価高と賃金 ●大型プロジェクトの経済効果 です。 ■「人が足らん、人が足らん」だけじゃ解決しない 【住】まず「人手不足による供給制約」ということですが、労働力人口の減少が激しい長崎は慢性的な人手不足に陥っています。それにこれまでこのコーナーでも取り上げてきた「2024年問題」もありますよね。 【平】はい、今後さらに経済が正常化していくにつれて、人手不足の影響が強くなり、需要が回復しているのに供給が追い付かず、結果として“逸失利益”――本来ならば獲得できるはずの利益を逃してしまう――という可能性が大きくなりそうです。
【住】人手不足については、経済界でも重要なテーマとしてとらえていますよね。 【平】長崎商工会議所の森会頭も重視しています。 長崎商工会議所 森拓二郎会頭: 私、年末年始、伊王島に泊まったんですよ。アイランドナガサキに。聞いたらネパール人の方がものすごくたくさん、もう普通に働いていて。 (人手不足への)一つの回答は外国人の採用だと思いますし、あとはやはり各企業がオペレーションを見直して、効率化して、なるべく、少ない人手で仕事が回せるようなイノベーションを起こしていかないといけない。 やはりいろいろ知恵を出していかないと、人手不足を『人が足らん、人が足らん』というだけじゃ解決していかないのかなと思います。 【住】ネパールの方というのは、確かにまだ、なじみがないですが、外国人の採用をさらに進めていく必要はありますね。 【平】はい、そして、森会頭も話されていましたが、DX化やさらなる設備投資によって管理部門や生産現場の自動化や省人化を進めていく必要があると思います。 DX化に馴染まないサービス業などの分野は、人手に頼るしかないのですが、人の使い方の見直しが必要です。 さらに若者が定着できるような仕事や教育、それにUターンを促進する施策などが重要だと思います。 ■物価高は戦争・大統領選・金融政策など“地政学的リスク”に左右される 【住】次のポイントとしては「物価高と賃金」があるかと思いますが、こちらも難しい課題ですよね。 【平】「物価高」については、まず“地政学的リスク”を意識する必要があります。 ロシアによるウクライナへの軍事侵攻が続いていることに加え、パレスチナにおけるイスラエルとハマスの軍事衝突が発生しています。これがアラブ諸国の対立を深め、戦火が拡大するとエネルギー価格への影響が懸念されます。 【住】さらに、今年はアメリカの大統領選挙もありますよね。 【平】はい、今年はアメリカの大統領選挙のほかにも、今月13日に台湾総統選がありますし、ロシアの大統領選挙や韓国の総選挙など世界で大型選挙の多い年です。 この結果が地政学的リスクにどのような影響を及ぼすのかも気になるところです。 世界における「分断」は経済的な非効率を生むだけです。
さらに、これまでの物価高に対して欧米が金利を引き上げてきましたが、それが海外経済の減速につながり、それを踏まえて『欧米の金融政策が緩和方向に舵を切るのか』一方で『日本の超金融緩和政策が修正されていくのか』によって外国為替相場に影響が及ぶ可能性があります。それによって、日本の物価がどうなるかも変わってくると思います。 ■「人手不足」の根本解決は賃上げ──収益率をあげていく 【住】なるほど、「物価高」については私たちの手の届かないところの話で、変化を受け止めるしかないということですよね。 生活者としては“賃上げ”が切実な要求となるわけですが、長崎の企業にとって賃上げは実際可能なのでしょうか。 【平】企業の取り組み次第では不可能ではないと思います。日銀長崎支店の黒住支店長も、とくに長崎の観光業では“対応可能”ではないかと見ています。 日銀長崎支店 黒住卓司支店長: 長崎の観光に携わる人が『いろんな形でお金を儲けていく』っていうことをどう考えていくか、考え直す時期かなと思ってます。 一昨年から、物価が上昇する中で、だいぶ価格転嫁ということが進んでおりますので、サービスに見合った価格をしっかりつけていって、それが翻って従業員の賃金に回るってことが、いいことなんじゃないかと」 【住】観光業では価格が物価に追いついていないということなんですね。確かに、観光業が勢いづき、賃金にも反映されていくと、長崎全体にも影響が出ますね。 【平】観光業に限らず、収益を拡大していくためには“付加価値”を高めて『良いものを高く売る』ことに舵を切っていく必要があります。 これまで通りの商品やサービスを、これまでと同じ価格で売るのでは “収益率”が悪くなるだけです。 原材料等の見直しや提供する商品やサービスの見直しにより、収益率を上げ、賃金を上げていかなければ『人手不足』も改善しません。 ■新しいアイデアやマーケット動向に敏感に反応を 【住】残る今年のポイントは「大型プロジェクトの経済効果」ですね。
【平】今年の10月に「長崎スタジアムシティ」の開業が予定されています。この開業によって交流人口の増加に期待がかかります。 この交流人口の増加を経済の活性化につなげるためには、来県される方々に街としてどのようなサービスを提供できるのかが鍵です。 これは街としての回遊性を高める施策と、回遊していただいた方々に、先ほど申し上げた付加価値の高いものを提供できるのかにかかってきます。 【住】スタジアムシティ自体は民間の事業ですが、街全体で開業効果を最大化するには、行政側の取組も必要となりそうですね。 【平】そうですね。「経済効果」を最大限に発揮させるように行政と民間企業が知恵を出し合ってグランドデザインを描いて、できることから素早く実行していくことが重要だと考えます。 いずれにしても、私どもを取り巻く環境はどんどん変わっています。 安易な前例踏襲では“じり貧”になるだけであり、それでは「地域間競争」に勝ち抜くことはできません。 常に「マーケット・イン」の発想で、世の中のニーズを探り、他地域の成功例を吸収し、速やかに実践に移さなければならないと思います。 今年は、安易な前例踏襲を“絶つ”ことで、「龍」は「龍」でも“昇り龍”になることを意識する年かもしれません。視野を広げて、夢を大きくです。
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