2024年1月15日月曜日

来日7カ月の早すぎる訃報 27歳、あるネパール人留学生が名古屋で死んだ

 Source:https://www.chunichi.co.jp/article/815142

2023年12月11日 05時05分 (12月29日 11時29分更新)、Googleニュースより

カトマンズ市内の幹線道路。前方の山を越えて険しい道を進むと、その村があった=ネパールで

カトマンズ市内の幹線道路。前方の山を越えて険しい道を進むと、その村があった=ネパールで

 今年10月、ネパールの首都カトマンズから車で3時間ほどの村。観光客でにぎわう首都の喧噪(けんそう)をよそに、緑豊かな山々が連なり、棚田が整然と並ぶ谷を澄んだ水が流れる。
 この村でヤギを飼って暮らすザヤラム(24)は、キビ畑の脇に腰を下ろし、うつむきがちに口を開いた。「一緒にビジネスがしたかった」。兄は日本で、自分はネパールで。飲食店でも、食料品店でも、どんな商売でもよかった。一時は経済大国として世界に名をはせた、日本で見たやり方を取り入れて。
 だが、兄弟で描いた夢は、はかなく散った。「2人で頑張ろうと思ってたけど、こんなことになっちゃった」。生い茂った草を、不意に降りだした雨がぬらした。
 2022年12月10日。ザヤラムの四つ上の兄は、故郷から4900キロ離れた名古屋市中区のワンルームマンションで息を引き取った。留学のために日本へ来て、わずか7カ月余。27歳の若さだった。
 遺体は、同市内で荼毘(だび)に付された。同じくネパールから日本へ来ている同胞たちが集まり、ささやかに弔った。
 出入国在留管理庁の6月末時点の統計で、国内の在留外国人は320万人を超え過去最多となった。ざっと計算すると、日本で暮らす38人に1人は外国人。都市部の中学校なら、クラスに1人はいることになる。
 中でも近年急増しているネパールの人たちは、アルバイトをしながら日本語を学ぶ留学生が多い。代表的な勤務先は、コンビニや飲食店など。ザヤラムの兄もそうだった。
 日々、どこかで顔を合わせ、すれ違う。だが、そんな彼ら、彼女たちを何も知らないことに気付いた。異国での生活の苦労や、背負った事情、そしていつしか生じていた異変。死亡に関する厚生労働省の統計で「その他」として100以上の国・地域の人たちと一緒にくくられた国から来た一人の若者、ワグレ・ナバラズの死。その背景を知るために、足跡をたどった。
27歳で亡くなったネパール人留学生ワグレ・ナバラズ=フェイスブックから

27歳で亡くなったネパール人留学生ワグレ・ナバラズ=フェイスブックから


2022年12月13日午後。朝方まで冷たい雨を降らせた雲は消え、冬の晴れ間が広がっていた。名古屋市中村区の葬儀場の一室は線香のにおいが立ち込め、15人ほどのネパール人が立っていた。黒の喪服姿が数人、水色の上着を着た人もいる。祭壇も、故人の名前を書いた看板もない。
 部屋の前方に、白木の棺(ひつぎ)がぽつんと置かれていた。中に横たわっていたのは、ネパール人留学生ワグレ・ナバラズ。3日前、ハンバーガー店の夜のアルバイトから同市内のマンションの自室に帰宅して眠りにつき、そのまま起きることはなかった。27歳だった...

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