Source:https://news.yahoo.co.jp/articles/ef37498aa0dc84be3e1de03d5442c14011fd4a94
2019年改正で導入 特定技能が産業界に果たした役割
各党が次の衆議院選挙に向けた動きを着々と進めているが、先の通常国会で話題を集めたのが外国人の収容や相関のルールを定めた入管法(出入国管理及び難民認定法)の改正に関する議論だろう。 【マンガ】カナダ人が「日本のトンカツ」を食べて唖然して発した「衝撃の一言」 法案成立を推し進める与党に対して、野党の一部は原則2回までに制限された難民の申請や、諸外国と比べて低めの0.3%(2021年、出入国在留管理庁)という難民認定率を引き合いに厳しく応戦。6月9日の参議院本会議にて、怒号が飛び交う中での採決を迎えた。 日本に出入国する人々の公正な管理や難民認定手続きの整備を目的とした入管法は、1951年10月4日の公布以来、社会情勢に合わせて度々変更が加えられてきた。 2019年4月に行われた前回の法改正では、少子高齢化に伴う人材不足を補うために途上国の人材を日本で育成する「技能実習」や、特定の専門分野の外国人を受け入れる「技術・人材・国際(以下、技人国)」などの在留資格に加えて「特定技能」を創設。特定の産業において、単純労働を含む業務で外国人の受け入れが可能になった。 在留資格が創立された当初はやや伸び悩んだものの、昨年12月末には130,915人(特定技能1号)を記録。長年(15年)に渡り、外国人の人材紹介に取り組む株式会社Global Ally の代表を務める飯塚智聡氏は「外食、宿泊、介護などの14職種に関しては大卒以上という学歴要件がなくなり、語学と実技の試験に合格した18歳以上の方であれば、日本で就業が可能になりました。 就業に5年間の上限が設けられていたり、ご家族を日本に呼べないこと。永住権の獲得するための在留期間(10年間)にカウントされないといった課題はある」としつつも、人材不足の解決に一定の役割を果たしていると言及する。 ---------- 特定技能1号:在留通算上限5年、家族同伴なし (1)介護、(2)ビルクリーニング、(3)素形材・産業機械・電気電子情報関連製造業、(4)建設(土木、建築、ライフライン・設備区分)、(5)造船・舶用工業、(6)自動車整備、(7)航空、(8)宿泊、(9)農業、(10)漁業、(11)飲食料品製造業、(12)外食業 ---------- ---------- 特定技能2号:在留通算上限なし、家族同伴あり 建設分野,造船・舶用工業分野において、特定技能1号よりも高い技能をもつ外国人が取得可能。2023年6月に9分野への拡大が閣議決定された。 ----------
入管法の改正で不法在留を防げるのか
今年6月にも入管法の改正が行われたが、これは日本での就労を目指す外国人に向けたものではなく、「不法滞在」や「不法在留」などのような在留資格を持たずに滞在を続ける外国人の処遇に重きを置いたものだ。 世界各国と比較した日本の難民認定率の低さや、送還を妨げた外国人への刑事罰の導入などへの指摘もあるなかで法案の成立を急いだ背景には、2023年1月1日時点で70,491人(前年比5.6%増)に及ぶ不法在留外国人の存在が挙げられる。 在留資格を持たずに入国した方だけではなく、旅行などの「短期滞在」、日本での就職活動をする外国人のための「特定活動」、日本の企業で技術習得を目指す「技能実習」といったルートで日本に入国したものの、何らかの事情により在留資格を失った後も日本への滞在を続け、「不法在留者」に流れ着くといったパターンも見られる。 なお、2年前に問題になった入管施設に収容中のスリランカ人女性、ウィシュマ・サンダマリ氏が死亡した事案においても、金銭未払いにより退学になった後も日本への滞在を続けたことが「不法在留」として収容される直接の要因となっている。
入管法改正を急ぐ本当の理由
「難民」とは、「人種や宗教などを理由に自国で迫害を受けるおそれがあり、他国に逃れている人々」(難民条約)のことであり、彼らの生命を保護するために難民認定制度が設けられている。 日本の難民認定制度は0.3%(2021年、出入国在留管理庁)と非常に厳しいハードルが設けられているが、実態を見ると日本への在留を申請する「難民」の約23%の人々が申請時に在留資格を持たない状況にあることが、そのハードルを一層高くしているとも言えるだろう。 ---------- 正規在留者:1,870人(申請者総数 の約77%) ※在留資格の内訳は「技能実習」が623人、難民認定申請を繰り返す「特定活動(難民認定申請者用)」が582人、観光等を目的として入国した「短期滞在」が181人、自ら出国する意思を表明し、その準備のための期間として在留の許可を受けた後に難民認定申請を行った「特定活動(出国準備期間)」81人など。 ---------- ---------- 非正規在留者:543人(総数の約23%・前年比約153%増) 内訳はトルコ(159人)、スリランカ(72人)、ミャンマー(57人)、パキスタン(35人)、ネパール(30人) など。 ---------- そして今年6月の改正では、これまで認められていなかった本国への送還が認められるようになった。入管施設収容下におけるウィシュマ氏の死は、施設内における外国人の生活環境などのこれまでは見えにくかった問題を浮き彫りにし、収容者の削減に舵を切った形だ。 3回目以降の難民申請で「難民認定すべき相当の理由を示さなければ送還が可能」という文言が新たに付け加えられたが、これも複数回申請者の約35%(443人)が非正規在留者からの申請であることや、一定の申請回数を超えた場合に滞在を許可された事例が少ない実態を反映したものとなっている。 ---------- 過去にも難民認定申請を行なったことがある申請者:1248人(申請者全体の約52%) 2回目の申請者:856人(約69%) 3回目の申請者:304人(約24%) 4回目の申請者:67人(約5%) 5回目の申請者:16人(約1%) 6回目の申請者:4人 7回目の申請者1人 ---------- さらに改正案では、ウィシュマ氏の死亡による世論の声や、「人権に対する配慮が不十分」という指摘を受けて廃案になった2021年の案に修正を加え、新たに「監理措置」制度が導入された。 これにより難民認定申請中の外国人が、出入国在留管理庁に認められた「監理人」の監督の元で日常生活を営むことをことが可能になったほか、やむを得ず入館施設に収容されることになった場合にも、「3ヶ月ごとに収容の必要性を検討する」と明記されるなど、健康や人権に対して最大限配慮された内容とされている。
日本が経済成長していくためには
今回採決された改正入管法は、公布から1年以内に全面施行される。日本の発展に必要不可欠な外国人の受け入れと、在留が認められない外国人の速やかな退去を進めていく姿勢が鮮明となった。 「以前に比べたら、全体的に就労を希望する外国人の許可率は高くなっているように感じます。学歴と語学力が求められる技術・人文知識・国際業務ビザの適用条件がさらに緩和されたり、特定技能2号の適用範囲がさらに拡大すれば、国内で外国籍の人材が活躍出来る場面がさらに増えていくことでしょう」(飯塚)と展望を寄せつつも、受け入れ体制への課題も口にする。 「『日本で技術を学んだ後、母国の発展に生かす』という趣旨の技能実習制度は、実習に対する対価水準が抑えられています。(労働では無い為、最低賃金等の労働基準法の適用外です)しかし、外国人を特定技能制度で雇用した場合には、原則的に正社員として受け入れが義務付けられており、彼らに対して日本人と同等額以上の給与を払う必要があるため、単に安価な労働力を求める企業と労働基準法が適応される特定技能の外国人就業者の間にミスマッチが発生しやすい状況にあります」 今年3月には、日本政府が2040年までの目標として掲げる経済成長を達成するには、現在の約4倍にあたる674万人の外国人の受け入れが必要になること。そして、現在のままでは42万人が不足するという統計(独立行政法人国際協力機構など)が明らかになった。 残念ながら「まだまだ外国人を単なる安価な労働者として捉えている経営者もいる」(飯塚)という状況は見られるが、さまざまな受け入れ態勢の整備や外国籍の人材に能力を発揮してもらうための社会作りを進めていく必要があるだろう。
白鳥 純一(ライター)
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