Source:https://news.yahoo.co.jp/articles/bd68f3ca4814b219f68b607d8ebbd9919eee1f42
チューリップ・マジュムダール、国際保健担当編集委員 新型コロナウイルスのワクチンの公平な分配を目指す国際的な取り組み「COVAX」が、1億4000万回分のワクチン不足に直面している。インドで危機的な感染状況が続いていることが原因になっている。 COVAXで最大のワクチン供給元となっているのが「インド血清研究所(SII)」だ。そのSIIは、インドの感染急拡大を受けて3月にワクチンの輸出が停止されて以降、予定されていた出荷をすべてストップさせている。 こうした状況から、COVAXでワクチンの購入と分配を担っている国連児童基金(ユニセフ)は、主要7カ国(G7)と欧州連合(EU)加盟国のリーダーらに、ワクチンを譲るよう求めている。 G7とEU各国の首脳は今月、イギリスで会合を開く予定だ。 ユニセフはそれらの国々について、自国民すべてにワクチン接種をしても、なお合計で約1億5300万回分のワクチンを拠出できるはずだと、データを基に主張している。 ■「大きな懸念」 SIIは今年、COVAXに供給することになっているワクチン20億回分のうちの約半分を届けることになっていた。しかし、3~5月の出荷はゼロに。6月末には、1億9000万回分が不足するとみられている。 「困ったことに、次回のワクチン供給がいつになるのか分からない」と、ユニセフでCOVAXの供給調整にあたるジアン・ガンディーさんは話した。 「願わくは、事態が元に戻ってほしい。しかし、インドの状況は先行きが見通せず(中略)大きな懸念となっている」 ユニセフが早急にワクチンの余剰分を拠出するよう求めているのは、カナダ、フランス、ドイツ、イタリア、日本、イギリス、アメリカのG7各国とEU加盟国だ。 このうちイギリス、アメリカ、カナダなどは、全国民に必要以上の回数を接種できる量のワクチンを確保している。 イギリスのボリス・ジョンソン首相は2月、ワクチンの余剰分の多くを貧困国に寄贈すると約束した。だが、具体的なスケジュールは示していない。アメリカも似たような状況だ。G7でインドの危機を受けて実際にワクチンを拠出したのは、今のところフランスだけだ。 ■拠出を表明している国はわずか ユニセフは、経済力と影響力のあるG7が6~8月に各国のワクチンの20%を拠出すれば、計約1億5300万回分が提供されることになり、COVAXの不足は大幅に改善されるとしている。 フランスは6月中旬までに50万回分を寄付するとしている。一方、ベルギーは数週間内に10万回分を提供すると約束している。 現時点でワクチンの寄贈を表明しているごく少数の国は、他に、スペイン、スウェーデン、アラブ首長国連邦(UAE)など。 インドでの事態は自国でも起こり得るとの深刻な懸念は、インドとの距離に関係なく、多くの国が抱えている。 「感染者の爆発的増加と医療制度のひっ迫は、ネパールやスリランカ、モルディヴ(中略)、さらにアルゼンチンやブラジルでも起こっている」と、ユニセフのヘンリエッタ・フォア事務局長は話した。「子どもや家族にのしかかる負担は計り知れない」。 ■医療関係者も未接種 アフリカの一部の国々は、COVAXに特に大きく依存している。 ただ、世界各地でみられるように、アフリカでも一部のコミュニティーでワクチン接種へのためらいがある。また、実際に人の腕にどうやって注射するかも大きな問題だ。特別な訓練を受けた医療従事者と、インフラが未整備の奥地までウイルスを運ぶことが求められる。 国によっては、1回目の接種を終えた高リスクの人々に2回目の接種をするか、それとも次のワクチンが届くことを期待して、未接種の人の接種を進めていくかの決断を迫られている。 「アフリカの多くの国で、医療関係者や社会の最前線で働く人々がまだワクチン接種を受けていない」と、ユニセフのガンディーさんは説明した。「その一方で高所得の国々は、10代の若者など、低リスクの人々の接種を進めている」。 世界保健機関(WHO)によると、ルワンダ、セネガル、ガーナなどの国々では、ワクチンの在庫が底をつき始めているという。 ■「連帯が大事」 「インドの状況には心から同情する」と、アフリカでWHOのワクチン接種プログラムを指揮するリチャード・ミヒゴ博士は話した。 「私たちがCOVAXで受け取った(1800万回分の)ワクチンのほとんどは、インドから届けられた」 「ワクチンをたっぷり持っている国々が、世界的連帯の約束を守ってワクチンを拠出するのは、とても大事なことだと思う。あらゆる場所で感染を食い止めなければ、このパンデミックを終わらせるのはかなり難しい。そのことは、全国民が接種を受けた国も同じだ」 COVAXを当初の軌道に戻そうと、異なるワクチンを使った新たな取り決めがいくつか整備されつつある。ただいずれも、インドからの供給不足を数週間で補えるものではない。 貧困国がいま直面している大きな不足を埋める方法は、富裕国が在庫の一部を拠出することだけだ。 「私たちは繰り返し、警戒を緩めてしまうことや、低中所得国に公平なワクチン接種の機会や診断法、治療学を提供しないことの危険性について警告してきた」と、ユニセフのフォア事務局長は話した。 「そうした警告に注意が向けられなければ、インドで多数の死者を出している感染急増と同じことが起こる。私たちはそれを懸念している。新型ウイルスが止められずに広がっていく期間が長引くほど、より致死性と感染力の強い変異株が出現するリスクが高くなる」 ■アフリカとCOVAX ・ボツワナ、ガーナ、ルワンダ、セネガルなど7カ国が、COVAXで入手したワクチンをほぼ100%使い果たした ・ケニアとマラウイは同ワクチンを90%近く使用した ・カボヴェルデとガンビアは同ワクチンを60%使った ・コンゴ(旧ザイール)は入手したうち130万回分をアフリカの他国に回した。6月の消費期限までに使い切れないため (出典:WHO) ■COVAXとは ・2021年末までに新型ウイルスのワクチン20億回分を分配することが目標 ・すべての国が人口の20%以上にワクチンを接種するまで、どの国にも人口の20%以上分のワクチンを提供しない ・これまでに参加122カ国にワクチン計約6000万回分を出荷 ・WHO、「ワクチンと予防接種のための世界同盟(GAVI)」、「感染症流行対策イノベーション連合(CEPI)」が共同で主導 ・ユニセフが主要な配送パートナー (英語記事 India's Covid crisis hits vaccine-sharing scheme)
(c) BBC News
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