Source:https://news.yahoo.co.jp/articles/40fd47ddfba91b7cfb694a8a2ffe4117fa2a543a
女優活動、ボランティア活動と精力的にこなし、内面からあふれる魅力に磨きをかける女優・藤原紀香。1年半ぶりの舞台出演となる『魔界転生』では、小池徹平演じる天草四郎の姉・お品という物語のカギを握る女性を演じる。「気高い魂と覚悟を持って演じたい」とほれ込む役柄への思いや、これまでの人生に影響を与えたターニングポイントなど話を聞いた。 【写真】変わらないスタイルと内面からあふれる輝きがますます美しい藤原紀香 ★“愛と慈しみ”あふれる役を「大きな使命を背負い覚悟を持って演じたい」 山田風太郎の人気伝奇小説を原作に、劇作家マキノノゾミ脚本、堤幸彦演出、上川隆也主演で上演される舞台『魔界転生』は、2018年の初演時には10万人の動員を記録した人気アクション・エンターテインメント時代劇。島原の乱で処刑された天草四郎が徳川の世を恨みよみがえらせた宮本武蔵ら剣豪に立ち向かう、柳生十兵衛の姿を描く。藤原は今回の再演から本作に参加する。 「前作で感銘を受けた舞台でしたので、このお役が私のところに来てくれたというご縁、巡り合いへの感謝の気持ちでいっぱい」と出演の喜びを明かす藤原。新しくなった台本を読み、島原の乱について深く調べてみると演じるお品や天草四郎時貞に対する深い思いを抱いたという。 「島原の乱については歴史の教科書で習いましたがそれくらいの認識でした。今回、日本の歴史が始まって以来の大殺戮(さつりく)だったと知りました。宗教の自由を奪われた3万7000人が命を落とし、さらし首にされた。物語では徹平君演じる四郎が敵役とされていますが、世を呪ってしまう気持ちも理解できる歴史の真実がそこにあり、四郎は敵じゃない、懸命に世を生きた普通の16歳の男の子だったのだと思います」と熱い気持ちがあふれる。 「なんとしてでも彷徨(さまよ)える四郎の魂を救いたい。それはきっと私にしかできないことだとお品は感じているんです。この物語ではほとんどの人物が剣を持ち戦います。しかし私が持つものは“愛と慈しみ”。大きな慈愛の気持ちで、世を呪おうとしている魔界衆となってしまった愛する者たちの魂を救わなければ…そんな思いで日々つとめています」。 お品は原作には登場しないキャラクターだが、「お品のような女性はいたのだと思って演じています。生き残ってしまった自分にできること、それは愛する者たちの魂を救うこと。“はらいそ”(天国)へ誘う…この大きな使命を背負い、気高い魂と覚悟を持って生きているのがお品です。最愛の者たちのために生きた人生が、結果、世の中を救うことにつながる…大変やりがいのある大事なお役を賜り、本当に幸せです」。 お品との共通点を尋ねると、「演じる際、役との共通点は考えることはあまりしないんです」と意外な答えが。「もちろん、自身であればどうするかなどは考えます。が、演じる際は、このお品というお役の生き方を自分にそのまま入れていくという役作りなのだと思います。“崇高な魂を持つ稀有(けう)な女性だ”という尊敬の念を持ってこの役を演じています。もしお品という人が本当にこの世を生きていて、今、天から見てくれていたなら、“私はこんな思いであの時代を生き、駆け抜けた。自分の存在をこのように表現してくれたのですね。ありがとう”と言ってもらえるように日々つとめようと思っています」。 天草四郎を演じる小池とは共演も多く、なにかと関わりは深い。「徹平君のデビュー当時、共演したこともあり、そして、同じものを見つめ前に進む役を演じることも多かったので、本当に肉親みたいに感じている部分があります。今回は、わたし自身、四郎も知らないある秘密を抱えているので、ここでは言えないのですが、四郎には特別な感情を心に宿しています。フライングで彼が飛ぶ時も『今日も安全に飛べますように』と、舞台袖で願いを込めて見ていたり、もう親みたいですね(笑)」。
★人間が持つパワーやエネルギーのすごさを実感 これまで映像での活躍が目立つ藤原だが、近年は舞台作品にも積極的だ。「舞台はお客さまの息吹をそのまま感じられる、かけがえのない空間であり、目に見えないエネルギーの交換なども自然にできてしまう場所だと思います。そこに立つということは、毎回かなりのエネルギーが自身にも必要なのだと感じているので心身共に鍛錬も欠かせません。そして、カンパニー一同、皆、作品へのリスペクトを忘れず、それぞれのお役を全うし、一つの作品を作りあげるその時に生まれるエネルギーをお客様に持って帰っていただきたい…。生身の人間が結集し、一つの思いを持ったときに放つパワーはすごいんだ。舞台はけっして不必要なものではないんだ。そんな思いで毎公演つとめています。 今作『魔界転生2021』は、私は初演組ですが、ハートフルでパッションあふれた上川隆也座長を筆頭に、松平健さんや浅野ゆう子さんなど尊敬できる大先輩方、徹平君や山口馬木也さん、野添義弘さんなど気の知れた方々、そして初共演ですがエナジーあふれる素晴らしい若手の皆さんなどなど、本当に愛のあるすてきなカンパニーで毎日劇場に行くことが楽しくて。ここまで、愛知、そして福岡での公演が終わりましたが、こんなご時世に劇場にいらしてくださるお客様への感謝をいつも以上に感じています。 『コロナ禍で疲れていたのだけど観に来てよかった。明日からまた頑張れるわ』『オープニングからカーテンコールまで目が離せずあっという間で、感動で元気をもらえました!』『この舞台を見て、今まで以上に相手を思いやり、大切にしていこうと心から感じられました』、日々こんな言葉をいただけたり、カーテンコールの際のお客様のキラキラしたお顔からもエネルギーをいただいています」。 コロナ禍で藤原も出演予定の舞台が中止になるなど、さまざまな経験をした。 「会いたい人にも会えず、人と人とのつながりが希薄になる今、一期一会の思いをより強く感じるようになりました。ヒューマンパワーのすごさ、大切さを再認識しました。『エンターテイメントは不必要ではない』そうお客様に自然に感じていただけるよう、私もそう信じてつとめていきたいと思います」。
★阪神淡路大震災とアメリカ同時多発テロで経験した考え方の変化 今年6月に50歳を迎える藤原。これまでの人生を振り返っての転機を尋ねると2つの大きな出来事があるという。 「1つは1995年の阪神淡路大震災。まだ大学生でしたので両親に反対を受け本格的に上京はしていませんでした。当時、多くの著名な方が避難所に炊き出しや激励に来てくださって…。私の目指す世界というのは、舞台やテレビなどで夢や勇気を表現して伝えるだけでなく、人のために何かをすることによりそこに希望や光が集まり、社会にいい影響を与えたり、少しでも良い方向に導くことができる職業でもあるのだ、と気付きました。その後、この世界に入っても、自身も先輩方のように社会の中でできる、人のために役立つことを率先してつとめたいと、そう思うようになりました。 2つ目は2001年のアメリカ同時多発テロ事件。NYにもたくさんアメリカ人の友人がいるので、すぐ現地に渡りましたがその状況にがくぜんとしました。同時に、爆撃されているアフガニスタンで普通に生きている子どもたちはどうなっているのだろう、現場に行かねば分からないこともあるのではないか、と帰国後、自身で企画書を書きプロデューサーに持ち込み、アフガニスタンへの取材につながりました。 その旅をきっかけに感じたことがたくさんあり、日本を含めた世界の子どもたちの教育サポートをする“スマイルプリーズ世界子ども基金”というNPOを立ち上げました。ライフワークとしてがんばっていこうと心に決め19年目になりますが、これまでアフガニスタン、カンボジア、ネパールに学校を建て、教科書などソフト面でもサポートを続けています。コロナ禍で現地に今は行けないですが、早く子どもたちに会いに行きたいです」。 女優、ボランティア、歌舞伎役者の妻として忙しい日々が続くが、充実感に満ちている様子。 「自分の夢や欲のためだけじゃなくて、なにかしら社会の中で役に立つことがあればどんどん参加していきたいと思っています。NPOもそうですが、ボランティアというのは継続が大事。無理をせずできる範囲で続けていくことが大切なのだと感じています。ひとりの力は小さいけれど、賛同してくださる方々と共にできるだけ継続していきたいと。 仕事ではないそんなライフワークから得られる、愛や優しさのエネルギーはとても大きくて、それが俳優業にもつながってくると思います。役者業、ライフワークであるボランティア活動、そして役者の妻としての仕事、学ぶことの多いこの三つがいい影響を与え合い、私にかけがえのないものを与えてくれるのです」。 ミス日本グランプリ大会でグランプリを受賞してから約30年。これからどんな女性を目指していきたいか尋ねた。 「自身はなんであるのか、そんな肩書きなど自身が考えるのは意味がないと感じています。それよりも大事なのは、ひとりの人間として人間力を向上させること。この人に会えば元気をもらえた、というような内面から輝いている人でありたいなと思います。そして、いくつになっても、どんな現場でも、学び続けたい。人との出会いを大切にして、年齢、立場、関係なく尊敬できる人たちから多くのことを学びたい。そして、この先の人生まだまだいろいろなことが起こると思いますが、生きてるだけで幸せなのだから、と、たとえ悲しいことが起こってもすべてを糧にして成長していきたいと思うんです」。そんな力強く前向きな、藤原紀香らしい言葉が返ってきた。(取材・文:編集部 写真:高野広美) 舞台『魔界転生』は、東京・明治座にて5月18日~28日上演。※詳細は舞台公式HP参照。
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