Source:https://news.yahoo.co.jp/articles/39e91fbf90ec059d046b0921cc4f73bbf79da39c
感染力が強いとされる新型コロナの変異株への置き換わりが、各地で進んでいる。これ以上の変異株の感染拡大を危ぶみ、感染爆発地域からの入国者に対する「水際対策」のさらなる強化を求める声は少なくない。 羽田空港到着後には長い検疫手続きが待つ フランスに住む筆者は、コロナ禍の1年半の間に日仏間を3回往復する機会があった。初期と比べるとコロナ禍になって日仏どちらも入国手続きは大きく変わった。水際対策の現場は入国者から見てどうなのか。 ■「ザル」と非難された水際対策
コロナ禍での3回の日本入国を通じて感じたのは、当初と比べると水際対策は多少は改良されているということだ。コロナ禍の中、初めて帰国したのは2020年3月末だった。そのときの日本入国者に対する水際対策は、はっきり言って「ザル」だった。 公共交通機関の使用が禁じられ、14日間の自主待機が求められるという内容は今と同じであったものの、空港到着後は何の監視もなく、筆者はしていないが良心に目をつぶれば公共交通機関を使って空港から帰ることは簡単にできた。
ちなみに、公共交通機関というのは鉄道、バス、飛行機、モノレール、タクシーなどを指す。それらを使わない手段となると、手段はレンタカーかハイヤー、もしくは家族や知人に車で迎えに来てもらうことになる。 コロナ禍での帰国2回目、2020年12月には、フランスから日本到着後のウイルス検査が必須になった。到着後の検査を加えたことで、以前よりコロナ陽性者の洗い出しはできるようになっていたが、1回目の帰国時と同じく空港からの移動に監視はなかった。検疫システムや対応してくれた係員も、今に比べれば、まだぎこちない印象を受けた。
3回目の帰国を今年4月にした。フランス出国前72時間のPCR検査と日本到着後の抗原検査、そして検疫所が指定する宿泊施設での3日間の隔離が加わった。空港での検疫の流れや、それに携わる人々の動きもとてもスムーズだった。 隔離中の宿泊費と食費は公費により賄われる。隔離が終わった後の残り11日間の自主待機は、自宅もしくは私費により自ら手配した宿泊先で待機を行う。自主隔離場所への移動は、今まで同様に公共交通機関は使えない。(インドなどからの入国者は、入国後3日目と6日目に検査を行い、どちらの検査も陰性だった場合は、検疫所が確保する宿泊施設を退所し、その後、自主待機に移る)。
加えて一連の14日間は、スマホの携行と位置情報を確認する専用アプリを入れることが必須になった。スマホを持っていない場合や、スマホが専用アプリに対応していない場合は自己負担でレンタルが必要となる。 これは自主待機をしている人が自由に移動してしまうことを防ぐためだ。事前に申し出た待機場所と違う場所にいれば、その差異が厚生労働省に報告されるようになった。入国時にこれらに関する誓約書の提出が求められ、違反した場合は氏名が公表される可能性がある。
こうして入国ができるのは私が日本国籍を有しているからであり、外国人の場合、14日以内に上陸拒否対象国・地域に滞在歴があると、「特段の事情」がない限り日本への上陸は拒否される(5月14日からインド、ネパール、パキスタンも対象国に追加)。 ちなみに法務省の出入国管理統計の速報値だと、2021年4月に外国人入国者数は1万7557人、日本人帰国者数は2万9795 だった。うち羽田空港は外国人3013人で日本人は1万1912人。成田空港は外国人の割合が高く1万1440人、日本人は1万2648人だ。一方で、日本からの出国者は外国人4万5053人、日本人は3万5905人だった。
■フランスは対象国によっては指定ホテルで7日間 一方で、ワクチン接種が進みつつあるフランスでは、どのような水際対策を行っているのだろうか。 2021年5月12日現在だと、ヨーロッパ圏、オーストラリア、韓国、イスラエル、日本、ニュージーランド、イギリス、シンガポールを除く欧州域外からのフランスへの入国は、フランス国籍者またはフランス滞在許可証所持者など、やむをえない理由を除いて許可されていない。 搭乗前72時間以内にPCR検査を受けて陰性証明を用意しなければならないが、フランス入国時に検査はない(ただし、場合によっては検査レーンに回される)。
日本を含む上記対象国については、フランス入国後、7日間の自主隔離となる。隔離場所は自宅などでもよく、とくに厳しい制限と監視があるわけではない。7日間が終わった後にPCR検査を受ける誓約書を書くが、実際に受けたかどうかチェックがあるわけではない。 それ以外の国からの入国の場合は、フランス当局が決めたリストに掲載されているホテルで7日間の自主隔離を行う。費用は全額自己負担だ。この隔離期間が終わったあとは、PCR検査を行う。
■良心に任せる水際対策徹底は難しい 日仏共に、入国後の隔離措置については各人の良心に任される部分があるが、すべての人を善人として信用することは難しいようだ。 例えば日本の場合、5月1日付の共同通信によると、入国後の自主隔離期間において誓約場所での待機が確認できなかったり離れた場所にいたりする人は、多い日で1日300人超に上ったという。14日間の健康観察期間中で、1日1回の位置確認が必要な人は平均約2万4000人おり、そのうち誓約場所での待機を確認できない人は毎日約200~300人であるそうだ。内訳は「報告が来ない」が7割で「誓約の場所から数キロ離れている」が3割。割合としては約1%。ほとんどの人は守っているが、ウイルスの広がりやすさを考えれば、軽視はできない。
個人的な体験ではこんなこともあった。筆者とほぼ同じ時期に羽田空港にフランスから帰国した人が、最初3日間の隔離が終わったすぐ後に、福岡にいる様子をSNSに上げていた。友人とレストランで飲食を楽しんでいたようだ。その後は東京へ戻り、表参道など東京の繁華街での様子も上げていた。すべて自主待機の14日間以内だった。 もちろん、その人はすべて公共交通機関を使わずに移動したかもしれないし、それら繁華街はすべて自主待機場所の近くであり、何か日用品を買いに行く途中に撮ったものかもしれない。しかし、筆者の頭には多くの疑問符が付いた。
また、実家が東京などになく地方である場合、自主待機を自ら手配したホテルなどで行う必要がある。そのため空港からの交通手段や自主待機を、経済的な理由で守らない人もいる。筆者の周囲でも、そのような人を見かけたことがあるし、自主待機中に監視があるかどうかの問い合わせを受けたことがある。 今夏、フランスから日本への一時帰国を考えている人は筆者の周囲でも多い。ルールを守らない人がいる限り、日本へ一時帰国する在留邦人および外国人への風当たりは強くなるだろう。「見ていないから」「私だけなら」という心が、結果的に日本社会の入国者への反感を増幅させ、入国者全体の首を締めることになってしまう。
守隨 亨延 :ジャーナリスト
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