Source:https://news.yahoo.co.jp/articles/5b7d92f66e4ccd92b363daeba6fabdcf8b42c797
【有本香の以読制毒】 10日発行の本紙1面に、小池百合子都知事の顔写真とともに、「五輪中止決断あるか」という見出しが躍った。2面を見ると、政治ジャーナリスト、鈴木哲夫さんの寄稿である。 【写真】ニュースキャスター時代の小池百合子氏 鈴木さんとはテレビのレギュラーをご一緒した縁もありよく存じ上げているが、小池氏に関して鈴木さんの取材は常に確度が高い。その鈴木さんの寄稿は、小池氏が「五輪中止」を言い出す可能性を示唆している。 自民党内にも、「やりかねない」という声がある。何しろ5年前、科学的にも法的にも何ら問題のない築地市場の豊洲への移転を、引っ越しのわずか2カ月前になって独断で停止した人だ。多くの人がそう思うのもうなずける。 当時、小池氏は、長年、豊洲移転を反対してきた共産党のネタに便乗するかたちで、「豊洲移転を立ち止まる」と宣言した。 今、折しも時は五輪開会まで約2カ月。共産党支持者らも巻き込んだ「五輪中止」キャンペーンが展開されている。「2カ月」「共産党」というワードがたまたまそろったが、小池氏がこれらに乗らない保証はない。 五輪反対勢力は「コロナで国民を犠牲にして五輪開催か」と、一見正論風の理屈を展開している。 先週の本コラムで、昭和天皇のお言葉を引いて説明したとおり、皆が反論しにくいお題目を掲げて、自分たちの政治目的へ民衆を誘導するのは共産主義者の十八番。五輪反対も、豊洲市場反対もその構造は同じだ。 小池氏周辺から「五輪中止を排除せず」の観測気球が今、上がっている背景には2つの意図が垣間見える。 1つは、自身のこれまでのコロナ対策の失敗を隠す目的、もう1つは、コロナ対策で国民の支持を失っている菅義偉政権へのジャブだ。自民党議員の中からは「五輪中止を宣言して人気を得たら、後始末は政府と組織委員会におっつけて、小池氏自身は国政復帰を狙うのではないか」という声まで出ている。 むろん噂話に過ぎないが、今後、何が起こるか分からないので、一応ここで紹介しておく。 一方、再三、本コラムで問題にしてきたとおり、日本政府のコロナ対策も依然グダグダだ。12日、政府はようやく重い腰を上げ、2週間以内にインド、パキスタン、ネパールの3カ国に滞在歴のある在留資格保持者の日本への再入国は特段の事情がない限り当面拒否すると発表した。世界中でインド変異株の蔓延(まんえん)が確認されてようやくだ。 昨年1月に中国・武漢市から厄介な新型コロナウイルスが上陸して以来、ずっと言い続けているのだが、日本政府はなぜ、こうも「水際」を締めたがらないのか。蛇口を閉めず、新しいウイルスを入れ続け、おまけに入国後の隔離も他国のように義務付けず市中にウイルスを広げておいて、国民にだけ「自粛」を強いる。これでは内閣支持率が下がらないほうがおかしい。 野党が箸にも棒にもかからないおかげで、自公連立政権が倒れないだけの話である。 もう少し話を広げると、自民党の森山裕、立憲民主党の安住淳両国対委員長は12日、外国人の収容や送還のルールを見直す入管難民法改正案について、同日の衆院法務委員会での採決の見送りを決めたという。14日以降に採決されるのだろうが、こういう重要な法案の採決を「国会対策」とやらの道具に使うのはいいかげんやめてもらいたい。 現在の入管難民法には、難民申請さえ繰り返せば、重大犯罪の犯人でも、テロリストでも、強制的に国外退去させることが困難という大きな穴があるのだ。 二言目には「国民の命が」という与野党議員もなぜか、国民の安全の上で極めて重要なこの法改正には消極的だ。とにかく、日本は出入国管理がどうしようもなく甘い。その穴をふさがずして、「国民の気の緩み」などと、どの口が言うのか。都知事も閣僚も胸に手を当てて、よく考えてもらいたい。 ■有本香(ありもと・かおり) ジャーナリスト。1962年、奈良市生まれ。東京外国語大学卒業。旅行雑誌の編集長や企業広報を経て独立。国際関係や、日本の政治をテーマに取材・執筆活動を行う。著書・共著に『中国の「日本買収」計画』(ワック)、『「小池劇場」の真実』(幻冬舎文庫)、『「日本国紀」の副読本 学校が教えない日本史』『「日本国紀」の天皇論』(ともに産経新聞出版)など多数。
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