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23年6月13日、Googleニュースより
救出女性らが作った品 日本に紹介
アジア最貧国の一つであるネパールで、少女がだまされたり、誘拐されたりして売春宿に売られるケースが絶えない。周南市出身の本田綾里さん(29)は、現地で人身取引の被害者支援に取り組んでいる。過酷な現実を伝え、自立を助けるため、被害女性が手作りした品々を日本に紹介する活動を始めた。胸の内で、性被害の苦しみを知る自分自身を重ねながら。(栾暁雨)
パールのアクセサリーや手編みバッグ、ストールなどが販売サイトに並ぶ。売春宿から救出された女性たちが職業訓練の一環で作った。隣国インドとタイの女性の作品もある。「ただの消費ではなく、作品を買うことで彼女たちが社会復帰する後押しになる」と本田さん。各国の非政府組織(NGO)が運営する販売サイトをまとめ、日本語訳を加えた。
1年前、貧しい子どものために学校を設立するNPO法人の職員として首都カトマンズに赴任した。目の当たりにしたのが貧困層の女性と子どもたちの惨状だ。人身売買業者が少女を国外に売り渡し、売春を強要する事件が相次ぐ。生活苦から娘を売る親もいる。
2015年のネパール大地震後はさらに深刻で、被害女性は年間1万5千人に上るとされる。地震の被害が大きかった山岳部では、混乱に乗じた業者に「高報酬の仕事がある」と勧誘されインドの売春街に売られる。多くは、客と経営者からの暴行、性感染症の危険にさらされている。
警察やNGOが売春宿の摘発に動いてはいる。しかし警察と売春宿の癒着もあり、救出される女性は一部だ。運よくNGOのシェルターに入ることができても、心を病んで自傷行為や自殺に至る人が少なくない。差別や偏見も待ち受けている。
被害者の多くは、ネパールとインドに古くから残る身分制度「カースト」で低い層の出身という。本田さんは「貧しさのために教育を受けられず、教育を受けられないために情報を得る機会が制限されて、だまされる。貧しい者がより苦しむシステム」と訴える。
自身の体験が重なる。子どもの頃、性被害に遭った。家族にも話せず「私は汚い存在」と思い込んだ。「抵抗したらもっとひどいことをされる」という恐怖から強く「NO」と言えなかった自分を責め、成長してからも苦しんだ。
進学した広島市立大で、女性が弱い立場に置かれやすい社会の構造を学んだ。英国でジェンダー学の修士号を取り、ニューヨークの国連女性機関本部でインターンを経験した。帰国後に勤めた外務省では、人身取引対策についての国際条約作りに関わった。
貧困家庭の出身など困難が重なった女性ほど、犯罪や暴力に巻き込まれるリスクが高まる。本田さんは「悪いのは社会の構造。自分は大切にされるべき存在であることを忘れないで」と伝えたいという。いずれ国連で女性支援の仕事をするのが目標だ。
被害女性の品々を販売するプロジェクト名の「Bishwash」は、ネパール語で「信じる」の意味。「暗闇の中でも諦めずに一歩一歩進めば、自分を信じて愛せる日が来る。そのときまで伴走者でいたい」
Bishwashのサイトはhttps://www.bishwashing.com/
(2023年6月13日朝刊掲載)
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