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都内のとあるネパール料理店にランチに訪れたときの話。筆者が注文したダルバート(ネパールの定食)の大皿を、慎重に運んできてくれたのは、小学校高学年くらいの男の子だった。
「ありがとう。お手伝いしてえらいね」
筆者はそう日本語で話しかけたが、一瞥(いちべつ)もくれず、無言のまま店の奥へと消えていった。
「まだ、にほんご、できない」とフォローしたのは、その様子を見守っていたクルタ(ネパールの民族衣装)を着た女性店員だ。
「今日は学校休み?」
その日は平日の真っ昼間だったので、筆者が何気なくそう聞いたところ、彼女は少し渋い顔をしてこういった。
「がっこう、いっていない」
その後、食事をしながら彼女と数回言葉を交わして分かったことは、彼女は夫と4年前に日本に働きにきて、紆余曲折あって今はこの店を経営していること。1年前にはそれまで祖父母に預けていた小学4年生だった息子を呼び寄せたこと。そして学校には行かせていないことなどだった。
彼もまた、数多い不就学の外国人児童の1人なのであった。文科省がまとめた「外国人の子供の就学状況等調査」によると、2022年5月時点で、不就学の可能性がある外国人の子供は全国に8000人以上存在する。これは住民基本台帳に登録されている外国籍の小中学生の6%以上に当たる。
外国人児童・生徒にも就学の権利は保障されており、日本人同様に公立校に通う場合は無償である。しかし、外国人の子供には就学の義務がない。義務教育期間に相当する年齢でも、就学するかしないかは本人あるいは親の判断に委ねられているというのが実情だ。
ただ、日本側の受け入れ態勢の不備も浮かび上がっている。同調査をみると、就学案内を小学校新入学相当の年齢の子供がいる外国人家庭に送付している地方公共団体は、75・8%で、中学新入学相当の子供がいる外国人家庭に対しては58・1%にとどまっている。
これでは子供を就学させたくてもその方法がわからない外国人家庭もあるだろう。
取材を進めると、在日外国人の子供にとっての就学のハードルは複数存在することが判明した。 =つづく
■1都3県に住む外国人は120万人とも言われ、東京は文字通りの多民族都市だ。ところが、多文化共生が進むロンドンやニューヨークと比べると、東京在住外国人たちはそれぞれ出身地別のコミュニティーのなかで生活していることが多い。中韓はもとより、ベトナム、ネパール、クルド系など無数の「異邦」が形成されているイメージだ。その境界をまたぎ歩き、東京に散在する異邦を垣間見ていく。境界の向こうでは、われわれもまたエイリアン(異邦人)という意味を込めて。
■おくくぼ・ゆうき 1980年、愛媛県出身。上智大学経済学部卒。ニューヨーク市立大学中退後、中国で現地取材。2008年に帰国後、「国家の政策や国際的事象が、末端の生活者やアングラ社会に与える影響」をテーマに取材活動。16年「週刊SPA!」で問題提起した「外国人による公的医療保険の悪用問題」は国会でも議論され、健康保険法等の改正につながった。著書に「ルポ 新型コロナ詐欺」(扶桑社)など。
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