ガンジス川へとつながるヒンドゥー教の火葬場

ネパールの首都カトマンズの市街地から東へ1時間ほど歩くと、バグマティ川のほとりにヒンドゥー教の寺院「パシュパティナート」がある。ここは死者が火葬されて、インドのガンジス川へとつながるバグマティ川に流されていく場所だ。

敷地に入れば、色鮮やかなヒンドゥーの寺院が門を開いているが、ここ門から先へ入ることができるのはヒンドゥー教徒だけ。バグマティ川河畔に設置された火葬場へは、回り込むように進む。河畔には死者を焼くための台がいくつも並んでいて、その中のいくつかでは炎が死者をつつみ煙が上がっていた。死者たちはまず川の水で清められてから台の上に置かれて、火種となる樹木をかぶせられて焼かれていく。その焼かれている死者のそばでは、中年の女性が声を上げて泣いていた。

川を渡る橋の上にも、対岸の石造りの堤の上にも人々が集まり、焼かれている死者を眺めている。

ヒンドゥー教では輪廻転生が信じられているから、死者の魂は他の命となって生まれ変わるのだという。その輪廻は現世での苦しみの繰り返しであるが、解脱をすれば天国に行くことができる。聖なるガンジス川へと遺灰が流されれば、解脱も叶うのだ。

死者の火葬を見ている人たちに、悲壮感はない。ただただ、この世の定めを受け入れているようで、死に対する畏怖を感じているというようには見えない。死というものが身近なのだ。

サルも集まる仏教寺院 スワヤンブナート

一方、カトマンズの東にある丘の上にはモンキー・テンプルとも呼ばれる仏教寺院「スワンヤンブナート」が街を見下ろしている。ヒンドゥー教徒が8割以上のネパールで、仏教徒は10%ほど。異なる宗教が共生していても、軋轢は感じられない。

寺院では、「マニ車」を回す女性がいた。マニ車にはマントラが刻まれており、それを回せば経を唱えたことと同様になるという。仏を安置する祠の前には人が集まり供物を供えている。サルの寺と呼ばれるだけあって、ここでは無数のサルが生活している。異教徒が共生する街で、人とサルもまた良い距離感を保って生きている。

中央に立つのが「ストゥーバ」と呼ばれる仏塔で、その周りには、「地」、「水」、「火」、「空気」を表す小さめのストゥーバが建っている。ストゥーバに飾られているのは5色の祈祷旗 「タルチョー」。小さな仏塔が建つ街の広場にも、タルチョーがはためいていた。

インドから伝わったネパールの仏教は「ネワール仏教」と呼ばれる独特なスタイルを持つもの。ヒンドゥーと共存するので、カースト制も取り入れられているそうだ。また、ヒンドゥー教に所以する生き女神である「クマリ」は、仏教徒の少女から選ばれるのだという。

現世に贅を尽くした「夢の庭」

街の中心、王宮のそばにある新古典主義のガーデンは1920年に貴族が作った「夢の庭」だ。まさに現世における夢を実現したような完成美で、訪れる人を圧倒する。パビリオン、噴水、庭園内の装飾品はヨーロッパのデザインであり、特に6つあるパビリオンはネパールの6つの季節を表すのだそうだ。

6つの季節とは、春、初夏、モンスーン、初秋、晩秋、そして冬。高地ならではの寒暖差のある気候が、特徴のある季節を育んでいる。

2000年にリノベーションが始まるまではパトロンが不在で荒れていたというこの庭はいまでは一般に開放されて、文字通り夢のような世界を感じさせてくれた。

ネパールのピザともいわれるチャタマリを作る

街を散策していると、インド系のレストランではインド系の学生たちが昼食をとっていた。生きることと死ぬことを思いながらこの若者たちを見ていると、生きているっていいなと素直に感じられる。そして、生きることは食べること。今回はネパールのピザともいわれている「チャタマリ」を紹介する。

チャタマリは米粉の生地に野菜と肉の具をのせてチーズをトッピングして焼いたもの。フライパンで作る。米粉のパリッとした食感が楽しい。ネパールではチーズもよく食べられている。水牛の乳を使ったものが多い。

材料:2枚分

・米粉 50g
・水 100ml
・植物油 大さじ1
・ひき肉 50g
・玉ねぎ 中1/2個 みじん切り
・トマト 1個 8㎜位の角切り
・たまご 1個 といておく
・ターメリック 一つまみ
・しょうが、にんにく 各小さじ1 おろして合わせる
・チリパウダー 小さじ1/2
・ピザ用のチーズ 大さじ4
・パクチー 2茎 みじん切り
・塩、こしょう 適量

作り方:

1. 米粉と水を合わせておく。
2. フライパン(20㎝ほど)を熱して油を入れて温める。
3. ひき肉、玉ねぎ、トマト、たまご、ターメリック、しょうが・ニンニク、チリパウダーをボールに入れてよく混ぜる。

4. フライパンに、1の1/4を薄くひいて固まったきたら、3の1/2量をのせ、1の1/4を回しかけて、チーズ大さじ2を全体に振り、蓋をして弱火で、裏がカリッとするまで焼く。

底面はカリッと、表面はもっちりとした仕上がりにする。


All Photos by Atsushi Ishiguro

石黒アツシ

20代でレコード会社で音楽制作を担当した後、渡英して写真・ビジネス・知的財産権を学ぶ。帰国後は著作権管理、音楽制作、ゲーム機のローンチ、動画配信サービス・音楽配信サービスなどエンターテイメント事業のスタートアップ等に携わる。現在は、「フード」をエンターテイメントととらえて、旅・写真・ごはんを切り口に活動する旅するフードフォトグラファー。「おいしいものをおいしく伝えたい」をテーマに、世界のおいしいものを食べ歩き、写真におさめて、日本で再現したものを、みんなと一緒に食べることがライフワーク。
HP:http://ganimaly.com/