Source:https://news.yahoo.co.jp/articles/5fae69bc1f8cd94a5af6ac4d7f13bf51db628680
【列島エイリアンズ】南米系不良グループ編(3) バブル期の人手不足を補う目的で、1990年に入管法が緩和されたことをきっかけに起こったペルーやブラジルからの出稼ぎブーム。しかし当時、親に連れられて来日した子供たち=「出稼ぎ1・5世代」のなかには、日本の社会や学校になじめず、ドロップアウトしてしまう者たちもいた。かといって、幼くして出生地を離れた彼らには帰国という選択肢もなく、同じ境遇の同じ国籍の者たち同士で連帯することで生き抜いてきた。 彼ら、出稼ぎ1・5世代グループの多くは、南米からの出稼ぎ者の一大受け入れ先となっていた東海地方を拠点としていたが、リーマン・ショックに端を発した不況下で全国の大都市に移動。中にはヤクザや半グレの小間使いとなる者たちもいたようだが、本格的に反社会性を高め始めたのはコロナ禍からだという。 「大阪でも、リーマン・ショック以降、東海地方から流入してきた南米からの出稼ぎ1・5世代が連帯を強め、さらにその下の世代も加わるなどして複数のグループが形成された。スペイン語を公用語とする者たちの多国籍グループもあり、構成員が40人ほどになる大所帯組織もある。窃盗や暴力事件を起こす者もいたとはいえ、ほとんどは製造業やサービス業で真っ当に働いていた。だが、2020年にパンデミックが発生すると、彼らの多くが職を失った。すると同時期に、南米系の一部のグループが、薬物の密輸・密売などを組織的に行うようになっていった」(関西の地元紙記者) 確かに、報道ベースでみる限りでもこんな感じだ。 「覚醒剤約9・3グラムと乾燥大麻約561グラム合わせて末端価格およそ390万円相当を営利目的で所持した疑い。名古屋市のブラジル国籍の21歳男」(10月7日) 「薬物の密売人の男女に、コカインを含む粉末100グラムを売った疑いの大阪市在住のペルー国籍の52歳女」(9月12日) 「食品の入った段ボールに乾燥大麻を隠して密輸入した疑いの京都府在住、ブラジル国籍の35歳男」(同月8日) 「米国から自宅宛てに航空郵便を利用し、乾燥大麻約8グラムを密輸入した疑いの静岡県在住、ペルー国籍の20歳男」(4月26日)――。 関西、東海地方におけるペルー、ブラジル国籍者による違法薬物の密輸・密売事件は枚挙にいとまがない。 大阪の裏社会に詳しいある人物も「府警による暴力団排除活動の結果として、ヤクザ直轄の売人が減っている一方、ここ数年で増えてきているのが南米系の売人。日本人の売人はイチゲンとの取引を避けるが、南米系の売人はSNSでつながればすぐに持ってくる」と明かす。 =つづく ■1都3県に住む外国人は120万人とも言われ、東京は文字通りの多民族都市だ。ところが、多文化共生が進むロンドンやニューヨークと比べると、東京在住外国人たちはそれぞれ出身地別のコミュニティーのなかで生活していることが多い。中韓はもとより、ベトナム、ネパール、クルド系など無数の「異邦」が形成されているイメージだ。その境界をまたぎ歩き、東京に散在する異邦を垣間見ていく。境界の向こうでは、われわれもまたエイリアン(異邦人)という意味を込めて。 ■奥窪優木(おくくぼ・ゆうき) 1980年、愛媛県出身。上智大学経済学部卒。ニューヨーク市立大学中退後、中国で現地取材。2008年に帰国後、「国家の政策や国際的事象が、末端の生活者やアングラ社会に与える影響」をテーマに取材活動。16年「週刊SPA!」で問題提起した「外国人による公的医療保険の悪用問題」は国会でも議論され、健康保険法等の改正につながった。著書に「ルポ 新型コロナ詐欺」(扶桑社)など。
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