Source:https://news.yahoo.co.jp/byline/azumiakiko/20221025-00320934
いきなりの大臣辞任に、永田町は右往左往
「これなら最初から、山際を入閣させなければ良かったんだ」
旧統一教会を巡る問題を受けて、山際大志郎経済再生担当大臣が官邸で辞意を表明した時、自民党のある議員は電話の向こうでこう言った。山際氏は2021年10月に第1次岸田内閣が発足した時から経済再生担当大臣に加え、新型コロナ対策・健康危機管理担当や新しい資本主義、全世代型社会保障改革担当や経済財政政策担当も兼任し、まさに岸田政権の目玉となる経済政策を担ってきた。そして安倍晋三元首相が亡くなった後の8月10日にスタートした第2次岸田改造内閣では、旧統一教会との関係を明らかにした末松信介文科大臣や萩生田経産大臣、山口壯環境大臣、岸信夫防衛大臣が姿を消す一方で、いまいち明らかにしなかった山際氏だけは閣内にとどまった。
ところが留任早々に、山際大臣は2018年に開催されたアフリカ関連イベントに参加していたことと2013年に会費1万円を支払っていたことを公表。また8月25日には2016年にネパールで開かれた関連イベントに出席したとの報道に対して、「覚えていないが、報道に出ている限り、出席したと考えるのが自然」ととぼけた回答をして、国民の怒りに火をつけた。加えて事務所経費の問題や、所有する動物病院の株式が資産公開から洩れていた問題も報道された。毎日新聞が10月22日と23日に行った世論調査では、71%が山際大臣の辞任を求めている。
「予算委員会が一巡し、今後の国会審議に触らないようにすべきではないかと考えた。このタイミングを逃すわけにはいかないと思った」
10月24日夜7時、官邸で岸田文雄首相に辞意を伝えた山際氏は、こうのように記者団にその理由を語っている。岸田首相も「国会審議に支障をきたすのは本意ではないとのことで辞任された。重要課題を最優先するために、それを了とした」と述べている。
与党も野党も怒り心頭
だが野党にすれば、それで納得できるはずがない。立憲民主党の安住淳国対委員長は国会内で会見し、「予算委員会でこれまで積み重ねてきた審議はどうなるのか。質疑者にも国民にも失礼だ。もう一度予算委員会を巻き戻してほしいくらいだ」と記者団に怒りをぶちまけた。国民民主党の玉木雄一郎代表も「そもそも(8月10日の)内閣改造は何だったのか」「経済財政諮問会議が飛んでしまっていることは、いろんな意味で段取りが悪い」と、岸田首相の政治手腕に疑問を投げた。
これら批判は当然だ。コロナ禍や円安による物価高騰で、国民の生活を守るための経済対策は喫緊の課題になっている。にもかかわらず、山際大臣の辞任で経済政策の司令塔が不在となり、この日に予定されていた経済財政諮問会議が急遽中止された。「影響を与えないぎりぎりの選択だ」と山際氏は主張したが、年末まで2か月余りとなった今、誰もその言葉を信じてはいない。
冒頭の自民党議員は「山際氏を岸田政権に押し込んだ甘利明前幹事長の責任は重いと思う」と述べている。甘利氏と山際氏はともに神奈川県連の所属で、旧山崎派から麻生派に移籍した。
旧山崎派を離れる際に甘利氏が結成した「さいこう日本」には山際氏も参加し、「山際氏は甘利氏の一番弟子」と言われるほど2人の関係は深かった。そして2021年の総裁選では、麻生派の河野太郎氏が出馬する中で山際氏は甘利氏に従って岸田陣営に馳せ参じた。そして岸田首相の誕生により、甘利氏は幹事長のポストを手に入れ、安倍晋三元首相、麻生太郎元首相とともに「3A」と並び称された。
しかしその喜びは束の間で、甘利氏は2021年10月の衆議院選で神奈川13区で落選し、比例で復活。それを機に幹事長職を辞している。よって11月に発足した第2次岸田政権では「さいこう日本」は閣僚ポストを4から3に減じたが、山際氏が留任したのも甘利氏の強い意向があったと言われている。
岸田政権の命運を握る後任人事
さて経済再生担当大臣を辞任した山際氏の後任には、麻生派からはさっそく当選7回の伊藤信太郎衆議院議員や同じく当選7回の井上信治元国際万博担当大臣の名前が挙がる。麻生派は第2次岸田改造内閣で、大臣ポストを3から4に増やしたが、そのうち3名が再入閣組で、初入閣は永岡桂子文科大臣で、これは“女性枠”と考えられていた。よって待機を強いられた“入閣適齢期”からは不満が出ていたのだ。
岸田首相はさっそく25日に新大臣を任命する予定だが、十分な身体検査が行えるかどうかが課題だ。もし新大臣が同じような問題を抱えていた場合、下落している内閣支持率にダイレクトに影響する。
高支持率を維持していた夏頃までは「長期政権説」も出ていた岸田政権だが、最近では「来春の広島サミット花道説」が囁かれ始めている。問題は誰がその後継者になるかということだが、日本経済の処方箋と同様に、その解はなかなか見つからない。
兵庫県出身。姫路西高校、慶應義塾大学経済学部卒。国会議員政策担当秘書資格試験に合格後、政策担当秘書として勤務。テレビやラジオに出演の他、「野党共闘(泣)。」「“小池”にはまって、さあ大変!ー希望の党の凋落と突然の代表辞任」(ワニブックスPLUS新書)を執筆。「記者会見」の現場で見た永田町の懲りない人々」(青林堂)に続き、「『新聞記者』という欺瞞ー『国民の代表』発言の意味をあらためて問う」(ワニブックス)が咢堂ブックオブイヤー大賞(メディア部門)を連続受賞。2021年に「新聞・テレビではわからない永田町のリアル」(青林堂)と「眞子内親王の危険な選択」(ビジネス社)を刊行。姫路ふるさと大使。
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