Source:https://news.yahoo.co.jp/articles/4e8b5c7dc5e039b2d94201b53721cbbd9765dabb
2013年、武田薬品の社長にグラクソ・スミスクライン(GSK)のクリストフ・ウェバー氏が招聘された。当時の武田薬品の長谷川閑史社長は、「外国人、日本人というのは大きな問題ではない」「グローバルな事業運営の経験を持つリーダーがふさわしい」と説明した。 現在の全日空(ANA)の制服は、ニューヨークで活躍するデザイナー、プラバル・グルン氏が手掛けたものだ。彼は外国人としてはじめてANAの制服をデザインした人物である。 この二人の共通点は何だろうか? 二人とも一人の人間でありながら、多様なバックグランドがあるということである。 フランス人のクリストフ・ウェバーは、オーストラリアで就職し、GSKではベルギーやシンガポールなどでの経験を経て、日本の武田薬品に入社している。 プラバル・グルンはシンガポール生まれのネパール人で、インドでデザイナーのキャリアをスタートさせ、その後ニューヨークに住み、ミシェル・オバマ元米大統領夫人やレディー・ガガなどの衣装を掲げてきた。 ダイバーシティー&インクルージョン(D&I)が叫ばれる中で、どんな人材を採用し、どんなチームを作っていくのかはリーダーや組織にとっては大きな課題である。特に日本においては、単一民族で、同じ言葉を話し、似たような価値観や考え方の人が多いので、ダイバーシティーと言ってもピンとこなかったりするものだ。会社として大上段にD&Iを掲げても、自分のチームの採用となると困ってしまう方もいるだろう。 そこでキーとなってくるのが、上筆の2名のような人材である。ダイバーシティーと言っても色々な側面があるが、今回はわかりやすく国籍やバックグランドという側面から話してみたいと思う。 ダイバーシティーが大切だから、グローバルな取引が増えたからと言って、アメリカ人とフランス人と中国人を採用したら、組織がグローバルになるわけではない。むしろ組織が経験するのは、価値観や考え方の衝突と混沌であろう。 それよりも、この二人のように様々な価値観や考え方の中で育ち、それぞれの側面を理解している人材が組織に増えていくことが、ダイバーシティーのある組織作りにとって重要な一歩になってくる。 つまり「多様な人材を採用する」のではなく、「多様性のある人材を採用する」ことが多様性のある組織を作る下地となるということだ。これは組織の規模の大小を問わない話だ。
国籍に限った話ではない
いくつかの国や大陸を経験し、それ以上の価値観や考え方を理解している人は、組織のよき相談役にもなれるし、仲介者にもなれる。特定の価値観を持った者同士の議論においても、両方の気持ちがわかったうえで、論点を整理できる存在は非常に貴重である。組織にこういう人材が増えてくると、2歩目としてバックグラウンドや国籍が異なる多様な人材を組織に入れることができるようになってくる。 もちろん、国籍だけにあてはまる話ではない。 育児も介護も経験した人は、多様性の許容度が高いし、受け入れられる価値観も広くなる。純粋な20代と50代のミックスのチームよりも、多様な年齢の人と働いたことのある20代と50代がいるチームのほうがうまくいく可能性は高い。全く異なる人だけれども、価値観の許容度が広い人をどれだけ組織に入れられるかが、リーダーと組織にとって重要になってくる。 私の上司は、オランダ人で、イギリスとオーストラリアに駐在した経験があり、今、日本にいる。これだけ異なる国や文化を経験をしていると、大抵の価値観を受け入れる力を持っているし、その上で自分の考え方を形成しているのでとても説得力がある。そして、そういう人の下では、なんらか強い価値観をもっている者同士が、健全な衝突を乗り越えてうまく仕事ができるチームができやすいと実感している。 「働いたことのある場所」という切り口でダイバーシティレベルをつけると、以下のようになるだろう。 1. 特定の国や地域での経験がある 2. 複数の国や地域での経験がある 3. 複数の国や地域を束ねる機能、分野やエリアでの経験がある 4. 複数の大陸での経験がある 5. 全ての大陸を束ねる機能、分野やエリアでの経験がある 私自身は国を超えて仕事をしたことはあるが、大陸を超えての経験はない。自分よりダイバーシティーレベルの高い人に学ぶのも、自分のダイバーシティーレベルをあげ、組織作りに影響を与える大きな力になる。 「多様性のある人材の採用」こそがインクルーシブな組織作りの第一歩なのである。
西野雄介
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