Source:https://news.yahoo.co.jp/articles/87597f3c76b304ecba1dd83d793b1548092336c7
フランスとチリに本拠を置く2人の建築家で構成されるウィーク・アーキテクチャ(WEEK Architecture)は2014年、ある慰霊碑の建築を提案した。「2022年FIFAワールドカップ カタール大会」スタジアム建設作業中に亡くなった人たちに捧げる慰霊碑だ。 【画像全9枚】“追悼建築”の全体像 このコンセプチュアルな「カタール・ワールドカップ・メモリアル(Qatar World Cup Memorial)」は、コンクリートのモジュールを積み上げた形式で、ねじれながら高く伸びていく超高層建築だ。 1フロアにつき4個のモジュールが使われている。各モジュールには階段が2カ所ついており、モジュールにアクセスできる経路はたくさんある。一つひとつのブロックは、亡くなった人を表していて、犠牲者が増えれば、それだけ塔も高くなっていく。 競技場建設がすべて終わったワールドカップ開幕直前には、亡くなった人の数は6751人に上っていたとも言われているため、この塔は4.4kmという途方もない高さの設計になっていた。最終的な高さと、その高さに相当する死者数は、コンセプトを考え出したときに建築家たちが予測した値の3倍だった。 カタール・ワールドカップ・メモリアルは、果敢にも、憂慮すべきこの数字と、大会準備のための危険な労働環境に対して疑問を投げかけた。寂寥とした超高層の慰霊碑は、摩天楼が立ち並ぶこの国の象徴的な景色を、ネガティブな面から反映するものだ。街から離れて高くそびえるこの塔は、ネパールやインドをはじめとするさまざまな国の遺族に、待ち望まれていたスタジアムをドーハに建設する中で亡くなった愛する家族を偲ぶ場所を提供する。
憂慮すべき死者数に、疑問を投げかける超高層建築
2010年、カタールが「ワールドカップ2022」の開催国に決まり、スタジアムなどの建設が始まった。その後、健康な若い移民労働者が突然「自然死」するケースが増え続け、懸念されてきた。 カタール当局は、主な死因として「心停止」や「呼吸停止」を挙げた。しかし、国際人権団体アムネスティ・インターナショナルが、健康問題の専門家の助言をもとに結論付けたように、報告されたこれらの理由は、死因として納得のいくものではない。 実際は、酷暑のアラビア半島における長時間労働など、好ましくない環境でのオーバーワークが、日射病や脱水症、極度の疲労につながったと考えられる。本来健康であるはずの多くの若い男性や中年男性が突然死する原因としては、こうした理由のほうが可能性が高い。 この問題は、FIFA(国際サッカー連盟)の責任を問うものでもある。FIFAは、2017年になってようやく、人権に関する重要な方針を公表した。 「だが、FIFAは、開催国における人権尊重を義務付けるための法的手段を見つけなければならない」と、ウィーク・アーキテクチャのチームはコメントしている。「サッカーは世界で最も人気の高いスポーツであり、ワールドカップは、何よりも人々を一つにまとめるイベントなのだから」
『ガーディアン』紙は、驚きの事実をこう暴露している。「10年前に、カタールがワールドカップ開催権を獲得して以来、同国ではインド、パキスタン、ネパール、バングラデシュ、スリランカからの移民労働者6500人以上が亡くなった」 「政府筋の情報を集めて判明した事実から言えるのは、カタールでの開催が決まり、歓喜に沸く群衆がドーハの通りを埋め尽くした2010年12月のあの夜以来、これら南アジア5カ国からの移民労働者が、平均して週12人亡くなっているということだ」 「インド、バングラデシュ、ネパール、スリランカからの情報によると、2011~2020年のあいだに、5927人の移民労働者が亡くなった。それとは別に、カタールのパキスタン大使館の情報は、2010~2020年で824人のパキスタン人労働者が亡くなったことを伝えている」
文:designboom
0 件のコメント:
コメントを投稿