Source:https://news.yahoo.co.jp/articles/a59a6264439501d17b19816f5872516ba67218fc
文庫新刊書『世界の宗教地図 わかる!読み方』からの一部抜粋で、宗教と世界情勢の密接な関係を、わかりやすく紹介していく。今回は、チベットが中国から厳しい弾圧を受けている背景、さらには共産主義国家による宗教弾圧の理由について解説する。 【この記事の画像を見る】 ● 約300年続いた政教一致体制が 中国への併合で破壊される チベット仏教は、密教の要素が強い仏教である。7世紀頃からインド系、ネパール系、中国系の仏教が伝来し、チベットの民間信仰と混交して成立したといわれる。 現在、中国の一部となっているチベットではさまざまな時代を経て、ダライ・ラマによる政教一致体制が約300年続いた。しかし、その宗教国家は、第二次世界大戦後に建てられた中華人民共和国によって破壊されてしまう。人民解放軍の侵攻によりチベットは中国に併合され、多くの寺院が破壊され、多数の人々が殺害されたのだ。 チベット人たちは高度な自治を求める運動を続け、大規模な騒乱にも発展したが、それにより中国政府による弾圧がさらに強まり、長い年月をかけて築かれてきた独自の社会、文化は徹底的に破壊された。
● ダライ・ラマ14世の 後継者選びに中国が関与か このとき、チベットの最高指導者ダライ・ラマ14世はインドに亡命し、同国北部のダラムサラで亡命政府を樹立した。そしてチベット問題の平和的解決を世界に訴える活動を続け、ノーベル平和賞を受賞したことでも知られている。 チベット仏教の大きな特徴として、「転生活仏」がある。活仏である高僧は、すべての人が救われるまで輪廻転生を続けると信じられているのだ。 ダライ・ラマの死後に転生者は探し出され、認定を受けることになるが、中国政府はダライ・ラマの後継選びにも関与したと疑われている。 事のはじまりは序列2位でダライ・ラマの転生者を決定する権限のあるパンチェン・ラマ10世の急死だった。このときダライ・ラマ14世は、ある少年を11世と認定したが、中国政府は別の少年を公認したと発表した。しかも、ダライ・ラマ14世側が認定した少年はその後、両親とともに消息不明となり、30年近く音沙汰ないままになっているのだ。 その間も中国政府によるチベット弾圧は進み、チベット人の信仰の自由は奪われ、抵抗の意志を示すために、焼身自殺する僧侶が続出した時期もある。近年もダライ・ラマ14世の写真をもっているだけでも逮捕され、収容所での虐殺が続いているといわれている。 子どもたちはチベット語での教育は受けられず、学校教育はすべて中国語。破壊をまぬかれた宗教施設はいまや観光スポットと化している。 20人近くが死亡した2008年の騒乱以降、チベットの中心都市ラサでは大規模な抗議運動は起こっていない。しかし、チベット人は中国政府の宗教的弾圧に不満をもち続けている。
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