Source:https://news.yahoo.co.jp/articles/05b307250527c1b7148eb45e63ee3aa138bf1618
(ブルームバーグ): 日本銀行は言ったことをまさに行ったが、それでもトレーダーにはショックだった。
日銀は18日の金融政策決定会合で、イールドカーブ・コントロール(YCC、長短金利操作)の長期金利許容上限を0.5%程度に据え置き、大規模金融緩和策の維持も決めた。エコノミストのほぼ全員が予想したことでもあり、市場の事後の動揺を少し奇妙に感じたかもしれない。
昨年12月に黒田東彦総裁らによるYCC許容変動幅拡大という不意打ちをくらったことで、一部の日銀ウオッチャーは、変動幅のさらなる修正があり得るだけでなく、大掛かりな金融緩和策解除も真面目に考えるべきだと自分に言い聞かせ始めた。
希望的観測という部分と同時に日銀を追い込みたいという思惑もあった。物価目標が手の届く範囲にありながらなかなか届かず、大事なことは賃金がそうした変化を確定させる機会もない段階で、日銀が金融緩和策の微調整にとどまらず、全くの金融引き締めに近くシフトするという観測に国内の多くのウオッチャーが当惑し、黒田総裁も戸惑ったようだ。
黒田総裁は矛盾する発言で混乱を招いてきた。他の中央銀行は将来の政策の方向性を伝えるために苦労しているが、日銀は批判を受けつつも市場があれこれ推測するに任せ、臆測と誤解がその隙間を埋める状況だ。政策のヒントの多くが得られる決定会合後の総裁会見の英文テキストさえ日銀は公開していない。
だが公開したからといって、人々は耳を傾けるだろうか。市場を混乱させない時の日銀への全般的な無関心に加え、最新のグローバル金融センター指数によれば、東京の重要性はソウルやシドニー、深圳を下回り16位に低下した。日銀が国際的重要性に見合うほど注目されないことを意味する。米連邦準備制度ウオッチャーは、連邦公開市場委員会(FOMC)各参加者の発言を入念に検証するものだ。日銀の他の政策委員会審議委員の名前を挙げられる人が何人いるだろうか。将来の金融引き締めに関する立場はなおさらだ。
日本の地政学的重要性が高まる時期にあっても、国内と西側のウオッチャー間でコミュニケーションギャップが拡大する現状を示す一例だ。
それは金融だけにとどまらない。円安と東京の魅力にもかかわらず、国際ニュースルームの多くが何年もプレゼンスを縮小してきた。香港のデジタルニュース部門を東京でなくソウルに移転させた米紙ニューヨーク・タイムズの最近の決定は象徴的だ。
日本の官僚主義もプラスに働かない。日産自動車の元会長、カルロス・ゴーン被告が2018年に逮捕された際、外国人ジャーナリストは東京地検に締め出され、容疑事実どころか勾留を確認することさえできなかった。外国メディアに当局が情報を伏せたことで、ゴーン被告の宣伝マシンによって恩知らずの国に標的にされ、不当な扱いを受けた外国人の話として定型化され、国際的圧力もあって裁判所は保釈を認めることになる。
ある調査結果によると、英語の習熟度のランキングも日本は112カ国中80位とバングラデシュやネパールより低い。国外で学ぶ日本人の数も04年のピークから18年までに30%減少した。
中国ウオッチャーが世界第2位の経済大国に関する何十冊もの本を読めるのに対し、教科書を除けば、日本の政治・経済分野について英語で最近書かれた本はごくわずかだ。より早い段階の対中進出で痛手を負った日本企業の教訓をもっと多くの人が学んでいれば、米アップルのティム・クック最高経営責任者(CEO)が対中依存のサプライチェーン分散を急ぐこともなかっただろう。
「DeepL 」のようなテクノロジーの日英翻訳の仕事は素晴らしいが、セントラルバンカーの微妙なサインを話題にするような場合は特にそうだが、カルチャーやニュアンスを読み取るところまではいかない。
この種の孤立から日本が恩恵を受けていることは間違いない。ロシア産天然ガスに依存する状態が続いても、そうした問題が批判を招くことはほとんどなかった。それでも、他の国・地域の人々がすぐに直面する人口動態的変化の最前線に立つ国をより周到に理解することは、全ての人の役に立つだろう。
(リーディー・ガロウド氏はブルームバーグ・オピニオンのコラムニストです。このコラムの内容は必ずしも編集部やブルームバーグ・エル・ピー、オーナーらの意見を反映するものではありません)
原題:The Growing Comprehension Gap That Isolates Japan: Gearoid Reidy(抜粋)
(c)2023 Bloomberg L.P.
コラムニスト:リーディー・ガロウド
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