Source:https://news.yahoo.co.jp/articles/79a1ba61b1a8b5a31e4ae7f3708e5d082ba040e3
大手外食チェーンが海外出店の動きを強めている。世界経済はエネルギー価格高騰によるインフレに苦しんでいるものの、新型コロナウイルスの影響を抜け出して比較的好調なアジアや米国では、外食市場の押し上げにつながる所得水準の向上や人口増など好材料が多いためだ。国内では賃上げがなかなか進まず価格競争が懸念され、海外の市場拡大に期待を寄せている。 【グラフでみる】諸外国に比べ見劣りする日本の平均賃金 ドーナツ店「ミスタードーナツ」(以下、ミスド)を運営するダスキンが今月1日、5月にシンガポールにミスドを初出店させると発表した。「シンガポールは人や情報のハブ(中核)」。大阪府吹田市の本社で開いた会見では大久保裕行社長がそう強調し、同国での出店が東南アジアで拠点を広げる起爆剤になるとの期待を示した。 ミスドは1978(昭和53)年にタイで出店して以来、台湾やフィリピンなど海外4カ国・地域で計9557店舗を展開。シンガポールは外食率が高く甘味や揚げ物が好まれるため、ドーナツ需要が見込めるという。現地企業と契約を結び、今後3年間で9店舗の展開を目指す。 一方、回転ずし大手のくら寿司は店舗網を広げる米国と台湾に加え、今夏までに上海に出店し、中国本土に初進出する計画で、現状の海外88店舗から年内に100店舗に増やす。令和12年10月期に海外で400店舗展開を見込んでおり、海外売上高は4年10月期比の約4・5倍となる1500億円を目指す。 鳥貴族ホールディングスは計画していた米国事業を本格化するため、米ロサンゼルスに4月、子会社を設立する。1、2年後をめどにロサンゼルスで「鳥貴族」の全米1号店を出す。同社の大倉忠司社長は「肥満に悩む米国では鶏肉が健康的なイメージから人気」と食材の強みを強調した。 国内外食チェーンが海外市場に着目する理由の一つは、日本と比較した客単価の高さだ。 民間調査会社の帝国データバンクが国内の全業種を対象に実施した調査によると、価格転嫁をしたいと考えている企業の販売価格への転嫁割合を示す「価格転嫁率」は39・9%と4割を下回る。外食産業も国内では価格を上げにくい状況が続く。 「不毛な価格競争に巻き込まれない」(外食業界関係者)として、海外に活路を見いだす企業は少なくない。くら寿司の広報担当者は「賃上げが遅れる日本に対し、米国では物価上昇とともに所得が伸びており、日本より高額な商品でも消費者に受け入れられている」と話す。 うどん・そばチェーンのグルメ杵屋も米国、英国、香港で9店舗をフランチャイズ展開していて、米国や英国のセルフサービス式うどん店では「客1人当たり単価が2千円を超えている」(担当者)。今後、新型コロナ禍で一旦撤退した東南アジアへ再進出の機をうかがう。 同社は昨年10月、大阪市住之江区の本社内に日本語学校を設立。現在はインドネシア、ネパール人ら13人が学んでおり、年内に50~60人程度の学生を受け入れる予定だ。本人の希望があれば正社員に登用し、「海外店舗で指導役として活躍してほしい」と期待する。 海外の日本食レストランは、世界的な和食人気を追い風に急増している。外務省調査に基づく農林水産省の推計によると、3年7月時点で海外の日本食レストランは15万9046店と、平成18年の約2万4千店から15年間で6・6倍超。農水省輸出・国際局の担当者は「海外で店舗が増加することは、日本食材の輸出拡大にもつながる」と話す。(田村慶子)
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