Source:https://news.yahoo.co.jp/articles/4e6d095ea3d86434bff9d8d7e2aa3d06a472ae79
劇作家・演出家の平田オリザさんがパーソナリティを務めるラジオ番組(ラジオ関西『平田オリザの舞台は但馬』)に、舞台美術家の杉山至さんが2週にわたって電話出演。学生時代からの付き合いになるという平田さんとの当時のエピソードや、演劇の魅力について語った。 【写真】登山やハイキング、キャンプにも 兵庫県下最高峰の自然の宝庫『氷ノ山(ひょうのせん)』 1週目は2人の出会いから、杉山さんが舞台美術家になるまでの経緯にフォーカス。高校時代はバンド活動に熱中したという杉山さん。演劇が好きな友人に連れられて見にいった芝居が、まだ大学生だった平田さん率いる劇団「青年団」だったそうで、当時を振り返った杉山さんはこのように語った。 「カルチャーショックでした。平田さんはすでに(国際基督教)大学でも『17歳で世界をまわっているとんでもないヤツがいる』と超有名人だった。4歳上で心理学を専攻している姉に『黄色いオーラが見えた!』と報告したのを覚えています(笑)」(杉山さん) 平田さんの舞台観劇をきっかけに青年団に所属。入団当初は俳優として舞台に立っていたが、やがて客観的に舞台を俯瞰したい思いが強くなってきたという。ちょうどそのころ、平田さんの影響を受けて中国、ネパールなど世界を放浪していた杉山さん。6万円だけを握りしめて向かったヨーロッパでは、またしても運命的な出会いを経験する。 「スペインでアントニオ・ガウディの建築を見て、『世界』がつながったんです。それまでに興味を持っていた哲学や文学、人間の体など、世界のすべてが『建築』で表現されている。興奮して知恵熱を出しながら青年団の仲間に国際電話をしました」(杉山さん) スペインでの衝撃的ともいえる経験から、大学卒業後には早稲田大学の夜間大学で建築を学びなおし、建築士の資格を取得したという。 2週目は舞台美術家、大学教員として活躍する杉山さんの仕事に迫った。 劇団青年団でこれまでに使用された舞台美術のすべてを杉山さんが担当。2014年には『第21回読売演劇大賞最優秀スタッフ賞』を受賞するなど、受賞歴も多い。「杉山さんの舞台美術には『建築』の視点がある。だから、ほかの舞台美術家とは違う表現がある」と平田さんも全幅の信頼を置いている。 杉山さん自身も、平田さんの作品に携わる際に心がけていることがあるという。 「平田さんが『僕は来た球を打つだけだから、好きなプランを考えていいよ』と言ってくれる。昔、オリザさんが『オレ、発明した!』と言ったんです。『東京ノート』という作品には3人掛けのベンチが3つあって、そのベンチには背もたれがないから、後ろを向いたり横を向いたり自由に座ることができる。そこで『順列組み合わせで9人をそれぞれ配置することで会話の関係性や距離感、質が変えられる。これであらゆるバリエーションが作れる!』と。オリザさんの作品を手がけるときには、そうした“モノと空間のコミュニケーション”を大切にしています」(杉山さん) 杉山さんの言葉に対し、平田さんは「そういうこと(“モノと空間のコミュニケーション”)を先に考えていて。それを杉山さんが具体化してくれる」とコメント。さらに、「認知心理学の概念である“アフォーダンス”の研究者によると、『人間は主体的にしゃべっているように見えて、実は座り位置の関係で発話が変わってくる』ということが科学的にも証明されている。アゴラ劇場は舞台と同じサイズの稽古場が2階にあったから、舞台が立ち上がってから何度でも修正ができた。やってみたら、あとで正しさが証明された感じですね」と振り返った。 2021年からは芸術文化観光専門職大学准教授に着任した杉山さん。人・モノ・環境の関わり方から、状況や場の在り方を考えてデザインする「セノグラフィー」という視点を礎に、学生らとともに演劇やダンスの舞台美術プランをはじめ、地域の文化資源を活用した地域活性化事業や世界の舞台美術史のアーカイブ化に取り組んでいる。 さらに、今年1月に上演された「たじま児童劇団」の舞台美術は学生らのアイデアをワークショップ形式で盛り込んだそう。 「舞台芸術の醍醐味(だいごみ)は1人の世界じゃない、さまざまな人のアイデアを生かせるところ。(芸術文化観光専門職)大学は実習の機会が多いため、各々の体験からおもしろい発想が生まれる」(杉山さん) 杉山さんの話を聞いてから周りを見渡してみると、私たちの生活をとりまくインテリアやオフィスの配置、街の風景など、さまざまなものの見方が変わりそうだ。 ※ラジオ関西『平田オリザの舞台は但馬』2023年2月2日、9日放送回より
ラジオ関西
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