Source:https://news.yahoo.co.jp/articles/a7efbe98f275a83cbe07f914936fd80cd9389bca
【ニューデリー時事】サッカー・ワールドカップ(W杯)が開かれているカタールで、スタジアム建設など関連工事に従事しながら大会前に亡くなった移民労働者は多い。 現地で夫を失ったネパール人女性が電話で取材に応じ、「深い心の痛みを感じ、大会を見ることができない」と心境を語った。 ネパール西部バルディア郡の小さな集落で暮らす主婦シータ・スナールさん(39)は、夫のビム・バハドル・ロハールさん=当時(41)=をカタールで亡くした。ロハールさんは失業後の貧困から抜け出そうと、2011年に同国に渡った。国内産業の乏しさから職を求めて豊かな湾岸諸国に渡るネパール人は多い。 カタールでは、W杯の試合会場となるスタジアムやビルの建設に従事し、運転手や電気技師としても働いた。日本円で3万5000円ほどの月給の約半分をネパールの家族に送金していた。現地の仕事や環境について詳しくは話さなかったが、電話口では「全て順調だ」といつも言っていた。 帰国は2年に1回と限られた。だが、「夫はいつも家族を助け、愛してくれていた」と家族思いの夫の姿が今も頭に浮かぶ。 亡くなったのは今年1月。高熱を出し病院に搬送されたと、会社の上司からスナールさんに連絡があった。健康状態は良好と口にしていたロハールさんだったが、亡くなる前日に電話で胸の痛みを訴えていた。カタール当局の死亡証明書には「急性心肺不全による自然死」と書かれている。ただ、当時の状況や詳しい死因は不明だ。後日、亡くなるまでの5カ月分の給与が支払われていなかったことも分かり、不信感は募るばかりだ。 働き手を失い、「生活は非常に苦しい。12歳の娘の教育資金を捻出するのも難しい」とスナールさん。「カタール政府は何の補償もせず、搾取している。多くのネパール人労働者の死を誰も気に掛けない」と嘆いた。 英紙ガーディアンの調査では、W杯が決まった10年からの10年間で、ネパールを含む南アジア5カ国の出身者6500人以上がカタールで死亡した。死者が多数に及んだのは酷暑下の労働が一因との指摘もある。国際人権団体などによれば、多くは「自然死」で片付けられ、詳しい死因究明や遺族への補償がなされないケースが多い。賃金の未払いも横行している。
0 件のコメント:
コメントを投稿