Source:https://news.yahoo.co.jp/articles/f7ac2b54325f1fbfc4467e6db61c172da4565851
アウトドアシーンでは「現場」で色々なことが起こります。だからこそ、知識を得てから出かけることは役に立つし、何より楽しい。フィールドから帰ってきて復習するもまた良し。この連載では、そんな場面で活躍する本を古今東西問わずに取り上げます。 【写真】ハイセンスなビジュアルが魅力の『TRANSIT』の誌面を見る(全3枚) 今回は、ハイセンスなビジュアル、クラシックな風合いの美しい写真が魅惑的な雑誌『TRANSIT』から、「美しき世界の山」特集号を取り上げます。
〝読み流し〟タイプの雑誌とは一線を画した奥の深い一冊
出版社のサイトでは、「地球上に散らばる美しいモノ・コト・ヒトを求めて旅をするトラベルカルチャー誌」と紹介されていますが、「旅」が大きなテーマではあるけれど、単に情報を羅列しただけの旅行ガイドブックや、さらっと読める一般的な旅雑誌とは一線を画し、じっくり読ませる〝重たい本〟です。 実際、手に取ってみるとずっしりと重たい。発色のいい上質な紙が使われていることと、200ページもの厚みに、ぎっしりと情報が詰まっているためそう感じるのでしょうか。 No.56『美しき世界の山を旅しよう!』は、世界のいろいろな山岳を、幅広いテーマで深掘りした内容。 表紙を飾るのは、旅する写真家・石川直樹さんによるヒマラヤの名峰「アマダブラム」。ネパール語で「母の首飾り」を意味し、ヒマラヤで最も美しい山と言われています。石川直樹さんの記事「シェルパ新時代の幕開け」で使われている一葉です。
美しい写真付きのエッセイから山の知識まで多彩な構成
山岳写真で知られる上田優紀さんのパタゴニアの写真を特集した「遥かなる山の声をきく」、 PHIL BUCHERさんの「アルプスの休日」は、神秘的な山々の写真をたっぷりと堪能しながら楽しめる読み物です。 「山はどうやってできる?」「山の地形探検」など、わかりやすいイラストを使って、山の成り立ちや、地形用語などを解説しているページが織り交ぜてあるのも心憎い構成。 「いつか泊まりたい、世界の山の宿」「一度は行きたい日本の山小屋」は、写真を見るだけでわくわくする章です。 スイスアルプスのとんでもない絶頂にあるお宿、ドロミテの鋭鋒が目の前に広がる山岳ホテル、標高6000mに建つオーロラが見えるホテルなど、スケールの大きな絶景の中に佇むお宿が満載で、旅心が刺激されること請け合い。 また、この二つの章の後ろにそっと添えられている「山小屋のTIPS」も、山旅に出てみたい、と思った人にとってはマストの知識となっています。
挑戦する? 眺めて楽しむ? 知る喜びにひたる?
なかでも「山の本が答える、人生相談所」が秀逸。 人生におけるいろいろなお悩みに、古今東西の山の本から、一節を引いて答えるというもので、お答えもさることながら、「こんな本があるんだ!」というのを知ることができた点もよかったです。 たとえば、幸田文さんの『木』を引き合いに、成果主義に偏っていないかという仕事の悩みに答えているのですが、全国の森を巡ってさまざまな木のことを書いたこの本のことを始めて知り、読んでみたくなりました。 パタゴニア、スイスアルプス、アパラチア、ヒマラヤ…… 多くの人が憧れる世界の名峰の数々を、「リゾート」や「レジャー」の対象として、その美しさや魅力を紹介しているページがある一方、山岳特有の険しい地形によってアクセス問題や発展から取り残されることによる貧困の問題が発生したり、紛争地ではゲリラ戦の舞台となったりするという負の一面も取り上げられています。 山小屋の管理人、登山雑誌の編集者、山岳救助隊、山仕事のコーディネーターなど、「山を仕事にしている」人たちの紹介も面白い章でした。単なるガイドブックや旅行雑誌とは全く違うアプローチがある点が『TRANSIT』らしさなのだろうと思います。
根岸真理
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