Source:https://news.yahoo.co.jp/expert/articles/942e3b31f8137cf1774c07fbcd66ca436518e0eb
ロシア、北朝鮮、イラン、中国、チャットGPTのサイバー攻撃への「導入例」とは――。
マイクロソフトとオープンAIは2月14日、国家レベルのサイバー攻撃グループによるチャットGPT(GPT-4)の使用についてのレポートを発表した。
取り上げられているのは、「フォレストブリザード」(ロシア)、「エメラルドスリート」(北朝鮮)、「クリムゾンサンドストーム」(イラン)、「チャコールタイフーン」「サーモンタイフーン」(中国)という、これまでにもサイバー攻撃のアクター(行為者)として指摘されてきた5つのグループだ。
いずれも「初期段階」で「重大な攻撃は確認されていない」とし、当該アカウントは停止されたとしている。
だが、国家レベルのサイバー攻撃でも、生成AI化が急速に進んでいることを裏付ける。
●サイバー攻撃グループもAIに注目
マイクロソフトは2月14日付の公式ブログの中で、そう述べている。
生成AIサービス「コパイロット」を提供する同社が、そのベースとなるチャットGPT(GPT-4)開発元のオープンAIとの調査で指摘するのは、広く知られたサイバー攻撃グループによる、これらの生成AIサービスの「導入例」だ。
企業などにとっての生成AIの魅力は、サイバー攻撃グループにとっても魅力、ということだ。
●ロシアの「フォレストブリザード」
マイクロソフトが最初に挙げるのは、ロシア連邦軍参謀本部情報総局(GRU)の26165部隊「フォレストブリザード」だ。
同部隊は「APT28」や「ファンシーベア」の名前でも知られ、これまでもウクライナへの攻撃や2016年の米大統領選に絡むサイバー攻撃などでしばしば名前が挙がってきた。
※「偽政府サイト」でウイルス拡散も、武力侵攻に先立ちサイバー波状攻撃(02/25/2022 新聞紙学的)
マイクロソフトが指摘する生成AI利用は、まず「衛星通信プロトコル、レーダー画像技術」などに関する知識取得のための「対話」だ。
そして、ファイルやデータの操作の自動化のためのスクリプトのサポートを探っていたという。
●北朝鮮の「エメラルドスリート」
北朝鮮のサイバー攻撃グループ「エメラルドスリート」について、こう指摘する。このグループも、「キムスキー」「エメラルドチョリマ」などの名称で、その活動が知られてきた。
特徴的なのは、メールを使ったサイバー攻撃「スピアフィッシング」用と見られるコンテンツの「草案や生成」に生成AIが使われていたという点だ。
さらに北朝鮮の安全保障や核問題に関するシンクタンク、政府機関、専門家の特定にも生成AIを使っていた、という。
この他、同グループは、やはりスクリプトやプログラムの脆弱性に関する情報について、AIのサポートを求めていたという。
●イランの「クリムゾンサンドストーム」
イランのイスラム革命防衛隊(IRGC)につながるとされるグループ「クリムゾンサンドストーム」は、「防衛、海運、運輸、ヘルスケア、テクノロジー」などのインフラを標的としたマルウェア(ウイルス)による攻撃を手がけ、「トータスシェル」「インペリアルキトゥン」「イエローリダーク」などの名称でも知られてきたという。
特徴なのは、やはりスピアフィッシング用のメール作成に、生成AIを使っていたという点だ。
この他に、ウイルス検知ソフトを回避するためのプログラム作成のサポートのために、生成AIを使おうとしていたという。
●中国の「チャコールタイフーン」「サーモンタイフーン」
中国のサイバー攻撃グループ「チャコールタイフーン」は「アクアティックパンダ」、「サーモンタイフーン」は「マーベリックパンダ」「APT4」などの別名でも知られているという。
前者は「政府、高等教育、通信インフラ、石油とガス、情報技術」などの分野、「台湾、タイ、モンゴル、マレーシア、フランス、ネパール」などの国々が標的。後者は、「米国の防衛請負業者、政府機関、暗号技術分野の団体」を標的にマルウェアによる攻撃を行ってきたという。
いずれも「偵察」「スクリプト生成」「翻訳」などに使用していたという。
●サイバー攻撃にとっての"メリット"
これらの「導入例」からは、企業などが生成AI導入によって享受しようとするメリットを、サイバー攻撃グループも、遅滞なく取り込んでいることがよくわかる。
このような生成AIのリスクは、オープンAI自体が2023年1月に公表したスタンフォード大学、ジョージタウン大学とのGPT-3を対象とした共同研究や、GPT-4に関する「テクニカルレポート」でも明らかにされてきた。
※生成AIが世論操作のコスパを上げる、その本当の危険度とは?(01/20/2023 新聞紙学的)
それらが、現実の動きとして見えてきたということだ。
(※2024年2月15日付「新聞紙学的」より加筆・修正のうえ転載)
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