2020年4月22日水曜日

《論説》茨城県内初の夜間中学 誰も取り残さない教育を

Source:https://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20200415-00000010-ibaraki-l08

4/15(水) 9:00配信、ヤフーニュースより

茨城新聞クロスアイ
常総市立水海道中学校に4月、茨城県内初の夜間中学(夜間学級)が設置された。本来なら、きょう15日に入学式が行われる予定だったが、新型コロナウイルスの感染拡大で延期された。今後、入学式が行われれば日本人と外国籍の生徒を合わせた20人が入学する予定だ。

夜間中学は戦後、生活困窮のために昼間に働く少年や少女らのために誕生し、多いときは全国に80校以上あった。近年になって再評価され、いじめなどを受けてほとんど授業を受けずに中学校を卒業した「形式卒業者」に門戸を開いた。

さらに、在留外国人が増える中で、義務教育を終えずに来日した人の勉強の場としても需要が高まっている。文科省も全都道府県と政令市で設置を目指し、新設を検討する自治体を支援。常総市も含めて10都府県で34校になった。

常総市が夜間中学を設置した背景には、人口約6万3千人に対して外国籍の住民が約5400人と人口に占める割合が非常に高いことがある。市教委は「外国籍の人も含めた教育の機会の確保が必要だった」と話す。

入学する生徒は10代から70代までと幅広い。女性が14人、男性は6人。国籍別では日本6人、ブラジル9人、ペルーとフィリピンが各2人、ネパールが1人。外国籍の生徒は十分な教育を受けられないまま来日した人も多く、日本語の習熟度などに応じて五つのコースに分けて学習を進める。

生徒たちの志望動機はさまざまだ。現場の教員は「不登校を経験して十分に学べなかったといまになって振り返る方が学びたいとあらためて思い、こちらの学校の門をたたいた人がいる」と語る。外国籍の人の志望動機もさまざまで、40代のブラジル人男性は本国では中学を中退し、「日本で育った娘との意思疎通が十分にできない」との悩みを抱え、「日本でこれから生活していく上でこのままではいけない」と感じて入学を希望したという。

こうした外国籍の人にとっての夜間中学の意義について、多文化共生を専門とする茨城大学の横溝環准教授は「生活していく上で言葉は大事。それは生きる力。日本語が話せるようになりたいという人にとって夜間中学の意義は大きい」と指摘。日本人にとっても「いろんな人がいることを学ぶ場になる」と語る。常総市以外でも外国籍の市民が増えていることから共生社会を築く上でも「誰一人取り残さないために学習する機会をつくり、多くの人に支援してほしい」と話す。

教育学が専門の茨城大大学院の生越達教授も不登校などで学べなかった人にとって「勉強だけでなく、社会や人について学び直すにはいい」と可能性に期待する。だが、学校側が管理を強めて一律的な教育内容を求めすぎると「夜間中学本来の良さを失わせることにつながりかねない」と警鐘を鳴らす。いじめなどで傷ついてきた生徒のことも考えれば「一人一人の生徒が自分らしく学べ、大切にされる教育が必要」と説く。

一度や二度の挫折を経験しても何度でもやり直しができる社会でありたい。学び直したいという情熱さえあれば、いつでも門戸が開かれる社会でありたい。そこで求められるのは学ぶ意欲を持った生徒一人一人に寄り添い、取り残さない教育だ。夜間中学は、そのための試金石となろう。
茨城新聞社

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