2020年4月14日火曜日

「マスク在庫あります」東京でも行列せず買える? “ディープな噂”を検証してみた

Source:https://headlines.yahoo.co.jp/article?a=20200404-00037031-bunshun-bus_all
4/4(土) 6:00配信、ヤフーニュースより
文春オンライン
 4月1日、安倍首相は日本中の全世帯に対する布マスク「2枚」の配布を発表し、内外に戸惑いの声が広がった。言うまでもなく、この一件の背景にあるのは、昨今の長引くマスク不足問題だ。

【写真】東京で“並ばずに”買えたマスクたちの写真を見る(全8枚)

 日本のマスク不足は中国国内で新型コロナウイルスの流行が伝えられはじめた1月20日過ぎから急速に進行し、2月上旬からは地方でもほぼ買えなくなった。

 3月15日になって、ようやくマスクの転売が禁止されたものの、ごくまれにドラッグストアなどでマスクが販売される際には長蛇の列ができる。多くの人は、数少ないマスクを洗濯やアルコール消毒で使いまわしていることだろう。

 だが、実は都内でもまだマスクが手に入るエリアが存在する。それは在日外国人たちのコミュニティだ。一般の日本人があまり近寄らないディープなコミュニティになるほど、その内部ではマスクが堂々と流通している。
ディープ中華ビルの「マスク在庫あり」
 まずは中国人の世界をご紹介しよう。在日中国人は大きく分けて、1960年代以前に日本に定着している老華僑と、1970年代の改革開放政策以降に日本に来た新華僑がいる。前者の老華僑は戦前期から横浜や神戸のチャイナタウンを作ってきた――。が、彼らはかなり日本社会に馴染んでおり、チャイナタウンにも日本人が近寄りづらい雰囲気はまったくない(むしろ観光名所になっている)。

 対して「ディープなコミュニティ」を形成しているのが新華僑たちだ。特に首都圏では、池袋の旧北口付近や埼玉県西川口などに新たなチャイナタウンが形成されているほか、新大久保・高田馬場・上野・小岩などにも半チャイナタウン化したエリアがある。街のなかにすこし深く潜れば、広がっているのは中国語オンリーの世界だ。

 マスク販売の噂があるのは、そうした地域にある雑居ビルだった。このビルは各フロアがほぼすべて中国系の飲食店やスーパーで占められており、なかにはドラッグストアもある。このストアで、毎日午後3時になるとマスクが売られるらしい。
「マスク買えるんだよね?」7、8人の列が……
 そこで4月2日午後2時50分、私が当該の店に向かうと、すでに7~8人が店外に並んでいた。会話の声を聞く限り、並んでいるのはすべて中国人のようで、私たちの後にも数人がやってきた。

 とはいえ、街のドラッグストアでしばしば数十人~100人近くがマスクを求めて列をなしているのと比べると、人数はかなり少ない。本当にここで買えるのか不安になってくるが、列に並ぶ人たちに中国語で「マスク買えるんだよね?」と聞くと、さも当然のような表情で「そうだよ」と返事がくる。

 午後3時2分ごろに店内入店を許された。店員が「距離をとって並んで!」と中国語で注意するなか、人々が向かう先は店の奥にあるコロナ対策用品コーナーだ。

 棚の上にあったのは、「やわらか快適マスクPREMIUM」(くらしリズム)の通常サイズ40枚入り2箱と、小さめサイズ40枚入り2箱。さらにユニ・チャームの「超立体 かぜ・花粉用ふつう」7枚入りが10袋ほどだった。
約20分で「超立体」7枚を入手
「やわらか快適マスクPREMIUM」の箱は列の先頭の人がすぐに買ってしまったので価格は不明だが、「超立体」は買うことができた。コロナ流行前は1袋が398円だった商品が560円だ。

 すこし高いとはいえ、ネット上の転売屋の売価と比べればはるかに許容範囲内の価格である。どうやら限られた同胞向けに、良心的な価格で売っているらしい。

 レジで会計を済ませたのは午後3時9分。おおむね20分間で日本製の高品質マスクをゲットできた計算だ。並んでいる人数が少なかったため、列の末尾まで「超立体」が行き渡っていた。

 棚にはほかにも、一般のドラッグストアではしばしば品切れ状態になっている手洗い用アルコールジェル(300mlで1760円)のほか、「首からかけるウイルスブロッカー」のような効果が怪しいものも含めて、さまざまな抗ウイルス製品が売られていた。

 看板やチラシで「武漢加油(武漢がんばれ)」の文字が強調されているのを見ると、おそらく1月中旬~2月ごろまでに販売が始められ、現在も続いているのだろう。
新大久保のネパール系店でマスク山積み?
 いっぽう、現在の東京都下におけるマスク入手先としてひそかに注目されているのが、インド周辺国家(ネパール・バングラデシュ・パキスタン)を中心とした南アジア系のコミュニティだ。特に興味深いのが新大久保である。
 新大久保と言えば韓国人街のイメージが強いが、一昔前までは中国人がかなり多く、池袋に次ぐ「プチ・チャイナタウン」の雰囲気があった。だが、近年の新大久保は中国系の人たちが去り、かわりにテナントに南アジア系の商店やレストランが入ることで、街の表情が大きく変わってきている。

 私が新大久保駅に降り立ってしばらく歩くと、店頭に大量のマスクを積み上げているネパール系の雑貨店を見つけた。売られているのは50枚入りで1箱3500円のマスク(青と白の2種類)と、10枚1袋で750円の白マスクだ。
会社も生産地も中国なのに「日本語の箱」のナゾ
 箱マスクは日本語が書かれているが、会社名は「YIJIN」とピンイン(中国語のアルファベット表記)っぽいスペルであり、生産地も中国だ。おそらく、中国国内のマスクを輸入した在日中国人の業者が、日本語の箱に詰めたのだろう。いっぽう、10枚1袋で売られている白マスクは袋上の表記もすべて中国語である。

 中国ではウイルス禍を受け、石油企業のペトロチャイナ、自動車メーカーのBYDや五菱、スマホ大手のOPPO、さらには軍事企業の中国兵器工業集団……とあらゆるメーカーがマスクの製造を開始。3月に入ってからは1日に1億枚以上とも言われる膨大な生産をおこなっているとされる。

 いっぽう、中国では3月中旬以降、ウイルスの流行が(すくなくとも公式発表にもとづく限りは)かなり抑制されるようになった。余ったマスクが漏れ出る形で、新大久保のネパール人雑貨店に流れている可能性がある。
路面店で2枚300円で売っている例も
 新大久保の南アジア系商店でマスクが売られている話自体は、実は3月末に民放局のニュース番組や一部週刊誌でも取り上げられたことがある。このときに名前が出た店舗が、バングラデシュ人のブイヤンさんが経営する「ジャンナット・ハラル・フード」だ。
こちらはバングラデシュから仕入れたマスクを売っているのだが、私の訪問時は店頭では取り扱っておらず、時間を決めて販売する仕組みだった。

 また、この近くには中国製とみられるマスクを2枚300円で売っている路面店(なに人の店舗かは不明)や、再利用可能なスポンジ製マスクを1枚250円程度で売っている韓国系の美容室などもあった。ただし、こちらのスポンジ製マスクは、大手の「PITTA MASK」(アラクス)などの製品と比べると、クオリティがやや心もとない印象だ。
ではマスクのクオリティはどうなのか?
 さて、気になるマスクのクオリティだが、私が上記のネパール系商店で購入した中国製マスクは、やや薄い気がするもののフィット感は悪くない。さすがに大手メーカーの日本製マスクよりは質が落ちるが、十分に使えるレベルだ。すくなくとも布マスクよりは効果が高そうな気がする。

 某ビルの中国系ドラッグストアでは、入手までに約20分が必要で1人1袋しか買えないものの、国産の「超立体」7枚を560円で手に入れることができる。いっぽう新大久保では、ややクオリティが落ちる中国製マスクを50枚あたり3500~4000円程度で大量に入手可能である。質を取るか量を取るかだが、必要な人は探してみてもいいだろう。

 各報道やSNS上のドラッグストア店員とみられる投稿を見る限り、特に3月に入ってから、日本の一般のドラッグストアでマスクやトイレットペーパーなどを過度に買い占めているのは、年配層の人が比較的多いとされる。

 しかし、これは逆に言えば、生活保守主義的な「買い占め層」の年配者があまり寄り付かない場所にアプローチできれば、ある程度はマスクを買える可能性があるということだ。

 読者諸氏が外国人商店でマスクが売られているのを見たときは、買い占めずに適量を細く長く買っていくことをお勧めしたい。

写真=安田峰俊
安田 峰俊

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