2020年4月1日水曜日

「高齢化」でイタリアと同じ日本が、新型コロナで医療崩壊しないために今できること〈AERA〉

Source:https://headlines.yahoo.co.jp/article?a=20200330-00000008-sasahi-soci
3/31(火) 7:00配信、ヤフーニュースより
AERA dot.
 新型コロナウイルスが猛威を振るい続けるイタリア。感染拡大の背景には、高齢化をはじめ病床数の削減や医療費の抑制などがある。AERA2020年4月6日号では、医療の国際比較しながら日本が優位な点と見習うべき点を探る。

【グラフ】日本は欧米と比べると病院数や病床数は多い?少ない?

※【イタリア医療崩壊「見捨てられる患者」も 日本も他人事ではない病院の機能不全リスク】より続く
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 日本とイタリアの共通点は高齢化だ。イタリアは全人口に占める65歳以上の比率が23%に上る。イタリアの高等衛生研究所によると、新型コロナに感染した死者の平均年齢は80歳。欧州連合(EU)で最も進んだ高齢化も死者数を引き上げた一因と指摘されている。

 2017年のOECD(経済協力開発機構)のデータによると、欧州の主要5カ国では女性はスペイン、フランス、イタリアの順、男性はイタリア、スペイン、フランスの順で平均寿命が長い。こうした点を挙げ、「今回の感染拡大地域では高齢化が進行していることがうかがえる」と指摘するのはニッセイ基礎研究所の篠原拓也主席研究員だ。医療の国際比較に詳しい篠原さんは、日本には優位な医療資源があるとも指摘する。日本は欧米先進国と比較して病院数と病床数が突出して多いのだ。

■日本で「崩壊」を防ぐカギ

 人口100万人あたりの病院数(イギリスは18年、アメリカは16年、それ以外の国は17年のデータ)は、ドイツ37.3、フランス45.6、イギリス28.8、イタリア17.6、スペイン16.7、アメリカ17.1に対し、日本は66.4と他国を圧倒。人口千人あたりの病床数(17年、アメリカのみ16年のデータ)もドイツ8.0、フランス6.0、イギリス2.5、イタリア3.2、スペイン3.0、アメリカ2.8に対し、日本は13.1と突出している。

「多くの先進国では病床数を削減し、医療費の抑制を図ってきました。一方、日本は医療費の抑制を図りながらも、高齢化に備え、医療施設の整備や充実を進めてきました。病床数の多寡は、感染拡大に際して患者を受け入れる余力の有無につながると考えられます」(篠原さん)

 医療機関どうしの連携や役割分担が、日本で医療崩壊を防ぐカギになる可能性もある。かろうじて爆発的な感染者増加に至っていない今のうちにできることはないのか。
 岡山大学大学院の津田敏秀教授(環境疫学)は、感染者の集積を予防するのと同時に、特定地域で医療崩壊の負の連鎖が起こり始めた時点でいち早く感知して対応するのが大事だと強調する。

「感知できたら、患者急増に対して医療資源が枯渇しないよう最善を尽くす必要があります。そのためには、病院・地域を超えて病床、医療スタッフ、人工呼吸器などの医療資源を相互に融通し合えるネットワークを事前に構築しておくべきでしょう」

 とはいえ、より重要なのは医療崩壊が起きる前段階で感染拡大を防ぐことだ。

■「危機感」が共有されず

 東京都の小池百合子知事は23日、都内で大規模な感染拡大が認められた場合、東京都を封鎖する「ロックダウン」も検討するとし、都民に大型イベントの自粛などをあらためて求めた。都知事がロックダウンに言及したのは、市民の間で危機感が十分に共有されていないことが背景にある。22日には、国と埼玉県が主催者に繰り返し自粛を求めていた「K‐1 WORLD GP」が「さいたまスーパーアリーナ」で開かれ、観客約6500人が入場した。

 国が掲げる基本対策は「クラスターの早期発見・対応」「患者の早期診断・重症者への集中治療の充実と医療提供体制の確保」「市民の行動変容」の3本柱だ。このうち、最も困難なのが「市民の行動変容」だと唱えるのは、日本国際保健医療学会理事長を務める神馬征峰・東京大学大学院教授(国際地域保健学)だ。

 ネパールでは銀行入り口に設置したアルコール噴霧装置で手洗いをしない人は中に入れないよう警備員が監視しているという。神馬教授は言う。

「ネパールではまだ感染拡大は報告されていませんが、重症者が出るとしっかり治療できる施設は限られています。その危機感がこうした水際対策の徹底につながっているのでしょう。日本も見習うべき面はあると思います」

 世界は人、モノ、情報でつながっている。先進国・途上国を問わず、市民レベルの危機意識の共有が不可欠だ。(編集部・渡辺豪)

※AERA 2020年4月6日号より抜粋

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