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 那賀町 児童の応援動画公開

 那賀町では、五輪カヌー(スプリント)のドイツ代表が26日から、パラリンピックカヌーのドイツ代表が8月18日からそれぞれ事前キャンプをスタートする。

「頑張って」と書いたメッセージと国旗を手に、ドイツ代表を歓迎する動画の収録に臨む児童=那賀町

 歓迎ムードを盛り上げるため、町は選手の顔写真や名前、練習の見学エリアなどを記載したチラシを広報誌の7月号に折り込み、住民に配布。上旬にはドイツ出身の県国際交流員が町内の各小中学校を訪れ、ドイツの文化や言葉を紹介する。児童生徒には、ドイツ国旗などが描かれた横断幕に応援メッセージを書き込んでもらい、練習会場となる川口ダム湖に掲げて選手を激励する計画だ。

 5日からは選手団を紹介する動画が地元ケーブルテレビで放映される。また、県が町内で撮影・制作した別の動画もインターネットで公開中。カヌーの体験活動に参加した地元4小学校の児童が「フィール・エアフォルク(頑張って)」とドイツ語で記したメッセージボードやドイツ国旗を掲げ、エールを送っている。

 選手団が滞在するもみじ川温泉も準備を急ぐ。カレー風味のスパイスで味付けしたソーセージやフライドポテトが楽しめるドイツ料理「カリーブルスト」に加え、町産シカ肉のフライも用意して選手をもてなすという。受け入れ初日には簡素なセレモニーも企画している。武市卓之支配人(39)は「各選手は本番前で気持ちが張り詰めていると思うので、おいしい食事や疲労回復効果が期待できる温泉でくつろいでほしい。万全な状態で本番に挑めるようサポートする」と話す。

 那賀高校カヌー部は県内唯一のカヌー部として、ドイツ代表がこれまで訪れた際に合同練習するなど縁が深い。3年の川田星那主将(17)は1年の夏にドイツを訪れて現地の生徒と練習した経験もあり、事前キャンプを心待ちにしている。「ドイツの選手はこぎ方などが全然違う。練習の見学や、ボートでの並走ができればうれしい」。顧問の松田勇輝教諭(35)は「生徒たちにとって良い刺激になると思う」と期待している。

 

 鳴門市 横断幕にメッセージ

 アスリートの練習場所やスポーツ大会の開催地として県内屈指の環境を誇る鳴門市。各競技施設が整う鳴門大塚スポーツパークでは15日から、五輪ハンドボールのドイツ代表の事前キャンプが行われる。

応援の横断幕にメッセージを書き込む児童=鳴門市の林崎小学校

 選手団の到着を控え、市内ではさまざまな歓迎行事の準備が進む。スポーツパークに近い林崎小学校の児童は2日、練習場所の鳴門アミノバリューホールに掲げる横断幕を作製した。6年生50人が白い布地に、歓迎や応援のメッセージをドイツ語で書き入れた。

 鳴門にとってドイツは特別な国だ。第1次世界大戦中、大麻町にあった板東俘虜(ふりょ)収容所のドイツ兵捕虜がベートーベンの交響曲「第九」をアジアで初めて演奏したのが縁で、リューネブルク市と姉妹都市になり、市民同士の相互交流が続いている。

 市は、県の事前キャンプ誘致活動と歩調を合わせ、数年前からドイツのハンドボールチームを招いた交流試合や合同練習を実施。来日時には市内の児童生徒との交流も重ねた。コロナ禍で同じドイツの柔道代表は事前キャンプを断念したが、両国の友好の歴史を林崎小児童に紹介した市国際交流員のダリオ・シュトライヒさん(29)=ベルリン出身=は「市民や子どもたちから、選手団への友情や応援する気持ちを少しでも届けられたらうれしい」と力を込める。

 地域のスポーツ振興につながると期待する声もある。ハンドボールのドイツ代表は2016年のリオデジャネイロ五輪で銅メダルになった強豪。受け入れ準備を担当する市スポーツ課の藤瀬藏(おさむ)課長は「世界トップレベルの選手や練習を間近で見るのは、子どもたちにとっても貴重な経験になる。五輪のレガシー(遺産)として事前キャンプから何をどう残していけるのか、意識しながら準備していく」。アミノバリューホール1階には近く、代表選手を紹介するパネルが展示される。

 大会本番まで選手団にベストコンディションを維持してもらおうと、宿泊先となる市内のホテルも、おもてなしを考えている。食事は選手団の要望に応えた専用メニューのほか、鳴門鯛(だい)の舟盛りや天ぷら、すしといった日本料理を用意。安心して味わってもらうため、食材やアレルギー表示をドイツ語で表記する配慮も欠かさない。

 市から国旗などを借りて掲揚台に掲げ、選手団の到着時にスタッフが横断幕とともに出迎えるという。担当者は「海が見える部屋にミーティングルームを設けるなどリラックスできる時間を提供したい」と話す。

 市内ではドイツのほか、ジョージアのパラリンピック3競技の選手団も事前キャンプを予定している。

 

 徳島市 オンラインで交流へ

 五輪水泳のネパール代表チームは、県内で事前合宿をする初めての選手団だ。7日に徳島市入りし、8日から、むつみパーク蔵本むつみスイミングを拠点に練習を開始する。

 選手団は100メートル自由形に出場する男女とコーチの3人で、12日に県民向けの公開練習を予定している。見学には事前申し込みが必要で、5日から県ホームページで受け付ける。

 11日に県内の水泳選手と、16日には加茂名小学校の児童とそれぞれオンラインで交流し、児童が応援メッセージを送る。19日には壮行会が開かれる。

 

 感染対策 接触を最小限に

 外国人選手団の受け入れで最大の課題となるのは新型コロナウイルスの感染防止だ。選手や滞在先の住民に感染者が出ないよう、県や宿泊施設は対策に神経をとがらせる。

 来日する選手は入国前に2回以上、入国後は毎日PCR検査を受ける。移動は専用車両を使い、練習会場や空港、宿泊施設の行き来に限定される。選手団には県職員らが帯同。ファンが選手に駆け寄るなど人混みが生じた場合は、「密」を避けるために人の流れを誘導して対応する。

 宿泊施設では、一般客と選手らが接触しないように滞在フロアを分けるほか、選手の外出や売店利用などを禁止する。食事は専用会場を設け、選手がいない時に配膳や片付けを行う。

 ドイツのカヌー選手団が宿泊するもみじ川温泉(那賀町)は、事前キャンプ期間中は全館貸し切りとし、一般客の利用を控えてもらう。武市卓之支配人は「接触を最小限に抑える方策を従業員らと話し合っている。選手団の宿泊先に選ばれたのは名誉なこと。感染対策に注力しながら、選手が力を発揮できるようもてなしたい」と語った。

 練習会場も厳重な感染対策を取る。ハンドボールのドイツ選手団が練習する鳴門アミノバリューホールでは、選手の出入り口は1階、観客は外階段のある2階とした。両者の動線が交わらないようにして、見学は2階観客席に限る。カヌー選手団の練習会場となった川口ダム湖でもフェンスを設置するなどして観客との距離を保つ。

 県は「万一の事態が起きないよう対策には念を入れる。観客や選手に不便をかけるかもしれないが、配慮してほしい」としている。