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社員が自発的に学ぶことで企業が成長をしていく。そんな企業風土をどうやったら生み出すことができるのか? 今回、脳トレコーチのジム・クイックはこのテーマに挑むにあたり、欧米で人気のオンライン学習サービスMindvalleyの創設者であり、ベストセラー作家であるヴィシェン・ラキアニ氏を再び招聘した。 【画像】「若者がつぎつぎ辞めていきます」脳トレコーチに悩み相談 ジム・クイック(以下 クイック) さて、今回のテーマはこれだ。繁栄していく自律学習型組織を作るにはどうすればいいか? これまでは個人での学習について話してきたが、チームとしてはどのように学んでいけばいいだろうか? みなさんの職場の慣習の一部としてどのように学べばいい? あなたが起業家で従業員を抱えているなら、どうやって彼らに生涯学習に取り組んでもらえばいいのか? ブランドを成長させ、ビジネスを育てていくためには、社員全員で成長していく必要がある。みんなで力を合わせれば、より多くのことが達成できるし、集合的な知性を高め、集団的思考で問題を解決することができるようになる。 では、学習型組織の実際はどうなっているのだろう? 私は、ゼネラル・エレクトリックからフォックス・スタジオまで、世界最大級の組織でトレーニングを担当しているが、多くの組織にとってこれは現実的な問題である。なぜなら、企業の最大の支出は人件費だからだ。 では、組織のために働く人たちの知性を、どうすれば最大限に活用できるだろうか? これはあなたが従業員でも、雇用者でも、起業家でも、教育者でも、特に学習が重要な21世紀において非常に重要な問題であり、あなたの仕事力を倍増させる重要な原動力のひとつとなる。 今日は光栄にも、再度、ヴィシェン・ラキアニ氏にご登場いただくことができた。彼は、組織改革の分野で最も称賛される企業のひとつを創業した。実はいま、私たちはマレーシアのクアラルンプールにある、彼のMindvalley本社にいる。ここでは世界46ヵ国から300人の従業員がやって来て働いている。 マレーシアに到着してまだほんの数日だが、8年前にここに来たときと比べて、すでに大きな変化を目の当たりにしている。素晴らしい組織改革が実践されている証拠だ。ここでは誰もが幸せを感じ、仕事に打ち込める時間があり、生涯学習に取り組んでいる。 いまや教育や学習を通じて進化しつづけることの重要性について、至るところで話題になっており、あなたはこの分野で多くの波紋を呼んでいる。Mindvalleyの社員は成長し、大きな貢献をしていることで充実感を得ている。 この連載を読んでいる人は、チームに所属しているか、チームを率いている人たちだと思いますが、組織作りで重要なことを教えてください。 ヴィシェン・ラキアニ(以下ラキアニ) まず、すばらしい紹介をありがとう、ジム。Mindvalleyは教育の会社だ。私たちの目標は、人類の歴史に大きな影響を与える教育企業として、できる限りのことをすること。そして、10億人の人々を次のレベルの意識へと導くことだ。それが果たして何を意味するのか、いくらでも話し続けることができるが、今回はやめておこう。 重要なのは、私たちは教育の会社なので、基本的に人に教えることは自らも実行しなければならない。つまり、Mindvalleyの社員1人1人が自身の教育に力を入れなければならないんだ。 Mindvalleyを立ちあげたころは、ベンチャー基金は存在しなかった。さらに悪いことに、Mindvalleyはシリコンバレーでもロンドンでもなく、マレーシアのクアラルンプールにある。おまけに当時は大規模な頭脳流出が起きていて、毎年、人口の1%が香港やカナダなどの豊かな国に流出していた。 だから、アメリカ流スタートアップをマレーシアのクアラルンプールで立ちあげるなら、常識にとらわれない発想が必要だった。初期の段階でこのアイデアを信じてくれたクレイジーな数人が私に加わり、みんなで計画を立てることになった。 当時はこんな風に言われていた。「いったい、なぜここにいるんだ? ヴィシェン」「なぜアメリカからクアラルンプールへ戻ってこの会社を作ったんだ?」「戻ってこい。マレーシアでは頭脳流出が起きている。人材は獲得できない」 そこで考えた。マレーシアで人材を獲得できないのであれば、Mindvalleyで働くために外国から人材を連れてこなくてはいけない。そのためにはマレーシアに移住するほど魅力的なビジョンを掲げなくてはいけない、と。そこで私たちは2005年に目標を設定し、それがうまく機能した。その目標とは、「15年後の2020年に、世界で一番働きたい場所にする」というものだ。 世界で一番働きたい場所とは、社員が最も学び、成長できる場所でなければならないと考えた。あなたが従業員として参加したら、良い給料をもらうだけでなく、素晴らしいチームメイトたちと加速的に進化していく。その結果、あなたはパワフルな人間に成長していく。 このビジョンを実現させるために、できる限りのことを始めた。それから月日が流れ、いくつかのプロトコルが実際にうまく行き始めた。それをこれから紹介していきたいと思う。 Mindvalleyは小さな民間企業だが、マレーシアのクアラルンプールのオフィスには世界中から応募があり、現在は46の異なる国籍の人たちが働いている。社員はわずか300人ほどだが、46の異なる国からここで働くために移住してくれた。誰もが英語で話し、誰もが驚くべき方法で連携を取りあっている。 もうひとつの自慢は、人材の成長が非常に早く、昨年フォーブス誌が発表した「マレーシアで注目の30歳未満の30人」に選ばれた人たちのうち、1割が元Mindvalleyの従業員だった。この街でも人材を育てることができるんだ。
リーダーシップを正しく定義する
まず、Mindvalleyでは、リーダーシップに独自の定義がある。若い頃、私は世界中の偉大なリーダーを研究していて、リーダーシップに関するお気に入りの名言があった。ドワイト・アイゼンハワー大統領のもので、「リーダーシップとは、自分が誰かにやってほしいことを、その人に心からやりたいと思わせる術である」というものだ。 当時の私は感心した。「アイゼンハワーはすごい。リーダーシップとは、自分がやりたいことを人々にやってもらい、彼らが自分の意思でそれをやりたかったと感じるように仕向けることなのだ」と。 でも、それから成長し、世界で起きていることに目を向けていくと、疑問を抱くようになった。アイゼンハワーの時代ならこの名言は素晴らしかっただろうし、彼が偉大な人物だったことは間違いない。だが、今日の世界でこの名言は適切なのだろうか、と。 このようなリーダーシップのせいで、大統領は100万人の兵士をバカげた戦争に向かわせ、彼らに戦いたいと思わせたからだ。そこで、私たちはMindvalleyで新たなリーダーシップ像を作ることにした。 1つ目のルールがこれだ。リーダーシップとは、あなたが率いるすべての人たちに、あなたと同じように力強く、あなたと同じようにすばらしく、同様に偉大な能力を持っていると認識させることだ。リーダーの仕事は、この事実を彼らに思い出させることだ。その結果、Mindvalleyでは「リーダーは、良きコーチでなければならない」というリーダーシップの定義ができた。 現在、このことを実証する研究が始まっている。グーグルでは、人材を真に優れたものにする資質とは何かを調べた。彼らはSTEM(科学、技術、工学、数学)に賭けていたが、STEMの学位が人材を真に優れたものにしているわけではないとわかった。最高のグーグル社員は、最高のコーチであるということが明らかになっている。 だから、まずは社員全員を立派な先生にしなくてはいけない。そのためには何をすればいいか。私たちは、コミュニケーションとパブリックスピーギングのワークショップを実施した。 毎週木曜日の全員参加の会議において、各チームから1人を選び、200人の聴衆の前で、そのチームが行ったことを2分間で発表させた。社員全員がステージに上がり、お互いに教えあうトレーニングをする。つまり、最初のルールは「生徒が先生であり、先生が生徒となる組織を作る」ということだ。
学習時間を提供する
さて、2つ目のルールは、「社員に学ぶ時間を与える」。私たちは、「週45/5時間労働」というモデルを実験的に導入した。私たちはオーバーワークを信じていない。いまシリコンバレーや世界には、成功するためには正気ではないほど長時間働かなければならないという大きな神話があるが、私はハードワークを信じていない。ハードワークなどクソだし、危険な迷信だ。家庭や子育てや人々の健康が破壊される原因になり、必ずしも成功には導かない。 私たちは従業員に、週に45時間働くのはすばらしいが、Mindvalleyの仕事に費やす時間は40時間ほどににとどめ、週に5時間、または1日に1時間は自分の成長のために使ってもらっている。 Mindvalleyの図書館には、何千冊もの本があるから、1冊を手に取って、自分のデスクで読んでもいい。Mindvalleyのオンラインコースを受講してもいいし、セミナーを受講してもいい。何でもかまわない。このことについて、誰もあなたを批判したり評価したりしないので、1日に1時間は勉強に割いてもらっている。これを組織全体で行っている。 また、毎月第1金曜日を「まなびの日(Learn day)」とする試みも行った。Mindvalleyの従業員が、ほかの生徒たちの先生になる。ある従業員が「写真とVlogの素晴らしい方法を学んだから、ぜひVlogのクラスをやりたい」と言うこともある。 自分の仕事とは関係がなくても、毎月第1金曜日に開催されるこのクラスに参加することができる。大成功だったが、いずれこの試みは中止となった。別のモデルを導入するようになったからだ。現在はチーム単位で保養所に出張し、そこで4日間、お互いから学びあうという試みを行っている。 社員に学ぶ時間を与えるためには、いろんなやり方がある。企業側が授業料を負担したり、就業中の1時間を勉強に充てさせるなどして、自分をアップグレードしてもらえばいい。ほとんどの企業は行っていないが、これを実施しないとイノベーションは起こらない。私たちのカスタマーサポートは、単にメールに答えるだけではなく、自分自身をアップグレードすることで報酬を得ているんだ。その結果、3年前にアジアのベストカスタマーサポートチームという賞を受賞した。 彼らは自分たちの仕事に目を向け、革新することに時間の大半をかけている。機械学習やAIを導入して、送られてくるメールの数を減らしている。Mindvalleyでカスタマーサポートを担当している24歳の若者たち、なかには大学を卒業していない者もいるが、カスタマーサポートに改革を起こすことができるなんて驚くべきことだ。これが2つ目のルール「人々に学ぶ場を提供する」ことの効果だ。
自分のビジョンに情熱を持たせる
3つ目は、自分自身のビジョンに情熱を持たせることだ。「Future Strong」の著者ビル・ジェンセンにMindvalleyで講演をしてもらったさい、「未来の仕事はどうなると思いますか?」と尋ねた。すると、彼はこう答えた。「将来は、従業員を会社のビジョンに従わせるような会社だけにはならない。そのような会社も残るだろうが、社員のビジョンに従う会社も出てくるはずだ」と。 想像してもらいたい。従業員たちがそれぞれ偉大なビジョンを持ち、企業がそのビジョンを支援することに従事するんだ。そこで私たちは、「3つの最も重要な質問」と呼ばれるプロセスを社内に導入した。Mindvalleyに入社する際に、オリエンテーションの過程で2時間ほどかけて自分の人生のビジョンを作ってもらう。これについてはジムとのポッドキャストで詳しく紹介しているので、以前のエピソードを参照してほしい。 これをすることで、すべての従業員は、自分がどう成長したいか、どうやって世界に貢献したいか、人生でどんな経験をしたいかというリストを持つことになる。従業員1人につき1ページのリストは、全員分が巨大な壁に張り出されている。完全に公開されているので、従業員たちは通りがかりにお互いのリストを読むことができる。 驚くべきことに、いまではコラボレーションが生まれている。ある人はヒマラヤをハイキングしたいと考えていて、彼は壁の前で、ネパールやブータン、ヒマラヤと書いてある人を探した。そこで3人の仲間を見つけ、彼らは旅行を予約し、一緒に7日間かけてヒマラヤを歩いた。その結果、彼らにはすばらしい友情が芽生えた。このように、会社として社員のビジョンをサポートするだけでなく、社員同士もお互いのビジョンをサポートしているんだ。 そして今日、ジム、まさにあなたは目撃したね。私たちはここMindvalleyで昼食をとっていて、隣には従業員のグループが座っていた。そのなかの1人が、「健康ウィークだった!」と言った。そのテーブルにいたもう1人の女子がほかの社員に健康的な食事について教えていたからだ。彼らは食生活を整え、体を鍛えるために協力し合っていた。 これは、私がとりまとめたことではない。社員それぞれの「3つの最も重要な質問」に基づいて自己組織化されたもので、Mindvalleyでは常に起こっていることだ。こうなると、従業員たちは非常に早く成長する。かつて従業員が90人だった頃、Mindvalleyの社員のうちの80人が雑誌やテレビで紹介されたり、TEDの講演を行うことがあった。たった1ヵ月間のあいだにね。それだけ彼らは急成長したんだ。 もちろん、社員が急成長すると、せっかく育てても独立してしまうのではないかという不安が出てくるし、実際にそうなることもある。Mindvalleyの多くの従業員が退職し、自分の会社を立ち上げている。 ただ全体として見ると、グーグルのようなシリコンバレーの多くの企業よりも勤務期間ははるかに長く、1人あたり3年ほど勤続してくれている。もともと、わが社の従業員のほとんどはミレニアル世代だ。ペネロペ・トランク(起業家・作家)によると、ミレニアル世代の多くは1つの会社に18ヵ月しか在籍しないそうだ。 クイック もしかしたら、こう反論する人がいるかもしれない。彼らに投資しなくても、会社に残っていたのではないかと。でも数日ここで過ごしただけで、従業員が運営するヨガクラスに誘われて昨日参加したり、ロレンツォという人が主催するクロスフィットにも参加させて貰った。すべて自分たちで組織していて、みんなが成長するためにこの場に所属しているのはわかった。 いわゆるネットワーク・マーケティングで働く人たちも、石けんなどの商品を売ってもそれほど実入りはないのに何年も留まっているのは、自己啓発に夢中になっているからだ。だから、これはとても重要なことだ。 ラキアニ 私たちの次の取り組みは、これらのプロセスの多くを文書化し、ほかの企業が個人の成長を組織にもたらすためのアプリやツールを作成することだ。約1年後になるが、発表したらこの分野で圧倒的な技術力を持つ会社にしたい。これは私たちが多大な情熱を持って取り組んでいることだからね。
「2分間の感謝メール」
そして、4つ目の例はとても簡単で、文字どおり明日からでも、あなたの会社で始められることだ。ハーバード大学の研究者であり『幸福優位7つの法則』の著者、ショーン・エイカーから教わったことだ。成長を生み出す方法であるのと同時に幸福を加速させる方法で、ハーバードでは幸福が生産性に大きく貢献すると示している。 その方法は「2分間のメール」と呼ばれるもので、やりかたはこうだ。ショーンが企業で行った実験だ。管理職が出社して1日を始めるときに、電話を置いて、2分間のタイマーをセットする。その2分間で前日にあなたが感銘を受けた、幸せな気分にさせてくれた1人にメールを作成するのだ。 そうすると、そのメールは受け取った人を喜ばせることになる。受け取った人は名誉を感じ、認められたと感じ、意義を感じる。さらに多くの場合、その人はその管理職に返事を書くか、それをきっかけにほかの誰かにメールを書くことになり、波及効果が生まれるのだ。 ショーンは、ファースト・ナショナル銀行でこの方法を行った。この会社のCEOが確かベイカー氏だったが、ショーンによると彼は数字を信じるタイプなのではじめは懐疑的だった。ファースト・ナショナル銀行の利益は6億5000万ドルだったが、この行動を実施した18ヵ月後には9億5000万ドルにまで増えた。 入社希望者は217%ほど増加した。さらにグーグルが、彼らの様子を伺いに訪ねて来た。CEOもとても感心していた。この「2分間の感謝メール」も取り入れるべきおすすめのツールだ。
「3つの最も重要な質問」を支援する
全従業員に「3つの最も重要な質問」をすることは覚えているね? 私は数週間ごとに、従業員の「3つの最も重要な質問」を読み、彼らを支援できる小さなことを探すようにしている。そして、その人へのプレゼントを買いに行く。 たとえば、イタリアで1年暮らしたいと考えている女性がいた。私は彼女に旅行ガイド「ロンリープラネット」のイタリア版を買い、メモにこう書いて本に挟んだ。 「あなたの『3つの最も重要な質問』を読みました。Mindvalleyはあなたの夢を応援しています。この本を楽しんで。いつかイタリアで会いましょう」 それだけだ。だがこれがきっかけで、その人の仕事への思い入れは完全に変わる。ギャラップ社がアメリカ人の従業員1000万人を対象に調査を行っている。「上司や職場の人が、自分のことを1人の人間として気にかけているか?」という質問に対し、「はい」と答えた人は、熱心に仕事に取り組み、愛社精神が強く、忠誠心が高く、より長く勤めることがわかっている。 彼らのビジョンを読んで、支援する用意があることを純粋に示すことで、会社の全体的な動きが変わるんだ。これらの5つの要素を組み合わせれば、力強く幸せな、学習する組織を作ることができるはずだ。 おさらいすると、まず、誰もが先生やコーチになることを奨励する。偉大なリーダーとは優れたコーチだからだ。2番目に、社員が自由に学べて、自分のペースを守ることができるような時間を設けること。いわば学習時間だ。3番目は「3つの最も重要な質問」をすること。4番目は「2分間のメール」。そして最後は、従業員の「3つの最も重要な質問」に基づいて、CEOや上司、創業者からその人だけのプレゼントを贈ること。 クイック 完ぺきだ。もしもこれを読んでいる人が雇用主なら、5つをすべて行う必要はないので、どれかひとつを選んで実践してみよう。あなたが従業員で、チームの一員であれば、組織のリーダーにこの連載を教えて欲しい。ぜひ私やヴィシェンをタグ付けして、SNSで共有して欲しい。
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