Source:https://news.yahoo.co.jp/articles/7ce67156c7fafded848ec15d6d1fc0c25dc2b412
「好事魔多し(こうじまおおし)」という言葉がある。「順風満帆な時ほど、どんな不幸がやってくるか分からない」的な意味だ。 【写真】強烈な魔術でドクター・ストレンジらを追い詰める“最強の魔女”スカーレット・ウィッチ ベネディクト・カンバーバッチ扮(ふん)する“ドクター・ストレンジ”ことスティーヴン・ストレンジは、アメリカ・ニューヨーク最高峰の神経外科医。心は冷静沈着、腕前は正確無比、しかも相当な音楽ファンらしく同僚に向かってチャック・マンジョーネの「フィール・ソー・グッド」(※)に関するうんちくを傾ける一面も持っている。 どこから見ても順風満帆だったはずの彼を襲ったのは、あまりにも突然な交通事故。どうにか一命は取り留めたものの、かつての腕前は復活せず、恐らく藁にもすがる思いだったのだろう、ネパール・カトマンズにある修行場「カマー・タージ」に向かい、マルチバース(並行宇宙。僕はパラレルワールドと解釈している)の存在を知り、“至高の魔術師”となる。このあたりが前作「ドクター・ストレンジ」(2017年公開)でパワフルに描かれていた。 そして2022年5月からの劇場上映を経て、6月22日からディズニープラスで公開されている「ドクター・ストレンジ/マルチバース・オブ・マッドネス」では、マルチバースの存在と神秘に大きなスポットが当てられている。久々にマーベル映画を手掛けるサム・ライミならではの演出も話題を集めた。ちなみに、日本での劇場公開日には同監督の「死霊のはらわた」がTwitterでトレンド入りしていたことも興味深い。(以下、ネタバレがあります) ■約5年ぶりの続編 5年間とはずいぶん待たせてくれたものだが、その間に“至高の魔術師”の座はベネディクト・ウォン扮するウォンに移ってしまった。要するにスティーヴンは“無冠”。そんな彼がアメリカ・ニューヨークで、ソーチー・ゴメス演じるラテン系の少女、アメリカ・チャベス(空間移動の能力を持つ)と出会い、マルチバースを行き来し、さまざまな世界にいる自分を目撃したり、時に語ったり、対立しあったりする。 いる次元は違うとしても、やっぱり相手は自分なのだから、まったく同じ能力を持つ者同士の争いになるわけだ。そうなると永遠に決着がつかないのは当たり前、となるのだが、言うまでもなく社会というものは他者との関わりで成立する。スティーヴン・ストレンジは、この映画は、そのあたりの折り合いをどうつけていくのか。途中からこれが、この映画に寄せる個人的な焦点となった。パラレルワールドの描写は、やはりディズニー系のアニメ「ソウルフル・ワールド」(こちらもニューヨークらしき都市が舞台だった)にも通じる、いくぶんユーモラスなもので、「ピザボール」なる謎の食べ物にも大いに食欲がそそられた。 ■スティーヴンの顔に“サード・アイ”が 扉をこじ開けるときの呪文はいまだにオープンセサミ(開けゴマ)なのだなとか、エルドリッチ・ライト(魔法陣)が前作以上に輝かしいなとか、にやにやしながら見ているうちに、またもやストーリーに暗雲がたちこめて、スティーヴンの顔に“サード・アイ”が発生したところで、見る者は現実世界に引き戻される。おいおいこの先、どうなっていくんだ? 待つ楽しみを味わいつつ辛抱強く次作に備えたいと思いながらも、もう5年間は待ちたくないなあ…。 (※1)1977年発売の同名アルバムに収録。のちにシングル・カットされ、ヒット・チャートを急上昇した。フュージョン・ブームを代表する1曲であるとともに、フリューゲルホルン(トランペットを大きくしたような形状を持つ)という楽器を世に知らしめた。 ◆文=原田和典
0 件のコメント:
コメントを投稿