Source:https://news.yahoo.co.jp/articles/3b29af0c56b0cf963a9c950aa23ebdea7ae7923a
「空を飛んでみたい」「鳥と一緒に飛んでみたい」――。このようなことを考えたことがある人もいるだろうが、そんな“夢”をかなえてくれるサービスがある。「パラホーキング」だ。 【タカと一緒に飛ぶ(9枚)】 「ん? なにそれ?」と思われたかもしれないが、2人乗りのパラグライダーに乗って、タカと一緒に飛ぶことができるサービスだ。「タカ」といえば、クチバシがカギガタに曲がっていて、ツメは鋭い。 なんとなくどうもうなイメージがあるが、そのタカをどのように訓練すれば、一緒に飛ぶことができるのだろうか。サービスを運営している「Parahawking in Japan」(静岡県伊東市)で、代表を務めている伊代野正成さんに話を聞いた。
エサを「パクっと」食べる
――「パラホーキング」って聞きなれない言葉ですが、どういったサービスなのでしょうか? 伊代野: 一言で言えば、タカと一緒に飛ぶことができること。パラホーキングが生まれたのは、ヒマラヤ山麓に位置するネパールのポカラというところなんですよね。保護した猛禽類(もうきんるい)を野生に復帰させるために、パラグライダーを使ってリハビリを行ったことが原点と言われています。 その後、2人乗りのパラグライダーを使ってタカと一緒に飛ぶ、いまの形に広がっていきました。ただ、海外でパラホーキングができるのは10カ所もなくて、日本では当社だけなんですよね。(同社調べ) ――2人乗りのパラグライダーに乗るわけですが、前にお客、後にインストラクター。お客がエサ(うずらの肉)を差し出すと、タカが近寄ってきて「パクっ」と食べますよね。 伊代野: 左手でエサを手にして、それを胸の前でじーっと持っておく。タイミングがくれば、腕を左に真っすぐ伸ばすんですよね。その姿を見たタカは、近寄ってきてエサを食べるといった流れです。 タカは一連の動きを覚えていて、人間の背中から左手が出てくれば、“そのエサを食べてもいい”ということを理解している。ただ、たまにそれに気づかないときがありまして、そのときにはホイッスルを鳴らすんですよね。そうすると、タカは近寄って来ます。 ちなみに、パラグライダーで離陸するとき、タカはどこにいるのか。近くにいるんですよね。または、サポートしている人の腕にとまっている。で、パラグライダーが離陸すると、後からタカがついてくるといった形になります。
警戒心を解く
――タカといえば狂暴な鳥といったイメージがありますが、そのタカをどのようにして飼い慣らしているのでしょうか? 伊代野: このサービスは2017年から始めているのですが、経験者に教わったわけではありません。個人的に野鳥を飼育したことがなかったので、どのようにすればいいのかまったく分かりませんでした。猛禽類の飼育に詳しい人に話を聞いたところ、「成長したタカを教育するのは難しい。ヒナから訓練させなければいけない」と言われまして、ヒナを飼うことにしました。 で、どのように訓練していったのか。警戒心をなくすために、少しずつ「距離」を縮めていくことにしました。いきなりパラグライダーを目にすると怖がるので、遠い距離から見てもらう。少しずつ近づけていって、慣れてもらうといった形ですね。訓練期間は、巣立ちをしてから4カ間ほどかかります。 ――警戒心を解くことが重要なポイントになりそうですが、タカはどんなことに警戒しているのでしょうか? 伊代野: たくさんあります。訓練をしているときには、私がパラグライダーに乗ってエサをあげていました。もちろん、なかなかうまくいかなくて、何度も何度も訓練を重ねて、やっとできるようになったんですよね。「じゃ、これで大丈夫だ!」と思って、前にお客さんに乗ってもらって、エサをあげてもらいました。しかし、タカは警戒して近寄って来なかったんです。 なぜ近寄って来なかったのか。お客さんではなく、私がエサを与えなければいけないのか。そのように考えて、試してみたものの、うまくいかなかったんですよね。じゃあ、どこに原因があったのか。「これかな?」「あれかな?」と探っていった結果、パラグライダーのサイズに問題があることが分かってきました。 訓練のときには、1人乗りのパラグライダーを使っていましたが、お客さんを乗せたときには2人乗りを使わなければいけません。しかし、2人乗りはサイズが大きくなるので、タカはそれを見て警戒していたようでした。 では、その問題をどのようにして解決したのか。やはり、少しずつ少しずつ慣れてもらうしかないんですよね。最初は収納している状態のモノを見てもらう。次に、広げた状態のモノを見てもらう。次に、上空を飛んでいる姿を見てもらう。そのときも、最初は遠くから見てもらって、少しずつ近寄っていくといった流れですね。 何かできないことがあれば、違うやり方で3回試してみる。それでもダメな場合、また違う方法でやらなければいけません。2回目でできるようになれば、そのことを3回繰り返す。そうすれば、タカは習得してくれるんですよね。
パラホーキングを始めたきっかけ
――なぜパラホーキングのサービスを始めたのでしょうか? 伊代野: 子どものころから鳥が大好きでした。パラグライダーを始めたのも、鳥はどうやって空を飛んでいるのか? そのことを知りたくて始めたんですよね。なんとか一緒に飛ぶことはできないか。いろいろ調べていくうちに、パラホーキングの存在にたどり着きました。 とはいっても、どうやればいいのか分かりません。ネット上に掲載されている情報を読んだり、動画を見たりして、「こうすればいいいのかな」「いや、こうかな」といった感じで、試行錯誤を繰り返して、タカと一緒に飛ぶことができるようになりました。 初めてタカを飼育するときには怖かったのですが、専門家からはこのように言われました。「犬や猫のように、タカもなついてくれますよ」と。この言葉を聞いたときにはちょっと信じられなかったのですが、その意味が少しずつ分かってきました。 ヒナから育てていくと、できることが少しずつ増えていく。パラグライダーに近づいてくれて、その後ろを飛んでくれて、エサを食べてくれて。自分の子どもが自転車に乗れるようになると、多くの親はその成長を見て感動すると思いますが、そうした感覚に近いですね。 一方のタカは、ワタシのことをどのように感じているのか。自分の「親」だと思っていて、パラグライダーのことはワタシの「羽」だと思い込んでいるのではないでしょうか。 (終わり) 【メモ】 パラホーキングは伊豆の上空で楽しむことができ、期間は2022年10月20日~23年3月15日まで。春から夏にかけて、タカの羽が生え変わる時期でもあること、繁殖シーズンであることなどから、一緒に飛ぶことができるのは秋から冬にかけてのみ。当日はインストラクターのレクチャーを受けて、飛行時間は10分ほど。価格は1万8000円。
ITmedia ビジネスオンライン
0 件のコメント:
コメントを投稿