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例年12月から翌3月に流行するインフルエンザ。昨シーズンはほとんど流行がみられなかったが、今シーズンは例年以上の流行も危惧されているという。その根拠やインフルエンザワクチンの供給状況、気になる感染対策について専門家に聞いた。 【画像】軽症~重症まで 新型コロナウイルスの治療薬の種類はこちら
* * * 「コロナ禍で、マスク着用・手洗い・うがい・人ごみに行かない、を徹底していたら、全然風邪を引かなくなった。例年なら、年に1~2回は体調を崩すのに……」 こんなふうに感じている人は、少なくないだろう。インフルエンザも、昨年はほとんど流行しなかったことから、「今シーズンも流行しないだろう」「ワクチンを打っても意味がない」と油断してはいないだろうか。 日本感染症学会のインフルエンザ委員会委員を務める菅谷憲夫医師(神奈川県・けいゆう病院)は、「昨シーズンよりは流行する可能性が高いので、油断しないでほしい」と警鐘を鳴らす。 インフル流行の2つの根拠 「根拠は2つあります。1つはアジアの亜熱帯地域では、今年もインフルエンザが流行していることです」 南半球では6~9月がインフルエンザシーズンとなる。オーストラリアからの報告では、昨年同様に今年も流行していないというが、実はアジアの亜熱帯地域では昨年に引き続いて今年も流行しているというのだ。バングラデシュでは今年の初夏からインフルエンザB型(Victoria)が、インドでは今夏にインフルエンザA型(H3N2)が流行。ネパールでも今夏、流行を認めている。 「昨年のように出入国が厳しく制限されていれば、インフルエンザウイルスも入って来にくいかもしれませんが、新型コロナウイルスの感染者が減ったことで入国の規制が緩和されれば、当然インフルエンザウイルスが入ってくる。冬が近づくころには流行する可能性があります」 もう1つの根拠は、今年の5~7月に起きたRSウイルスの大きな流行にある。RSウイルスは1歳までに半数以上が、2歳までにほぼ100%の乳幼児が感染すると言われている呼吸器の感染症だ。昨年はインフルエンザ同様、ほとんど流行していなかったが、今年は大きく状況が異なった。
インフルエンザ、ワクチン供給量が昨年の2割減 専門家が流行を予測する「2つの根拠」とは〈dot.〉
「例年の1.5倍の感染者が出た地域もあり、今年は異例の流行でした。さらに例年だと少ない3~5歳の感染者も多く、重症化する傾向がみられました。昨年流行しなかったことで、十分な免疫をもっていなかったと考えられます。また通常は、秋口に流行しますが、今年は初夏に季節外れの流行となりました。海外からRSウイルスが持ち込まれたことで、流行の時期がずれたのではないかと考えられます。このRSウイルスの今年の流行に似たようなことが、インフルエンザでも起こるのではないかと懸念されます」 こうした点から日本感染症学会では、今シーズンもインフルエンザワクチンの積極的な接種を推奨している。 供給量は昨年より約2割少ない 気になるのがワクチンの供給状況だ。昨年はワクチンの製造効率が高く、例年に比べて供給量、使用量ともに多かったが、厚生科学審議会によると、今年は昨シーズンの供給量より2割程度減少することが見込まれている。また、10月の供給量が少なく、12月2週まで供給される見込みで、例年と比べると供給のタイミングが後ろにずれこむとみられている。 「特にインフルエンザ脳症を起こすリスクがある生後6カ月以上5歳未満の乳幼児のほか、重症化しやすい65歳以上の人、慢性呼吸器疾患(気管支ぜんそくやCOPD)や心血管疾患など基礎疾患がある人、妊婦などはワクチンで予防することが大事です」 同時流行で医療機関パンクの恐れ インフルエンザワクチンは、日本では13歳以上は1回接種、13歳未満は2回接種となっている。13歳未満の場合、2回接種後のほうがより高い抗体価の上昇が得られるためだ。ただし、欧米では、9歳以上であれば1回接種としている。 「10歳前後であれば、1回でも十分に抗体価が上昇するので、1回しか接種できなくても慌てなくていいと思います」 もちろん、ワクチンを打っても打たなくても感染対策は不可欠だ。 「昨シーズン、インフルエンザが流行しなかったのは、出入国制限や水際対策のほか、マスク、手洗い、ソーシャルディスタンスが習慣化されたことだと考えられます。つまり、新型コロナウイルスの感染対策は、そのままインフルエンザ予防にも有効です」 インフルエンザと新型コロナウイルスが同時流行すると、インフルエンザを発症した場合、医療がパンクして適切な時期に治療を受けられない可能性もある。 緊急事態宣言は明けたが、引き続きの感染対策と早めのワクチン接種で、冬が本格化する前から予防を徹底しておきたい。 (文/中寺暁子)
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