Source:https://news.yahoo.co.jp/articles/b3161eeab820037e3325b6b613b1c2e1d0b569e0
【列島エイリアンズ】地下銀行編(1) 在日外国人による「地下銀行」がらみの事件が頻発している。 警視庁は、10月13日までに都内在住のミャンマー国籍の男女を銀行法違反(無許可営業)の容疑で逮捕した。同庁は2人が銀行業の免許を持たないにもかかわらず、主にミャンマー国内の口座への不正送金を請け負っていたとみている。その額、今年3~9月までで少なくとも5億7300万円。いわゆる地下銀行である。 8月には、宇都宮市のベトナム国籍の男女3人が、やはり同容疑で逮捕された。彼らは2020年9月以降、100人以上の在日ベトナム人の顧客から、あわせて十数億円の送金依頼を受けていたとみられている。これ以外にも、今年に入り、少なくとも6人のベトナム国籍の男女が、同容疑で逮捕された。 多くの日本人にとっては、なじみの薄い地下銀行だが、実は在日外国人社会とは切っても切れない関係にある。 母国への仕送りは、その代表的な使い道である。合法、非合法問わず、発展途上国から日本にやってきた外国人労働者の多くは、母国で暮らす親族に定期的に仕送りを行っている。その際に、日本の正規の銀行から送金する人は少ない。 大きな理由は、手数料の高さだ。近年はネット銀行などの登場で、以前に比べ、低い手数料で海外送金が可能になりつつある。しかし、少額を反復的に送金する必要がある仕送りの場合、その負担は無視できない。 例えば、大手ネット銀行を利用してベトナムに10万円を送金する場合、送金手数料や為替手数料などが引かれ、現地の受取人の口座に振り込まれるのは、4000円ほど目減りした金額になってしまう。 選択肢として、資金移動業者として登録している送金所がある。1000円前後の手数料での送金も可能だ。ただ、送金側と受け取り側双方で会員登録をしなければならないなど、手続きが煩雑なのだという。 そうした背景で、送金手段として非合法の地下銀行を選ぶ在日外国人は、一定数存在する。 日本在住8年で、関東でスナックを経営する中国人女性、宗麗華さん(仮名、34)もこう話す。 「お店の収益の一部を毎月中国の両親に送金するのに、地下銀行を使っている。手数料は1%プラス1000円で、日本の銀行の半額以下」 宗さんが地下銀行を利用するのには他の理由もある。 「年間の送金総額がまとまった金額になると、中国と日本の両方の税務署に目を付けられることになる。スナックの収益の税務申告は、それほど厳密にやっているわけではないので…」 さらに資格外活動や非合法ビジネスからの収益を原資とした仕送りである場合、正規の金融機関の利用を避けたいという動機は、ますます大きくなる。 このような使われ方の場合、地下銀行の存在理由は、依然とさほど変わらないが、宗さんによると、「最近、地下銀行の数もそれを利用する人も増えている」という。 その理由とは一体―。 =つづく ■1都3県に住む外国人は120万人とも言われ、東京は文字通りの多民族都市だ。ところが、多文化共生が進むロンドンやニューヨークと比べると、東京在住外国人たちはそれぞれ出身地別のコミュニティーのなかで生活していることが多い。中韓はもとより、ベトナム、ネパール、クルド系など無数の「異邦」が形成されているイメージだ。その境界をまたぎ歩き、東京に散在する異邦を垣間見ていく。境界の向こうでは、われわれもまたエイリアン(異邦人)という意味を込めて。 ■奥窪優木(おくくぼ・ゆうき) 1980年、愛媛県出身。上智大学経済学部卒。ニューヨーク市立大学中退後、中国で現地取材。2008年に帰国後、「国家の政策や国際的事象が、末端の生活者やアングラ社会に与える影響」をテーマに取材活動。16年「週刊SPA!」で問題提起した「外国人による公的医療保険の悪用問題」は国会でも議論され、健康保険法等の改正につながった。著書に「ルポ 新型コロナ詐欺」(扶桑社)など。
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