Source:https://news.yahoo.co.jp/articles/c3990e69c8c91a6f4a2976260c397205265ac7d7
「この漢字、なんて読むんですか」「意味はなんですか」――。日も暮れた10月中旬の日曜夕、宇都宮市の施設で「とちぎ自主夜間中学」の授業が始まっていた。生徒約30人は小学生から70代まで年齢はばらばら、国籍も中国やフィリピン、ネパールにスリランカとさまざまだ。20分間の休憩時間があるが、ほとんどの生徒は席を立たない。約2時間、教師役を務めるボランティアの「パートナー」とともに熱心にペンを動かし続けていた。 義務教育制度からこぼれ落ちた人たちが学び直す場を提供する夜間中学は、行政が設置する公立夜間中学と、ボランティアが運営する自主夜間中学の2種類ある。とちぎ自主夜間中学は、市民が手弁当で運営する自主夜間中学だ。2021年夏に開校したが、新型コロナウイルスの影響で授業が本格的にスタートしたのは秋だった。それでも21年度は6人が県立高校などに進学を果たした。 「高校生活はとても楽しい。夜間中学があってよかった」とはじけるように笑うのは、この春に県立宇都宮工業高定時制に進んだ村山エマリンさん(31)=宇都宮市。夜間中学で学び、日本語での入試に見事合格した。 フィリピン中部の離島生まれで、夫純一さんとの結婚を機に13年に来日。実家が裕福ではなかったため中等教育を受けられなかったが、勉強は大好き。20年からは臨時の外国語指導助手(ALT)として週5日、県内の小学校で英語を教えるように。正規のALTになるには大卒資格が必要なため、大学進学を目指して同高へ通っている。 故郷とは異なる「議院内閣制」など知らない単語がたくさん出てくる社会科が苦手だというが、「クラスメートが親切に教えてくれるから大丈夫。先生たちも丁寧」と話す。15歳下の級友からは「エマちゃん」と呼ばれるといい、週末にはJR宇都宮駅で待ち合わせてカフェにパフェを食べに行くこともあるという。「授業はどんどん難しくなってきているけど、楽しすぎて学校で過ごす時間はとても早い」と明るい。今もとちぎ自主夜間中学に通い、高校の授業を復習している。将来の夢は、教員免許を取得して正規の教諭として教壇に立つことだ。 とちぎ自主夜間中学の運営者は県内に公立夜間中学設置も目指しており、11月6日午後1時半から県教育会館(宇都宮市駒生1)でフォーラムを開く。ともに元文部科学官僚の前川喜平さんと寺脇研さんが講演するほか、各地の夜間中学を取材したドキュメンタリー映画「こんばんはⅡ」を上映する。入場無料。 主催する栃木公立夜間中学校研究会の会長で、とちぎ自主夜間中学の副校長でもある大橋衛さんは「公立夜間と自主夜間は車の両輪で、どちらもないと学びからこぼれ落ちた人を救えない。誰も取り残さない社会の実現のため、たくさんの人に夜間中学のことを知ってほしい」と話し、フォーラムへの参加を呼び掛けている。【玉井滉大、竹田直人】
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