Source:https://news.yahoo.co.jp/articles/d85b12ebf5e4213676117fe0d154f5bb595ad9ea
【列島エイリアンズ】 バブル期に、親とともに来日した出稼ぎ1・5世たちの互助組織の一部が、リーマン・ショックやコロナ不況といった逆境のなか、反社会性を高めていった経緯について、これまで数回にわたって記してきた。 すると、本連載を目にしたという一人の男性から先日、筆者のツイッターアカウント宛に〝クレーム〟がきた。送り主は、ペルーからの出稼ぎ1・5世を両親に持つ、いわば2・5世で、東海地方在住のリカルドさん(仮名、19歳)だ。筆者の記事が、彼らの境遇についてフェアに言及していないというのだ。 その彼と、筆者は電話で20分ほど会話をしたのだが、彼の主張には傾聴すべき部分も多かった。 「中国系や韓国系の2世、3世は、日本語さえできれば社会になじむことができる。しかし私は日本生まれで言葉も不自由なく話せるが、顔立ちが違うので、ずっとガイジン扱いを受けてきた。特に私のような南米系や中東系など『どこから来たか分からない』ような顔立ちに対しては、無意識に警戒感を持つ人が多いんです。高校時代、私はコンビニや飲食店など複数のアルバイトを経験しましたが、2回に1回は落とされました。東南アジア系やインド系の留学生は採用されている店でもです」(リカルドさん) 本連載で取り上げてきた南米出身者のグループとは無関係という彼だが、「犯罪行為を行っているペルー系のグループがあることは知っている」とした上で、「犯罪はよくないことだが、同情のようなものを感じることもある」と話す。 外見の違いから受ける疎外感だけではない。 「中国や韓国からの移民コミュニティーは歴史も古く規模も大きいので、日本人の社会になじめなくても、そこで生きていけます。しかし私のようなマイナーな国にルーツがある者には、チャイナタウンやコリアタウンのようなものもないし、同じ国籍の人が集まるような学校もありません。同じ境遇の仲間たちとの結束は強くなっても不思議ではないです。仮にそれが犯罪組織だったとしても、なかなか抜けられないでしょう」(同) ホテル業界への就職を希望していたという彼だが、コロナ禍の真っただ中だったということもあってか就活はうまくいかず、高校卒業後は父親も働いていたことがある建設会社で現場作業員をしている。ただ、夢をあきらめたわけではないという。筆者は彼に「頑張ってください」という月並みな言葉を投げかけるしかなく、電話を切った。 1990年の入管法の緩和で、日本は国境のドアを外国人労働者に開放した。しかし、人材としてやってきた彼らを社会の一員として受容する取り組みはほとんど行われなかった。犯罪行為は正当化できないにしろ、一部の外国人の不良化の責任の一端はそこにあるとも言えるだろう。 日本は今、改めて外国人労働者の受け入れ拡大にかじを切り始めているが、数十年後にリカルドさんのような疎外感を覚える若者が増えていないことを祈りたい。 ■1都3県に住む外国人は120万人とも言われ、東京は文字通りの多民族都市だ。ところが、多文化共生が進むロンドンやニューヨークと比べると、東京在住外国人たちはそれぞれ出身地別のコミュニティーのなかで生活していることが多い。中韓はもとより、ベトナム、ネパール、クルド系など無数の「異邦」が形成されているイメージだ。その境界をまたぎ歩き、東京に散在する異邦を垣間見ていく。境界の向こうでは、われわれもまたエイリアン(異邦人)という意味を込めて。 ■奥窪優木(おくくぼ・ゆうき) 1980年、愛媛県出身。上智大学経済学部卒。ニューヨーク市立大学中退後、中国で現地取材。2008年に帰国後、「国家の政策や国際的事象が、末端の生活者やアングラ社会に与える影響」をテーマに取材活動。16年「週刊SPA!」で問題提起した「外国人による公的医療保険の悪用問題」は国会でも議論され、健康保険法等の改正につながった。著書に「ルポ 新型コロナ詐欺」(扶桑社)など。
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