Source: https://news.yahoo.co.jp/articles/3c6962125eca19a6b36349454594e38e6b1d2185
「マダム」とタッキーとの接点
北海道を代表する老舗企業「石屋製菓」が長年貫いてきた銘菓・白い恋人の「北海道でしか買えない」というブランド戦略。成田、羽田など日本の主要空港への出店をはじめ、近年、「北海道限定」の制約を次々に外している3代目社長の石水創氏が強行した海外初出店に暗雲が立ち込めている。 【マンガ】外国人ドライバーが岡山県の道路で「日本やばい」と驚愕したワケ 中東・アラブ首長国連邦(UAE)のドバイにある世界最大級の売り場面積をうたうショッピングモール「ドバイモール」に出店した、白い恋人を販売するレストランIshiya(イシヤ)で何が起きていたのか。前編に続いて報告する。 内情を知る関係者が明かす。 「レストランイシヤの運営会社はドバイの有名財閥ナブーダ家の一員である男性が『会長』となり、仮想通貨NXDで知られる投資家の瀧澤龍哉氏が『社長』に就きました。そこにレストランをプロデュースするという触れ込みで現れたのが荻野章子氏です。会社的には役職はなく、スタッフたちには『マダム』と呼ばせていました」 荻野氏とは何者なのか。複数の関係者によると、大阪出身の50代の女性で、過去には大阪で飲食関係の事業をしていたという情報もある。10年以上前からドバイの財閥ナブーダ家の男性と関係を持つようになり、UAEに移住。日本でコネクションを築いた日本の企業関係者や著名人らと交渉し、ドバイで事業展開させてきたという。 実は週刊文春が昨年5月6日、13日号の記事で荻野氏について言及している。「滝沢秀明 女性社長と“水商売”の裏にドバイの大富豪」と題された記事がそれだ。 記事によると、荻野氏はアメリカ発でエコが謳い文句のミネラルウォーターを輸入販売する会社を日本で設立。そこにジャニーズ事務所副社長だったタッキーこと滝沢秀明氏の名前が取締役として載っていた。2人が近づいた理由は滝沢氏が2017年8月に日UAE親善大使に就いたこと。そこから広がった人脈に荻野氏がいたという。そして、ミネラルウォーターの会社が登記されているのはドバイの有力財閥ナブーダ家のアハメド・アル・ナブーダ氏の会社がある東京都港区虎ノ門の一軒家だったという。 そして、滝沢氏はこのほどジャニーズ事務所を退所し、独立を決めた。複数のメディアが滝沢氏が荻野氏を頼ってドバイに新会社を立ち上げるのではという憶測を報道している。現代ビジネスの取材では、こちらの真偽は確認できていないが、荻野氏を知る別の関係者は「タッキーのドバイ行きが本当だったとしても別に驚かない。荻野氏の人脈力や何かを日本から持ってくる手腕にはかなりのものがあります」と語り、こう続ける。 「最も有名なのが日本式のセブンイレブンのドバイ展開です。荻野氏はセブンイレブンジャパンの元会長で『コンビニの父』とも言われる鈴木敏文氏と交友があり、口説き落としたと言われています」 実際に2014年ごろからセブンイレブンのドバイ進出は始まり、ピーク時にはドバイの街中などに一時は20店舗ほども展開された。UAEの首都アブダビの有力王族が日本円にして100億円以上を出資したとの話もある。
リベンジのためのドバイ誘致
ところが、結果として事業はうまく進まず、2020年ごろまでに撤退に追い込まれたという。 「ドバイにはすでにスーパーマーケットがそれなりに数多くありますし、車社会なので最寄りにあるコンビニより車で比較的大きなスーパーに行ってしまう。デリバリーサービスも発達しているので、コンビニより安価な店が選ばれる。そんなドバイに見合った出店計画が作れなかったのが大きな敗因です。荻野氏もひどく落胆していました」(現地の事情通) セブンイレブンの事業撤退で店舗閉鎖を余儀なくされた荻野氏が数年の雌伏の時を経てリベンジを図る。それが「白い恋人」のドバイ誘致だった。 ところが、レストランイシヤも開店準備段階から荻野氏とレストランの運営会社社長を務めた投資家の瀧澤氏(元ジャニーズの滝沢氏とは親類などでもなく無関係と見られる)が方針などを巡って対立するようになった。前出の内情を知る関係者が明かす。 「実は店の開店資金や必要経費を一切だしていたのは瀧澤氏でした。仮想通貨で財を成した瀧澤氏の財力に頼ったような事業でした。瀧澤氏の出資額は10億から20億円ぐらいとも聞いています。しかし、店の見栄えばかり気にする荻野氏は瀧澤氏に断りもなく、有田焼などの高級食器を数千万円かけて日本から輸入したりと勝手なことをやっていました。 また、調理を担当する外国人スタッフの研修もままならないのに『ドバイではメニューは豊富な方が良い』『少ないメニューじゃ知人に恥ずかしくて見せられない』などと最初から大風呂敷を広げようとして滝澤氏と衝突もしていました」 そして今年6月末にオープンに漕ぎつけたが、客足は当初からあまり振るわなかった。 「1日の売り上げ目標は1万ディルハム(現在のレートで約38万円)と低い目標でしたが、それでもひどい時には3千ディルハム、平均で5千、6千ディルハムぐらいと低迷しました。理由の一つは白い恋人の知名度についての認識不足でしょうか。 初めの頃こそある程度売れていましたが、その後はあまり売れなくなりました。中東で白い恋人は『知る人ぞ知る』って感じなのかなと思っていたのですが、実際にはそんな『知る人』もほとんどいなかったというのが感想です」 さらにレストランの場所もよくなかったという。 「有名なドバイモールにあって好立地と言われていたのですが、モールの中でもレストラン街やフードコートがあるフロアとは違った。しかも店の内装はカフェのような仕立てでレストランだと誰も思わないので客が入らなかった。店頭に日本の着物が飾っているので、『ここは服屋ですか』と勘違いもされることもありました」 セブンイレブンの時と同じように店のコンセプトミスや出店場所の選択ミスがあったようだ。その結果として、経営不振のツケはスタッフに皺寄せがいくことになった。大量解雇だ。 「10月にレストランイシヤで働いていた店のホールやキッチンのスタッフ総勢約60人のうち約40人が一斉に解雇されました。そのうち日本人は4人いて、他はネパール、インド、スリランカなどの外国人スタッフ。優秀なフィリピン人だけを残して基本的に解雇された。売上不振のため経費削減が大量解雇の理由とされましたが、中には連日の長時間労働のためキッチンで居眠りをしていたために解雇された人もいると聞いています」
荻野氏は「失礼でしょ!」
そして、この関係者は「もう一つの爆弾もあった」と続ける。 「解雇されたうち10数人の外国人スタッフは労働ビザを発給されずに観光ビザで働かされていました。そのうち観光ビザでの滞在期限が切れてオーバーステイの違法状態になっている人もいた。 そんなスタッフたちは『私のビザはどうなっているのか』と何度も店の責任者に尋ねていましたが、責任者は『(手続きを)やっているから』というだけで十分に取り合ってもらえず、結局発行されなかった。オーバーステイ状態だと刑務所に連れていかれる可能性も高いので、外出中に警察に職務質問を受けないかなど常におどおどして精神的に参っているスタッフもいました」 関係者によると、スタッフの解雇とともに社長の滝澤氏も自ら退任することを表明したという。残ったスタッフで今後は店舗外にあるセントラルキッチンを閉鎖し、洋食の提供は縮小してカフェメニューを中心にして事業を継続するという情報がある。 「解雇されたスタッフたちは本当に悲惨で、全く笑えない状況でした。彼らは毎月の給料をほとんど母国に送金するような生活だったので、ドバイで働くことにそれだけ人生を賭けてきた。いまはドバイで他に職探しをしているスタッフもいるし、既に泣く泣く帰国したスタッフもいると聞いています」 渦中の荻野氏は今何を思うのか。国際電話で取材を試みた。 電話口に出た荻野氏に対し、記者が「レストランイシヤで大量解雇されたと聞いているが、何があったのか」と質したが、「誰から電話番号を聞いたのですか。答えられないなら私も答えられないです。失礼でしょ。誰から聞いたとか、誰の紹介とかもなく突然電話してきて」とし、一方的に通話を切られた。 レストラン運営会社社長だった瀧澤氏にも電話取材した。 ──スタッフの大量解雇があった? 「首にしたの。日本人スタッフが仕事中にキッチンで寝てたから、首にしたの」 ──ビザなしで働いていた外国人スタッフもいたと 「知らないけど、ビザはありますよ。ビザないとドバイモールで働けないから」 ──荻野章子氏と瀧澤氏の関係は? 「レストランイシヤの出店は俺が投資したの。ドバイモールに出すための資金を俺が全額出したの。で、聞いていた話とだいぶ違うなと感じた」 ──荻野氏に現場を任せていたら話が違ったと? 「別に現場を任せたとかどうこうじゃなく、(荻野氏が)自分で勝手に決めて、俺の金を勝手に使っただけ」 ──どんなものに使った? 必要以上に食器を揃えたり店を改装したりとかですか? 「うん、それがグループで問題になった。章子さんって実質会社でのポジションはない。大体がただの主婦なんですよ。投資する前には知らなかった」
「滝沢さんは章子さんとは仲良いですよ」
──荻野氏はジャニーズを退所したタッキーこと滝沢秀明さん絡みで話題になっている。あなたとタッキーを混同したタキザワ違いじゃないかという説もあるが、実際はどうなのか。 「確かにそれはややこしいと思う。ジャニーズの滝沢さんは章子さんとは仲良いですよ。仲良いというか、関係はあるよ。元々ね、うち(*ナブーダ家のナブーダグループを指すと見られる)ジャニーズと仕事していたから」 ──ドバイにタッキー滝沢氏がきて新会社を設立するという一部報道については? 「ドバイでうちのグループ(ナブーダグループ)で会社作ったりしたらわかるから、それは違うんじゃないの」 ──レストランイシヤの経営状況は? 「経営が悪いのは事実ですよ。僕としては投資している側なので年内にレストランを売却しようと思っている」 ──白い恋人にとっては海外進出のテストマーケティングという位置付けだったが。 「勘違いしてほしくないのは、(白い恋人の)クッキーは売れているのよ。空港(*ドバイ国際空港と見られる)とかにもあって白い恋人は売れているのよ。でもレストランがヤバイの」 「(ビザなし労働疑惑については)ドバイモールでは許されないので、ビザなしの人は働けないはず。ただうちのグループがドバイモールを運営するグループと近しいんで、そういうところに目をつぶられているところがあるかもしれないけれど、俺はぶっちゃけ分からない」 「(荻野さんたちから)『経営的に絶対に売れる』と煽られてお金は出した。お金を出したことは投資だからいいんだけれど、荻野さんが会社にはポジション(役職)持っていないとか、ほんとかわからんけど、過去にもそういうトラブルがあったとか周りから聞いたり。レストランに関しては年内に売却しようと思っています」 ビザなしでの違法労働について「ぶっちゃけ分からない」と否認する瀧澤氏だが、内部の関係者は「瀧澤氏のもとには複数の外国人スタッフからビザが出ていない報告は何度も上がっていた」と証言する。さらに解雇された、ビザが出ないまま解雇されたスタッフの中には解雇後にオーバーステイの罰金を求められたケースも複数あったという。違法労働の解消のため積極的に動かなかったという点で瀧澤氏にも重い責任があると言えるだろう。 石屋製菓は一連のトラブルをどう受け止めているのか。札幌市の本社に電話とメールで質問した。しかし、お客様サービス室は「ご依頼の取材の件につきまして、弊社としてはお受け致しかねます」とメールで回答するだけだった。 石屋製菓としては「白い恋人の販売権を現地企業に与えただけ、事業トラブルについては関知しない」ということかもしれない。しかし、石屋側がレストランイシヤのオープンにあたってプレスリリースを出すなど、これまで密接に関与してきたのは明らかだ。過去のインタビューからも石水創社長のドバイ進出に対する姿勢は単なる販売権の付与以上の熱量がうかがえる。北海道を代表する老舗企業が、こんな無責任対応で果たしていいのだろうか。
現代ビジネス編集部
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