Source:https://news.yahoo.co.jp/articles/6000946eaeb7cde71792d1d8fba109f9ca00f962
旧統一教会問題への対応の遅れから、政権への不信が広がっている岸田文雄内閣。10月24日に山際大志郎経済再生相が辞任したが、他にも問題は山積みだ。AERA 2022年11月7日号の記事を紹介する。 【図】岸田文雄内閣の支持率はこちら
* * * 岸田文雄政権が危機に瀕(ひん)している。世界平和統一家庭連合(旧統一教会)と自民党との癒着問題は、関連団体の会合にたびたび出席していた山際大志郎経済再生相の辞任に発展。野党は攻勢を強め、他の閣僚らの問題にも波及しそうだ。円安や物価高にも効果的な対応ができず、外交・安全保障の難問も立ちはだかる。岸田首相は「政策を積み上げて国民の理解を得る」というが、簡単ではない。局面転換のため衆院の解散・総選挙や大連立などに打って出るか、それともじり貧のまま退陣に追い込まれるのか。決断の時が迫る。 ■問題への対応が遅すぎ 旧統一教会の問題は収束が見えない。自民党が所属国会議員の関与について調査結果をまとめた後も、接点が次々と明らかになっている。朝日新聞によると、最近の国政選挙で、旧統一教会側が自民党の候補者に対して憲法改正などに賛成することを明記した「推薦確認書」に署名することを求め、一部の候補者が署名していたことが判明。事実上の「政策協定」といえる。 そして、山際氏の辞任。山際氏は、旧統一教会の関連団体がナイジェリアやネパールで開催した会合に出席していたのに明確な説明を避け、メディアに報じられるたびに追認することが繰り返された。野党から辞任要求が強まり、岸田首相は「更迭やむなし」と判断したが、対応が遅すぎた。後任に後藤茂之前厚生労働相を起用、政権の立て直しを図るが、見通しは暗い。 自民党出身の細田博之衆院議長は、旧統一教会関連の集会にたびたび出席し、挨拶(あいさつ)している。安倍晋三政権当時の会合では「盛会の様子を安倍総理に伝える」などと語っていた。だが、自身のかかわりについて、文書を配布しただけで、記者会見などでの説明はしていない。野党はさらに追及する構えだ。 岸田首相は宗教法人法の質問権を行使し、旧統一教会による多額献金などの問題を調査したうえで宗教法人の解散命令を裁判所に請求するという展開を想定している。旧統一教会の問題は(1)自民党との関係の実態調査(2)解散命令に向けた手続き・被害者救済──と多岐にわたる。岸田首相には真相を徹底解明し、対策を打ち出すことが求められているのだが、対応は後手に回り国民の不信感が募っている。
■経済無策が政権不信に 岸田政権の危機は旧統一教会の問題にとどまらない。経済の再生は待ったなしだ。ロシアのウクライナ侵攻で資源高が加速。さらに日米の金利差が拡大して円安が進み、物価高が進行している。それでも黒田東彦日銀総裁は金利引き上げを全面否定。さらなる円安につながっている。黒田総裁が進めてきた金融緩和はアベノミクスの大きな柱であり、日銀が大量に買い込んだ国債価格に影響があるため、簡単には金利を上げられない事情がある。岸田政権の経済運営にアベノミクスが暗い影を落とす。 岸田首相は、物価高に対応するためにも「大幅な賃上げ」を経済界に求めているが、賃上げは進まず、国民生活を苦しめている。経済無策が政権不信につながっていることは明らかだ。 さらに、外交・安全保障である。中国共産党大会で総書記の3選を果たした習近平氏は、台湾統合をめざして日米両国に揺さぶりをかけてくるだろう。経済のデカップリング(分断)も辞さない米国と、経済成長には中国との貿易や投資が欠かせない日本との立場の違いを中国が巧みについてくるのは確実だ。中国は、延期となったままの習近平氏の国賓としての訪日を実現するよう求めてくるだろう。自民党内では反対論が強まっており、党内の意見対立につながる可能性がある。 中国の軍備拡張や北朝鮮の核・ミサイル開発に対抗するための防衛費増額も、岸田首相にとって大きな懸案だ。5兆円余の防衛費を5年間で倍増させる計画で、来年度予算案では数千億円の増額が予定されている。財源はどうするのか。当面は「つなぎ国債」を発行して、来年度以降に法人税や所得税の増税で賄う案が検討されているが、増税には強い反発が必至だ。 ■公明党は反撃力に慎重 岸田政権は年末にかけて、国家安全保障戦略や防衛計画の大綱、中期防衛力整備計画の3文書を改定する。敵基地攻撃能力を「反撃力」と言い換えて、どういう表現で盛り込むか、台頭する中国にどう向き合うか、「専守防衛」の枠内でミサイルの配備計画をどう位置付けるか、など多くの論点がある。自民党内だけでなく与党の公明党にも「反撃力」などに慎重論があり、調整作業は難航しそうだ。逆風にさらされる岸田首相が与党内合意に向けて指導力を発揮できないようだと、政権はさらに失速するだろう。(政治ジャーナリスト・星浩) ※AERA 2022年11月7日号より抜粋
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