2020年5月14日木曜日

どうなる「9月入学」案 来年導入なら受験シーズンが五輪と重なる?メリットや課題まとめ

Source:https://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20200505-00000516-sanspo-soci
5/5(火) 5:00配信、ヤフーニュースより
サンケイスポーツ
 きょう5日は、子供たちの成長を願う「こどもの日」。今年は新型コロナウイルス感染拡大防止のため、全国的に休校の中で迎える祝日になった。4月末、東京都や大阪府などの知事が旗を振り始めた「9月入学」移行案が、国民に賛否を巻き起こしている。政府は6月上旬までに論点を整理するとしているが、本紙では一足先に、メリットや課題、影響などをまとめた。

【写真】その他の影響

 4月末に降ってわいた「9月入学」移行論。休校が続き、学習の遅れへの不安が解消されるとして歓迎する声が上がる。

 一方で桜の季節に卒業、入学が、猛暑のそれにかわる。現役生徒からは「私は桜が咲く春に入学して春に卒業したい」と訴える声も。日本人の季節感や情緒に大きな変化を与えるとして反対意見も相次ぐ。ただ、こうした文化的側面を抜きにしても、事はそう簡単に運ばない。

 政府は来年導入の可否を検討する姿勢だが、導入の場合、受験シーズンなどが来夏に延期された東京五輪・パラリンピックの開催期間に直撃されるとの指摘も。特に首都圏の大学を受験希望の地方の生徒は、宿泊先確保などで不安を抱えることになる。

 学生スポーツへの影響も大きい。あくまで現行の日程で行われるなら、高校球児にとって集大成の大会である夏の甲子園に、高校3年生が出場不可能になる恐れが。春の選抜と大会の重要性が逆転する可能性も出てくる。

 「9月入学」を巡っては2011年、東大が外国人留学生の受け入れ拡大などを理由に全面移行を検討した。大論争の末、13年に「当面見送り」とされた。今回は、新型コロナウイルスとの闘いにゴールが見えない中、教育現場は、いかに安全に学校を再開させるか頭を悩ませているのが現状。議論に加わる余裕はない。

 政府は6月上旬までに論点をまとめるとしているが、栃木県の福田富一知事は「社会構造を大きく変え、国民投票に値する事案」と拙速な議論に強く反対。戦争や災害、テロなどに乗じて過激な社会改革を断行する「ショック・ドクトリンそのもの」との批判も上がっている。日本の子供たちの未来を左右する変革だけに、慎重な検討が求められる。

★現場の声、識者の声

 ◆北海道の公立高校教諭(58) 「9月始業となれば、在学生の学年は新たにどこで区切るのか。一部の生徒には『もう半年頑張れ』と指導するのか。もはや自分の頭では考えられない」

 ◆兵庫県の私立高校職員(33) 「すでに保護者から『学費はどうなるのか』と問い合わせが来ている。9月入学の議論より、感染者の少ない地域では、一日でも早く学校再開できるよう対策に集中してほしい」

 ◆お茶の水女子大名誉教授で作家の藤原正彦氏(76) 「2011年に東大が検討したが、見送ったのは国家試験や就職、会計年度など社会全体への影響があまりに大きく、日本の文化破壊につながるという意見から。桜が散り、新芽が萌え始める春に行われる卒業式や入学式は日本人の伝統、情緒、自然観に関わる大切な文化。国を丸ごと変える制度改革は、最低10年以上かけて検討すべきもので、コロナのどさくさに決めるものではない」

★様々な入学時期

 9月入学が「グローバル・スタンダード」だと一口にいっても、全てそうとはいえない。赤道直下のシンガポールや南半球のオーストラリアのように1~2月が入学時期の先進国もある。ドイツでは、国民が一斉に夏休みを取って交通が混雑するのを避けるなどの理由から、州によって8月から9月にかけ、入学時期が分散するように設定されている。ネパールは日本と同じ4月入学だが、同国独自の暦にちなんだもの。英国の9月は、農繁期を避けたのが始まりといわれる。なお、米国やオーストラリアなどでは、州により義務教育年数さえ異なっている。

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