2020年5月27日水曜日

コロナウイルス影響にもジェンダー格差。医療従事者の7割は女性。日本は男女別のデータ収集と分析を

Source:https://news.yahoo.co.jp/articles/a942aa29276ba89409361167dc756b4d0efa5ee0
配信、ヤフーニュースより
BUSINESS INSIDER JAPAN
一国の首相から新生児まで、誰もが新型コロナウイルスの感染者になりうる。自分も感染しうる、感染しているかもしれない、という考えのもと、行動することは重要だ。 【全画像をみる】コロナウイルス影響にもジェンダー格差。医療従事者の7割は女性。日本は男女別のデータ収集と分析を 一方で、このウイルスの影響は、人によって大きく変わることも明らかだ。世界的にみると、感染後、重症化しても、医療設備や人材の不足により治療を受けられない人もいる。ロックダウンによる経済活動の休止によって、職を失い、飢餓に追い込まれている人もいる。これらの背景にあるのは、元々存在している格差や構造だ。 新型コロナウイルスの研究が進む中、健康や経済へのリスクの「差」の要因に、「ジェンダー」があることが明らかになっている。

なぜ男性の方が多く死亡しているのか

University College London下の研究機関、Global Health 50/50によると、新型コロナウイルスの死亡者の男女別データがある50カ国のうち46カ国では、女性より男性の方が死亡者が多い(5月19日確認時点)。例えばイタリアの死亡者をみると、6割が男性だ。感染者の死亡率は、女性が9.6%であるのに対して、男性は17.1%にも上っている。 ちなみに、日本の厚生労働省が毎日公表している感染者・死亡者数に、男女別の内訳はない。厚生労働省によると、「各自治体から集約されるデータはそもそも男女別になっていないものもあり、性別ごとの解析はしていない」という。 死亡率の男女差の原因は、まだ明らかになっていない。 専門家の中には、女性の方がウイルスに対する免疫反応が強い可能性や、女性特有のホルモンが身体をウイルスから守っている可能性を指摘している人もいる。 治療薬やワクチンの開発が進む中、投薬に対して男性と女性の身体でどのような効果や副作用の違いがあるのか。また、女性の中でも妊婦にはどのような影響があるのか、開発の段階から、調べることは重要だ。 さらに、このような生物学的な「性別」の理由以外にも、社会的に醸成された「ジェンダー」による生活習慣の差も、要因として考えられている。例えば、重症化の大きなリスクとされる喫煙については、男性の方が女性に比べて喫煙率が高い。また、男性の方が医療機関にかかりたがらない傾向や正しく手洗いをしない傾向も、研究で指摘されている。

医療従事者の7割は女性

国連は、職種の性別分業の傾向が、女性の新型コロナウイルスへの感染リスクを高めると警鐘を鳴らしている。 世界的にみると、ウイルスと最前線で戦っている医療従事者の70%が女性だ。日本でも、女性の割合は世界の傾向と大きく変わらない。 医師の女性の割合は約2割にとどまっているが、保健師、看護師、准看護師は、いずれも女性が9割以上を占めている。介護職員も7割が女性だ。 日本の医療従事者の感染者の男女別データは公表されていないが、スペインやイタリアの医療従事者の感染者の約7割が女性だと、明らかになっている。

20代の女性に感染が多い理由

東京都の陽性者5065人の性別の内訳をみると、男性が57%、女性が43%(5月18日20時時点、性別不明除く)。 ところがさらに詳しく、人口10万人当たりの感染者を年代別・男女別で分析すると、興味深い事実が明らかになる。 人口10万人当たりの感染者数は、男性は、年代ごとに大きなばらつきがないのに対して、女性は、明らかに20代が多い。20代の人口10万人あたりの感染者数は、男性の48人に対して女性は54人。もともとの感染者数が極端に少ない10代未満を除くと、唯一、女性の感染者の方が多い年代なのだ。 20代女性の感染が多い傾向は全国的にもみられている。専門家は医療や介護、接客業など職業の性別・年齢の傾向によって、感染リスクが異なる可能性を指摘している。

男女の経済格差がより深刻に

ロックダウンや外出自粛による経済打撃の影響も、平等ではない。 世界的にみると男女の賃金格差では、女性の賃金は男性に比べて20%低くなっているが、日本も例外ではない。むしろ、日本の男女の賃金格差は24.5%にのぼり、OECD諸国の中では3番目に格差が大きい。 雇用形態についても、経済悪化の影響を特に受けやすい非正規雇用の労働者の割合をみると,女性は56.1%にのぼり、男性の 22.2%よりはるかに大きい。日本の約140万のひとり親世帯のうち、シングルマザーの平均年収は約200万円で、シングルファザーの約半分にしか満たない。 有志団体が全国のシングルマザーを対象に、コロナの影響を聞いた調査によると、9割が収入が減少したと答え、食費を切り詰めたり、貯金を切り崩したりして工面している状況が明らかになっている。 新型コロナウイルスが収束に向かい、経済再開へとフェーズが進むうえでも、このような構造的な格差を念頭にした政策が強く求められている。 厚生労働省は、「現状では感染者・死亡者の数を把握するのが精一杯で、男女別のデータ解析は特に検討していない」としている。 しかし、効果的な新型コロナウイルスへの対応策は、既存の健康、経済、そして社会の構造や格差を考慮しなければならない。その第一歩として、男女別のデータを収集し、性別やジェンダーによる脆弱性、またそれらの直接的・間接的影響を分析し、対策に反映させることは不可欠だ。 ※記事は個人の見解で、所属組織のものではありません。 大倉瑶子:米系国際NGOのMercy Corpsで、官民学の洪水防災プロジェクト(Zurich Flood Resilience Alliance)のアジア統括。職員6000人のうち唯一の日本人として、防災や気候変動の問題に取り組む。慶應義塾大学法学部卒業、テレビ朝日報道局に勤務。東日本大震災の取材を通して、防災分野に興味を持ち、ハーバード大学大学院で公共政策修士号取得。UNICEFネパール事務所、マサチューセッツ工科大学(MIT)のUrban Risk Lab、ミャンマーの防災専門NGOを経て、現職。インドネシア・ジャカルタ在住。
大倉瑶子

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