2020年5月14日木曜日

コロナ支援で置き去りの在留外国人、彼らを見捨てる日本でいいのか

Source:https://headlines.yahoo.co.jp/article?a=20200507-00236220-diamond-soci
5/7(木) 6:01配信、ヤフーニュースより
ダイヤモンド・オンライン
● 協力金支給の情報は 日本語での案内のみ

 4月22日、東京都では「感染拡大防止協力金」の申請受け付けが始まった。東京都が要請している、施設の使用停止や営業時間の短縮に応じた中小の事業者に、50万円(2店舗以上の場合は100万円)を支給するものだ。

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 しかし、小池都知事が会見で開設を宣言した案内用ポータルサイトには、外国人も対象になっているのか、いっさい言及されていない。英語など多言語での案内もない。オンライン申請も日本語のみだ。

 「今は都の要請通り、夜は8時に店を閉めています。テークアウト対応も始めましたが、お客は8割減。私たちも日本人と同じように税金を払っているので、協力金を支給してほしい」

 こう訴えるのは、新宿・新大久保で12年にわたって中華料理店を営む中国人店主のAさんだ。
 案内用ポータルサイトでは情報を得られないため、Aさんは相談センターに電話してみた。都の担当者は「申請要件には、外国籍だから除外するというような記載はありません。とりあえず申請してみては」との答え。

 とはいえ、Aさんは「実際に支給されるかどうかはわからない」と不安を隠さない。

 実際、支給対象から外れる外国人店主は少なくない。

 そもそも感染拡大防止協力金は、休業したり、20時までに閉店したりするなど、都の要請に従った場合のみに支払われる。

 だが、外国人店主の間でそういった細かい条件は十分には伝わっていない。すべての飲食店に支給されるものと勘違いして、客が入らないまま20時以降も開けている店がかなりあるのだ。

● 置き去りにされる 外国人労働者たち

 感染拡大防止協力金のほかにも国や自治体が、コロナウイルスによって影響を受ける事業者や個人に向けてさまざまな支援策を打ち出しているが、いずれも外国人に対するアナウンスはない。

 新宿区に住むネパール人男性のBさんは、緊急事態宣言を受けて勤めているレストランが休業となり、給与がカットとなった。

 「日本では行政による支援があると、なんとなく聞いてはいるが、詳しいことははっきりわからない。仕事をする上で日本語に困ったことはあまりないのですが、区の広報は漢字の専門用語が多くて、ちょっと難しい」(Bさん)

 そこで日本人の知人に、新宿区の社会福祉協議会が提供している「緊急小口支援」の窓口に連絡してもらった。10万円以内を無利子で貸し付けるという制度だ。
 通常であれば、永住者もしくはその配偶者のみが対象となるため、Bさんは制度を利用できない。しかし、「今回は新型コロナによる特例で、ほかの在留資格の外国人も面談して考慮する」と言われ、ひとまず安堵した。

 Bさんは早速面談の予約を入れたが、非常に混雑しており、実現するのは6月末になりそうだ。

 今や293万人にまで膨れ上がった在日外国人は、さまざまな在留資格で日本に滞在している。「留学」や「技能実習」、ITやエンジニアなどの「技術」、通訳や語学教師は「人文知識・国際業務」、コックは「技能」……と多岐にわたる。これらは1年や3年といった期間で更新していく。そうやって10年、20年と日本で暮らす人も多い。

 先述のBさんのように、永住者以外のこうした在留資格は全体のおよそ6割、170万人以上に及ぶが、彼らは「短期滞在」であるとみなされ、貸し付けても返済できないと判断されて、緊急融資の対象外となってしまう可能性がある。

 日本政策金融公庫も、「新型コロナウイルス感染症特別貸付」を行っているが、外国人はやはり基本的に永住者のみで、数年のビザについては個別の対応になるという。こちらもホームページなどでは外国人に対する案内は表記されていない。

 中小企業に向けた新宿区の「商工業緊急資金」は永住者でない外国人も対象だが、案内はすべて日本語で、制度の存在を知る外国人はほとんどいない。

 休業手当などを助成する、厚生労働省の「雇用調整助成金」も同様だ。

 全24ページの申請ガイドブックに、外国人についての記載はゼロである。混み合っているためなのか、電話もつながらない。労働基準監督署によれば外国人も対象になっているというが周知されていない。

 外国人の労働力が日本社会を支えるようになって久しい。だが、彼らを守る仕組みが実はいくつかあることを行政はまったく告知しておらず、この非常時に彼らを置き去りにしている。
● 追い詰められる 外国人留学生たち

 「外国人でも現金10万円をもらえるのかという問い合わせが増えています」

 そう話すのは、NPO法人「POSSE」の、外国人労働サポートセンターを担当する岩橋誠さん。

 新型コロナウイルスの感染拡大を受けて、政府は現金10万円の一律給付を決め、すぐに外国人も対象であることが報道された。だが、そんな情報すらキャッチできていない外国人たちもいる。

 「3月以降、外国人からは200件以上の相談が寄せられています。飲食店などでのアルバイト時間が激減した留学生など、生活が立ち行かない外国人が増えています」(岩橋さん)

 外国人が現場を支えているはずの大手飲食チェーンでも、休業補償を支払わないことがあるという。そうした仕組みがあることすら知らない外国人が多いのだ。

 休業補償は国籍や在留資格にかかわらず、受け取る権利があるもの。それゆえ、岩橋さんは彼らに「まずは休業補償を請求していこう」と応対している。

 「留学生は家賃のほかに、授業料も毎月、分割で納めています。アルバイトが減るのは死活問題で、手持ちの現金がもう4万~5万円しかない人もいる」(岩橋さん)

 授業料が払えず退学ということになれば、今度は「留学」という在留資格を失う。

 そうならないためにもなんとか食いつなぎ、アパートを引き払って家賃のかからない友人の家に転がり込む。すると、今度は友人が不動産屋から、「契約時と違う人間が住んでいる」と怒られる。

 こうして友人宅にも居づらくなり、どんどん追い詰められていくのだが、そんな状況からはい上がるための情報や、行政の手が、あまりにも乏しい。

 いざというときの最後の手段でもある生活保護も、「対象となるのは永住者のみで、留学生や就労ビザの人には認められていません」(岩橋さん)という。
● 在留資格への影響を恐れ 支援をためらう経営者も

 コロナ禍で解雇となったのに失業給付がもらえないという外国人も出てきている。

 「語学教師によくあるのですが、雇用契約ではなく業務委託扱いにして、労働保険に加入していないことがあります。中には、そうした事実を本人に知らせていないケースもあります」(岩橋さん)

 また、小さなレストランや食材店を営む外国人の中には、支援策を知っていても申請をためらう人がかなりいる。

 「赤字になれば経営者としての在留資格更新に悪影響が出るのではないか」「コロナ関連の支援に申請すると、経営状態が悪いとみなされ、更新ができなくなるのではないか」という不安だ。

 この非常事態下、あらゆる場面で、外国人に関する制度が追いついていないし、情報を伝えるための対応が不十分だ。

 「日本は社会保障や制度を整えないまま、留学生や労働者を受け入れてきました。そのひずみが、コロナで明らかになったと思います」(岩橋さん)

 今は日本人の救済ですらまったく追いついておらず、外国人をケアする余裕は、行政にも社会全体にも、あまりないのだと思う。それでも、労働力不足を補うために国の方針で外国人を増やした以上、厳しい状況に置かれている在留外国人たちに、もう少し目を向けてもいいのではないだろうか。

 (注 在住外国人数などの数字は2019年6月現在、法務省公表データによる)

 (ライター 室橋裕和)
室橋裕和

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