「食費は月2千円」「貯金は残り5万円」。新型コロナウイルスの感染拡大で県内在住の外国人留学生が苦境に陥っている。生活費を得るアルバイトができなくなったが、国際便の欠航で帰国もできない。行政は県民生活への対応に追われ、外国人の支援に手が回っていない。「助けてほしい」。留学生らは窮状を訴える。 (社会部・徐潮)
買ってきた履歴書を手にするネパール出身の女性=20日、那覇市内
買ってきた履歴書を手にするネパール出身の女性=20日、那覇市内 苦境の中、就職活動をしているピャクレル・ビノドさん=21日、那覇市内
 来沖4年目で3月に那覇市内の専門学校を卒業し、就労ビザ取得を目指して就職活動をしているネパール出身のピャクレル・ビノドさん(31)。県内ホテルで2年半アルバイトしてきた。ホテル業界への就職を目標に会社説明会に参加し、求人企業に履歴書を出すなどしたが「3月以降、企業から面接の連絡が来なくなった。会社説明会もない」
 4月上旬にハローワークへ相談に行ったが「今、コロナの影響でどこも仕事がないから、しばらく待って」と言われたという。
 アルバイトも「客が来ないから休んで」と上司に告げられ、1カ月以上シフトに入れない状況が続いている。節約もしているが「貯金は5万円しかない。あと1カ月ぎりぎり生活できるかどうかだ。その後どうなるのかが一番心配。助けてほしい」とたどたどしい日本語で不安を口にした。
 それでも日本のホテルサービスを学びたいと話す。「実務経験を積み、日本の素晴らしい接客サービスを将来持ち帰って母国を発展させたい」。ビザ期限の9月末まで就活を頑張るという。

▽70万円の借金 

 同じネパール出身の女性(33)は2月に北部での仕事を辞めて那覇市に引っ越し、転職を目指した。求人企業で1カ月研修を受けてきたが、3月末に退職届けを書かされた。
 女性の在留ビザは7月まで。だが5年前沖縄留学のために両親が背負ってくれた借金は70万円も残っている。「ネパールでは若者の年収はわずか5万円ほど。借金を全部返すまで帰国できない」と涙を浮かべた。
 3月から食料費を月2千円まで削減。「朝はお茶のみ。昼と夜はネパールカレーライス。買ってきた青菜やネギをたくさん使わないようにしている」。ネパールカレーライスは白飯にわずかな野菜のかけらと香辛料入りの薄いスープを掛ける質素なものだ。
 女性は20日、市販の履歴書を買ってきた。記入した後企業に出す予定だ。「体はまだ大丈夫。コロナに感染しないように、仕事を探していく」と前を向いた。

生活保護相談 

 県国際交流人材育成財団には「生活保護を受けたいが申請方法が分からない」などの相談が外国人から寄せられるようになった。
 在住外国人の窓口の県交流推進課は「現時点で外国人に特化した県の支援策はない。今後どんなことができるか検討中」としている。
 沖縄国際人材支援センターの大仲るみ子さん(49)は「知事が唱える『誰一人取り残さない』というキーワードが今こそ必要だ。県民も大変だが、県の産業を支えてきた外国人労働者や留学生らへの救済も念頭に置いてほしい」と求めた。