Source:https://news.yahoo.co.jp/articles/9d17f4c9b6c6cfe6e663b0fcd80587c4c8b2a887
新型コロナウイルスの影響で経済的打撃を受けた学生らに対し、文部科学省は最大で20万円を支給することを発表した.
だが、この「学生支援緊急給付金」の支給対象者の要件には、留学生に対して「学業成績が優秀な者」などの条件があり、成績評価係数(上限3)で2.30以上という成績基準も設けられている。
困窮する学生を支援する目的で設置された緊急給付金制度だが、事実上、成績で「足切り」をする制度に、「生活の困窮に成績は関係ない」「困っている学生を助けるべき」との批判が集まっている。
実際に今、留学生はどのような状態に置かれているのか。【BuzzFeed Japan/冨田 すみれ子、貫洞 欣寛】
海外在住ネパール人協会が実施したオンラインアンケート調査では、ネパール人留学生から「バイトのシフトが減り、家賃や生活費が払えない」「1日1食に減らしてでも、耐えて乗り越える」などの悲痛な声が寄せられている。
9割以上が生活費や学費の支払い困窮
日本学生支援機構によると、2019年度の日本への留学生を国別に見ると、ネパール人は2万6308人で、中国、ベトナムに次いで3番目に多い。
海外在住ネパール人協会は4月22~28日に、日本で学ぶネパール人留学生に、新型コロナウイルスの生活への影響について、オンラインでアンケート調査(有効回答数657件)を実施した。
結果によると、45.8%が「生活費・学費両方」の支払いに困窮していると回答し、23.9%が「生活費」、23.4%が「学費」の支払いに困っていると答えていた。合計すると、9割以上の学生が学費や生活費、または両方の支払いに困窮していることになる。
「留学生と言えども、働かないと食べていけない」
留学生からは、新型コロナの影響でアルバイトなどに大きな影響が出ている様子が自由記入欄に寄せられた。
「留学生と言えども、働かないと食べていけない」
「専門学校に入るために福岡に来たが(コロナの影響で)アルバイトがない。専門学校の学費が払えていない。ネパールから送金してもらいなさいと言われるが、家族もお金がない」
「3月に卒業して帰国準備をしていたからアパートを引き払った。しかし急に国際線が休止したので、数日のことかと思い友達の部屋を間借りした。すると休止が長期間にわたり、非常に困っている。バイトをして生活費を稼ごうにも、留学ビザなので学生証がないと断られた」
アンケート調査に回答したネパール人留学生は、東京都在住が24.9%で都道府県別では最も多く、他は多い順に福岡県が11.7%、神奈川県が7.2%、大阪府が5.8%など。
滞在年数は多い順で、3年以上が34.4%、3年が25.3%、2年が26.2%、1年が14.2%だった。
在籍教育機関は、専門学校が51.6%と最も多く、大学・大学院が25.7%、日本語学校が11.3%、その他の教育機関が11.4%だった。
性別は77.9%が男性、21.9%が女性、0.2%がその他。
「バイトを失い生活費がない。来月からどう生きれば」
留学生は週28時間まで就労できる。多くの留学生が、生活費や学費を稼ぐために、アルバイトをしながら勉強している。
一方、これまで労働力不足に悩んできた飲食業やコンビニなどサービス業や製造業の現場は、安価な労働力として留学生を積極的に雇い入れてきた。
しかし新型コロナの影響で、特にサービス業などは大きな打撃を受けている。
アンケート調査では、回答者の8割以上が何らかの影響を受けていることが明らかになっている。
回答者の44.7%は「シフトを減らされた」と答え、34.1%が「長期休みを命じられた」、7.8%は「アルバイトを首になった」としている。
影響を受けた留学生からは、このような声が寄せられている。
「アルバイトを失い、生活費がない。来月からどうやって生きていくかわからない」
「バイトの時間が減らされ、家賃さえ払えない状況だ」
一方で、コンビニやスーパーなどのアルバイト先に勤める留学生からは感染への不安の声も寄せられた。
「コンビニのシフトはあるが、人と接触する仕事なので不安」
「人と接触するバイトでコロナの感染は時間の問題。感染したあとの診療先などの手順が知りたい」
「接客業務でお客さんや同僚と会うのが怖いけど、バイトをしないと生活ができないジレンマがある」
「生き抜くことしか考えていない」「内定を取り消された」
緊急事態宣言が解除された地域では、少しずつ飲食店も営業を再開するなどといった動きはある。
しかし、国にも帰れず、収入も学業も不安定な中で、これからの生活についても大きな不安を抱える留学生が多くいる。
「お金はまた稼いで学費の未納もそのうち払える。しかし命は何物にも代えがたい。1日1食に減らしてでも、耐えて乗り越える」
「生き抜くことしか考えていない」
「学校が留学生のことを守るよりも、一方的に学費を納めなさいという請求書を機械的に送ってきたことに落胆した」
また、学校を卒業したばかりの留学生からは、就職の内定を取り消されたという声が寄せられている。
「3月に卒業したが、内定を取り消された。次の仕事も見つからず、どこで相談したらよいかわからない」
「会社がつぶれるという理由で内定を取り消された。他の会社を探すにも難しく、ビザの確保ができない不安がある」
帰国についての質問には、22.4%が「望む」、37.1%が「望まない」、40.5%が「わからない」と答えている。
実際、国際線運休などの問題で「帰りたいけど帰れない」という意見もあるが、「命が一番だから、国に帰るすべを模索している」との声もあった。
現地で日本人が「稼げる」とリクルート、「借金してでも将来のために留学」
海外在住ネパール人協会の顧問を務める、ジギャン・クマル・タパさんは、留学生の現状について「今、留学生の多くは本当に困っています」と話す。
タパさんは、借金をしてでもネパール人の若者が日本へ留学している現状がある、と指摘する。
「ネパールで留学生をリクルートをしているのは、日本語学校を経営している日本人です」
「日本でアルバイトができて稼げると、ネパールやベトナムの貧しい若者に夢を与えて日本に呼ぶのです。だから、費用を借金してでも将来のために日本に行きます」
前述の通り、留学生が飲食業やコンビニ、製造業などの現場を支えているという日本社会の現実がある。特に都市部では、働く留学生の姿をどこでも見る事ができる。こうした現場を支えてきた留学生が今、困窮している。
「時間通りに届く宅配便、コンビニのお弁当、ホテルのベッドメイク、飛行機の機内食。今では留学生が働き手として働いています。日本語学校や専門学校、不動産、寮、行政書士。みんな留学生がいて潤っています」
緊急給付金に成績基準「非常に落胆」
タパさんは、学生支援緊急給付金の留学生用の要件に成績基準が設けられたことについて「非常に落胆しています」と思いを語った。
タパさんはネパールで汗を流す日本の青年海外協力隊員の姿を見て日本に関心を持ち、日本に留学した。
私費留学生として私立大に留学。さらに横浜国立大の大学院を修了した。現在は日本で働きながら、同胞を支援する活動を続けている。
自身も留学生として日本で学び、働き、日本社会の一員として生きてきた経験から、こう語る。
「とても恥ずかしいです。私は日本は制度的にはそうした差別のない国だと、多くのネパール人に伝えてきました。それを信じていたんです」
「衣食を足りて礼節を知る、といいますが、足りなくても礼節は知るべきです。日本も財政的に苦しい立場にあることはわかりますが、ここまで差別することは決して許せることではありません」
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