Source:https://headlines.yahoo.co.jp/article?a=20191114-00010001-wedge-asia
11/14(木)、ヤフーニュースより
ネパールのヒマラヤ登山というと1990年代までは、時に20人を超す世界中の登山家たちが「遠征隊」を組織したものだが、すでにほとんどの山がさまざまなスタイルで登り尽くされた現在は少数で組まれた外国人登山グループを一つの隊のようにして「頂上アタック」を挙行する、いわゆる「マネジメント登山」が主流になっている。
エベレストをはじめ世界に14座ある8000メートル峰では特にこの傾向が強く、エージェントにお金を払えば、一人でも「登山隊」に参加できる。参加費はエベレストが一番高く、少なくとも300万円相当はかかるが、マナスルやダウラギリなどネパール国内でアプローチの短く低い8000メートル峰の場合、1人100万円台で参加できる。これは国が設定している「登山料」が高い山ほど高くなる上、キャンプも一つ二つ多めに設けなければならず、費用がかさむためだ。
通常、例えばスペイン人4人、日本人2人、ニュージーランド人2人、英国人2人、中国人3人といったチームがそれぞれ別々に登山ガイド「シェルパ」やコックを雇ってベースキャンプ入りし、頂上を目指す。その際、ロバや人を使ってのキャラバン、キャンプ設営、荷揚げはそれぞれバラバラに行う。同じ山のノーマルルートを登るわけだから、途中で交流はあるが、行動は全く別々となる。
8000メートル峰のノーマルルートの多くは、雪崩や滑落など危険があるため、通常、そこに「固定ロープ」を張る必要が出てくる。何とか登れても体力が衰えている下山時に滑落する危険が高まるため、急斜面にあらかじめロープを張っておく。これを「ルート工作」と呼ぶが、問題は誰がこの作業をするかだ。
昔の場合、それぞれの遠征隊が各自でやったが、今は、その山に入る各グループのシェルパを雇っているいくつもの「登山代理店」が事前に合議して決めておく。その際、チームのそれぞれの登山者はルート工作の代金として一人当たり3万円から10万円相当を、エージェントを通して払うことになっている。
ルート工作を担当したシェルパたちが怠けたり、うまく工作できなかった場合、どうなるのか。
かつての大遠征隊の場合、自分たちでやるだけのことをやった上で登頂か撤退の判断を下すことができた。ところが、現在主流の「マネジメント登山」の場合、ルート工作の正否も進退の判断もシェルパたちに一任する形になってしまう。シェルパが「無理だ」と言えば、撤退せざるを得ない。というのも、一応は外国からの登山家が「隊長」という立場にあっても、経験、実力から言えば、シェルパがリーダーで外国人はあくまでも連れてってもらうメンバーに過ぎない。
「工作できなかった」、「ロープが足りなかった」とシェルパ側の明らかな失敗であっても、外国人はそれを受け入れざるを得ない。
50年代のヒマラヤ開拓の時代から半世紀が過ぎ、海外から来る登山者と、ネパール国内のガイドたちの間に歴然とした経験、実力、体力の差がついた。海外の登山者が主役になれたのは遠い昔のこと。ネパールのプロの登山家、シェルパたちがお膳立てした登山計画に乗り、自分一人の力を試すだけというのが今のヒマラヤ登山の主流である。
その分、安全にはなったが、決行や登山スタイルから独自性やきわどさ(ギリギリの判断など)が減り、当然と言えば当然なのだが、穏健な登山が増えている。
通常、例えばスペイン人4人、日本人2人、ニュージーランド人2人、英国人2人、中国人3人といったチームがそれぞれ別々に登山ガイド「シェルパ」やコックを雇ってベースキャンプ入りし、頂上を目指す。その際、ロバや人を使ってのキャラバン、キャンプ設営、荷揚げはそれぞれバラバラに行う。同じ山のノーマルルートを登るわけだから、途中で交流はあるが、行動は全く別々となる。
8000メートル峰のノーマルルートの多くは、雪崩や滑落など危険があるため、通常、そこに「固定ロープ」を張る必要が出てくる。何とか登れても体力が衰えている下山時に滑落する危険が高まるため、急斜面にあらかじめロープを張っておく。これを「ルート工作」と呼ぶが、問題は誰がこの作業をするかだ。
昔の場合、それぞれの遠征隊が各自でやったが、今は、その山に入る各グループのシェルパを雇っているいくつもの「登山代理店」が事前に合議して決めておく。その際、チームのそれぞれの登山者はルート工作の代金として一人当たり3万円から10万円相当を、エージェントを通して払うことになっている。
ルート工作を担当したシェルパたちが怠けたり、うまく工作できなかった場合、どうなるのか。
かつての大遠征隊の場合、自分たちでやるだけのことをやった上で登頂か撤退の判断を下すことができた。ところが、現在主流の「マネジメント登山」の場合、ルート工作の正否も進退の判断もシェルパたちに一任する形になってしまう。シェルパが「無理だ」と言えば、撤退せざるを得ない。というのも、一応は外国からの登山家が「隊長」という立場にあっても、経験、実力から言えば、シェルパがリーダーで外国人はあくまでも連れてってもらうメンバーに過ぎない。
「工作できなかった」、「ロープが足りなかった」とシェルパ側の明らかな失敗であっても、外国人はそれを受け入れざるを得ない。
50年代のヒマラヤ開拓の時代から半世紀が過ぎ、海外から来る登山者と、ネパール国内のガイドたちの間に歴然とした経験、実力、体力の差がついた。海外の登山者が主役になれたのは遠い昔のこと。ネパールのプロの登山家、シェルパたちがお膳立てした登山計画に乗り、自分一人の力を試すだけというのが今のヒマラヤ登山の主流である。
その分、安全にはなったが、決行や登山スタイルから独自性やきわどさ(ギリギリの判断など)が減り、当然と言えば当然なのだが、穏健な登山が増えている。
岩城薫 (ジャーナリスト)
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